米国のドナルド・トランプ大統領がロシアとウクライナの間で即時の「エネルギー停戦」が合意されたと発表した数時間後、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領は、ハルキウの発電所やガスインフラがロシア軍の攻撃を受けたと非難し、合意違反を明らかにした。
ハルキウと各地で相次ぐロシアのエネルギー施設攻撃
しかし、その発表からわずか数時間のうちに、事態はトランプの期待とは異なる展開を見せた。ウクライナ当局やゼレンスキー大統領によると、首都キーウや東部ハルキウなどでエネルギー施設が相次いで砲撃やドローン攻撃を受けた。国有エネルギー企業ナフトガスは、ハルキウ地域におけるガス生産インフラが夜間に攻撃されたと発表した。
ロシア製ディーゼル油をめぐる米国と欧州の亀裂
今回の停戦発表の背景には、米国のミッドターム選挙(11月3日投票の中間選挙)を控えた燃料価格の高騰対策がある。トランプ大統領は金曜日にロシアのプーチン大統領との間で、ロシアからディーゼル油を購入する取り決めを発表した。トランプは、中東での戦争によって世界的なエネルギー価格が押し上げられている中、ウクライナによるロシアの石油精製施設への攻撃が米国内のディーゼル価格高騰を招いていると主張し、ウクライナ側に攻撃の停止を執拗に求めてきた。ロシア側は、国際市場へ向けて段階的に数百万トンのディーゼルを供給する見通しとされ、最初として30万トン超が直ちに放出され、続いて11月に50万トンが放出される計画が報じられている。

しかし、この動きに対しては欧州連合(EU)の外相や各国の政治家から強い反発や困惑の声が上がっている。欧州の当局者らは、ロシア産燃料の国際市場への復帰が結果としてモスクワの戦争資金を潤すことになると指摘しており、EUの外交政策最高責任者であるカヤ・カッラスは、ロシアが実際に停戦を遵守するかどうかについては懐疑的な見方を示しつつ、ロシアへの制裁やプレッシャーの手を緩めるべきではないと主張した。また、欧州諸国はロシアによるドローン侵入やサイバー攻撃、サボタージュといった行為への警戒感を強めており、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相ら欧州の主要指導者らもウクライナ支援と対ロ制裁の維持を強調している。一方、米国内でも共和党および民主党の政治家の一部から、この合意がロシア産エネルギーの輸入を禁じる米国の国内法に抵触するという批判が寄せられたが、トランプは「I made the right choice for the American People – ALWAYS, AMERICA FIRST!」とSNS上で自らの決断を正当化している。
ゼレンスキーが示す停戦への条件と報復の構え
「このエネルギー停戦は機能し得るし、もしアメリカが真に介入し、ロシアがそれを確実に尊重するようにするならば、戦争を終わらせるための大きな一歩となり得る。」 ウラジーミル・ゼレンスキー(ウクライナ大統領)、CBCの報道における発言
ウクライナ側は、ロシアが全土に対する大規模な侵略を開始して以来、戒厳令のもとで防衛を続けており、憲法上大統領選挙も延期されている中、過酷な冬の到来に向けた「冬の武器化」に対抗している。エネルギー市場や金融機関のアナリストからは、ロシアの精製能力がこれまでの攻撃で著しく低下しているため、発表されたディーゼル供給量が市場価格にどれほどの即時的影響を与えるかについては慎重な見方が示されている。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物が上昇するなど、地政学的リスクと中東情勢を背景とした不確実性は依然として高く、ウクライナ情勢およびエネルギー供給網の先行きを巡る国際的な緊張は今後も続く見通しである。