ドイツ当局は、ポーランドのスターリンク地上局で9月に発生した放火事件に関与した疑いで、トルコ国籍の男女計4人を拘束しました。ポーランド当局はこれをロシアの関与による「ハイブリッド戦争」の一環であると断定し、被疑者の身柄引き渡しを求めています。
ドイツで拘束された4人の容疑者と事件の経緯
事件から約1カ月後の10月12日、ポーランドのマルチン・キェルヴィンスキ内務大臣は、ドイツ警察がポーランド側の要請に基づき、トルコ国籍の男2人を拘束したと発表しました。その後、ポーランドの放送局RMF FM等の報道により、ベルリンで女性1人がさらに拘束されたことや、4人目の容疑者も特定・拘束されたことが明らかになりました。バーデン=ヴュルテンベルク州の内務大臣マヌエル・ハーゲル氏によれば、最初の2人の男はシュトゥットガルト近郊のニュルティンゲンで身柄を確保されました。
問題の火災は、9月23日の夜にポーランドのマゾフシェ地域(マゾビア地域)、ワルシャワから南へ約50キロメートル離れたヴォラ・クロボフスカにあるスターリンクの衛星通信地上局で発生しました。この施設の土地所有者が緊急通報を行い、消防隊が出動して消火にあたりました。炎は施設の電力システムおよびバックアップ発電機を直撃し、大きな損害を与えました。調査にあたったポーランド国家警察長官のマレック・ボロン氏は、現場に残された証拠が極めて明確に意図的な破壊工作を示していると述べました。捜査関係者の情報によると、34歳と38歳とされる容疑者の男たちは車で現地に乗り付け、電気制御盤に引火性の液体を浴びせた後、わずか数分で現場から逃走したとされています。また、ベルリンで拘束された女性容疑者は、男たちの逃走時の運転手などとしてロジスティクスを支援した疑いが持たれています。
ポーランド政府による「ロシアの関与」の指摘
ポーランド政府は、この事件の背後にロシアの諜報機関が存在していると確信を強めています。トーマシュ・シェモニアク特別サービス担当大臣は記者会見で、今回の破壊工作について疑いの余地がないと強調しました。
「我々は、この破壊工作の背後にロシアの諜報機関がいることに疑いを抱いていません。ロシアの諜報機関が、犯罪組織とつながりのある人物をますます利用するようになっていることは付け加えておく価値があります」
トーマシュ・シェモニアク、ポーランド特別サービス担当大臣
ウクライナ支援と欧州における破壊工作の懸念
イーロン・マスク氏が提供するスターリンクの通信システムは、ロシアの全面侵攻以来、ウクライナ軍の戦場通信やドローン運用において極めて重要な役割を果たしています。ポーランドはウクライナのスターリンク利用料を負担しており、今回の襲撃は、通信インフラを標的にしてウクライナの軍事能力を削ぐ意図があったと見られています。リトアニアのカウナス近郊にある施設と共に、ヴォラ・クロボフスカの地上局は中央・東欧地域の広範囲にわたるインターネット接続を支えているため、その破壊は広い地域への影響を狙ったものでした。


AP通信の集計によれば、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、欧州全体で西側当局者がロシアに関連する破壊工作や悪意ある活動とみなすインシデントは210件以上に及びます。これには、2024年3月にロンドンでウクライナ向けのスターリンク端末が保管されていた倉庫が標的となった放火事件(後に英裁判所でロシア諜報機関が計画したと認定)も含まれます。こうした背景から、欧州連合(EU)の首脳陣や加盟国は、ウクライナへの支持を揺るがし、社会に混乱や恐怖を広げることを目的とした一連のハイブリッド攻撃に対して強い警戒を示しています。
ドイツの政治家や保安当局も、こうした動きに深刻な懸念を抱いています。ノルウェーの警察保安局(PST)長官であるベーテ・ガンソース氏が「破壊活動においては、一つの頭を切り落としても別の頭が生えてきて、次に向かう方向が分からない竜の物語のようだ」と表現するように、欧州全域で警戒体制が強化されています。ロシア大使館およびモスクワ側は、こうした欧州からのハイブリッド戦争や組織的な破壊工作に関する非難について、根拠レスであり反ロシアヒステリーの産物であるとして一貫して否定しています。
今後の捜査と身柄引き渡し
現在、拘束された4人の容疑者はドイツの当局に留め置かれています。ポーランドの検察当局および内務・法執行機関は連携しながら、容疑者らの具体的な関与の度合いを評価し、ドイツ側からの身柄引き渡しを受ける準備を進めています。ポーランド国内の法律では、外国の諜報機関の指示を受けて破壊工作を行った場合、最高で終身刑に処される可能性があり、最低でも10年の禁固刑が科される重罪とされています。ポーランド国内の保安当局とドイツの連邦刑事警察局(BKA)などの緊密な協力のもと、事件の全容解明と共犯者の追跡が続けられています。
