ドナルド・トランプ前米大統領がネブラスカ州の選挙集会で着用していたスーツのタグが露出し、そのブランドが「ジョス・A・バンク」であることが判明した。高級スーツを好むことで知られる同氏が、比較的安価な既製品を着用していた事実に、SNSを中心に驚きの声が広がっている。
遊説先で露呈したスーツのブランド
10月5日にネブラスカ州グランドアイランドで開催された選挙集会で, ドナルド・トランプ氏は紺色のスーツを着用して演説を行った。その際、ジャケットの内側を広げた瞬間に縫い付けられていたタグが目撃され、紳士服ブランド「ジョス・A・バンク(Jos. A. Bank)」の製品であることが明らかになった。Yahoo!ニュースやハフポストなどによると、このブランドは1905年にメリーランド州で設立された老舗だが、価格帯は149.99ドルから700ドル程度と幅広く、トランプ氏がかつて愛用していた高級ブランドとは一線を画すものである。
高級イタリアブランドからの転換
トランプ氏は長年、イタリアの高級ブランド「ブリオーニ(Brioni)」のスーツを愛用してきたことで知られている。ブリオーニのスーツは一着5500ドルから1万6000ドルを超えることも珍しくない。2000年代にリアリティ番組『アプレンティス』の司会を務めていた際、同ブランドから衣装提供を受けていた経緯があり、その後も自身のステータスを象徴する装いとして高級品を好んできた。そのため、今回の中低価格帯ブランドの着用に対し、SNS上では「景気後退の兆候ではないか」といった臆測まで飛び交う事態となった。

米国第一主義と製造国の矛盾
「ジョス・A・バンク」のスーツが海外で製造されているという点も、論争を呼ぶ要因となっている。トランプ氏は大統領就任時より「米国第一主義」を掲げ、国内製造業の復興を政策の柱としてきた。しかし、同ブランドの製品は中国やバングラデシュで製造されているものが多く、今回の件について専門家や広報関係者から疑問の声が上がった。
紳士服専門のライター、デレク・ガイ氏はXに「ジョス・エー・バンクのスーツは通常、中国やバングラデシュのような国で製造されている」とし、「なぜトランプ氏が米国製のスーツではなく安価な輸入品を選んだのか気になる」と投稿した。
親会社が抱えるサプライチェーンの現実
ジョス・A・バンクの親会社である「テイラード・ブランズ」は、他にも「メンズ・ウェアハウス」などのブランドを展開している。同社は「米国最大のオーダーメイド服工場」を傘下に持ち、傘下のブランド「ジョセフ・アブード」の一部は米国製である。しかし、証券取引委員会に提出された書類によると、同社はベトナム、インドネシア、バングラデシュ、中国を含むグローバルなサプライヤー網を構築しているのが実情だ。中国からの調達比率を削減する動きはあるものの、トランプ氏が着用したスーツが、同社が海外で展開する安価なラインであったことは確実視されている。
過去の自身のブランドとの比較
トランプ氏は2004年に自身の紳士服ブランド「ドナルド・J・トランプ シグネチャーコレクション」を立ち上げ、メイシーズなどで販売していた。当時、Amazonなどのサイトでは一部商品が「アメリカ製」と表示されていたが、実際のタグには「インドネシア製」と記されていたことがバズフィードニュースによって報じられた過去もある。今回、遊説会場で確認されたスーツが「トラベラー」シリーズの既製品である可能性が高いとされ、価格は279ドル前後で販売されているものと酷似している。

今後の政治的メッセージへの影響
今回のスーツを巡る騒動は、トランプ氏が掲げる保護主義的な政策と、実際の消費行動との間に生じているギャップを浮き彫りにした。かつては豪華な金箔の装飾や4億ドルの専用ジェットなど、富を誇示する姿勢が目立った同氏だが、今回の遊説での装いは、全米各地を移動する実務的な選択とも受け取れる。しかし、米国製造業の保護を訴える演説の最中に、海外製の安価なスーツを着用していた事実は、今後の選挙戦において対立候補や有権者からどのような評価を受けるのか、引き続き注目が集まることになりそうだ。