ドナルド・トランプ米大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領と合意したディーゼル燃料の供給計画に対し、米議会で超党派の強い反発が広がっています。この合意は燃料価格の抑制を目指すものですが、専門家や議員らは供給量が世界需要の1日分にも満たず、ロシアの戦争資金を助長する恐れがあると批判しています。
ディーゼル供給合意とトランプ大統領の説明
トランプ大統領は10月上旬、自身のSNS「Truth Social」を通じて、ロシアからディーゼル燃料を調達する合意に達したと発表しました。この計画では、ロシアが即座に30万トンを供給し、11月に50万トン、その後速やかに100万トン、さらに短期間のうちに合計300万トンを追加供給するとしています。これにより、総供給量は480万トン(約3576万バレル)に達する見込みです。
トランプ大統領は、この合意が米国の農家やトラック運転手、消費者の負担を軽減する「最大の優先事項」であると強調しました。しかし、批判が高まる中で大統領は10月13日、記者団に対しこれは世界のための取引であり、私との取引ではないと述べ、米国内への直接的な供給ではないことを繰り返し強調しました。ホワイトハウスは、この取引の支払い条件や燃料の具体的な配送時期については詳細を明かしていません。
議会と専門家が指摘する供給量の限界
エネルギー専門家や市場アナリストは、この合意が市場価格に与える影響は限定的だと見ています。AAA(全米自動車協会)によると、ディーゼルの平均価格は10月13日時点で1ガロンあたり約6.28ドルに達しており、前年比で72%上昇しています。ゴールドマン・サックスの試算では、この合意による供給増が米国の卸売価格を1バレルあたりわずか1ドルから2ドル程度押し下げるに過ぎないと予測されています。
専門家は、合計480万トンの供給量は米国の国内需要の約10日分、あるいは世界需要のわずか1日分に相当する程度であり、価格の劇的な変動を引き起こすには不十分だと指摘しています。さらに、ウクライナによるロシアの製油所への攻撃が続いており、ロシア国内のディーゼル生産量は以前より約30%減少しているとのIEA(国際エネルギー機関)の報告もあります。
共和・民主両党による撤回要求の書簡
この合意に対し、共和党6名、民主党6名の計12名の上院議員が10月13日に連名で書簡を送り、合意の即時撤回を求めました。書簡には、民主党のリチャード・ブルーメンソール、クリス・クーンズ、ディック・ダービン、ジャック・リード、ジーン・シャヒーン、シェルドン・ホワイトハウスの各氏、および共和党のアラン・アームストロング、スーザン・コリンズ、ジョン・コーニン、ミッチ・マコーネル、リサ・マーカウスキー、トム・ティリスの各氏が署名しました。

議員らは、この合意が我々の敵対者への贈り物であり、同盟国に対する背信行為である
と厳しく批判しています。彼らは、この取引がロシアの戦争機械に資金を提供し、ウクライナ市民への攻撃を継続させることを可能にすると警告しました。また、トム・ティリス上院議員は、この合意が今年夏に成立した「リンジー・グラハム制裁法(ロシアおよびイラン制裁法)」の意図と真っ向から対立するものであり、大統領が法を遵守していない疑いがあると指摘しました。
ウクライナ側の反発と停戦交渉の混乱
ウクライナ政府はこの合意を強く非難しています。ウクライナ議会のオレクサンドル・メレシュコ議員は、このディーゼル取引を裏切りと呼び、ロシアによるジェノサイドが行われている最中に経済的な生命線を送る行為であると主張しました。メレシュコ氏は「米国がロシアの戦争機械を支援することは、プーチンによる殺人を助長することに等しい」と憤りを露わにしました。

さらに、トランプ大統領が主張する「エネルギー停戦」についても混乱が生じています。トランプ大統領はSNSで双方の合意を示唆しましたが、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領側は「そのような話は聞いていない」との立場をとっています。トランプ大統領は、ゼレンスキー氏が攻撃を止めないことを批判し、「合意を結べる新たな指導者に交代すべきだ」との持論を繰り返しています。一方、ケンブリッジ大学の専門家ヴィクトリア・ヴドヴィチェンコ氏は、トランプ氏が対照的な手段を次々と繰り出すことで交渉の主導権を握ろうとしていると分析しています。