スタンフォード大学が広報用写真に生成AIを使用し、実在する学生の人種や体形を無断で改変していたことが判明した。2026年9月に学生新聞「The Stanford Review」が報じ、全米で大きな波紋を呼んでいる。大学側は多様性を強調する目的で加工を行ったとされるが、当事者や学生からはアイデンティティの軽視やルッキズムの助長だとの批判が噴出している。
生成AIで学生の姿を改変したスタンフォード大学の広報写真
米西部の名門スタンフォード大学が、学生の姿を生成AIで加工した広報写真を使用していた問題が浮上した。WEDGE Online(ウェッジ・オンライン)によると、問題となったのは2024年に大学の食堂で撮影された3人の学生の画像である。同大の寮・食堂運営部門が広報用に用いた際、右端に写っていたラテンアメリカ系の男子学生が削除され、実在しないアフリカ系の女性に差し替えられていた。また、同じ写真内のアジア系の女性に対しては、顔や体形を実際よりも細く見えるような修正が加えられていた。Yahoo!ニュースなどが報じたところによれば、この事態は学生新聞「The Stanford Review」がX(旧Twitter)上で画像を公開したことで明るみに出た。
消されたラテン系学生と多様性の偽造という批判
写真から自身の姿を消されたメキシコ系のラミレスさんは、テレビのインタビューに対し、当初は笑ってしまったものの、次第に「自分のラテン系としてのアイデンティティが消されている」と感じ、怒りを覚えたと語っている。大学側は日頃から多様性の推進を掲げているが、今回の加工により、アフリカ系のコミュニティへの実質的な支援を行う代わりに、写真上で「アフリカ系もキャンパスに多数在籍している」かのように見せかける「多様性の偽造」を行っているとの強い批判が巻き起こった。名門大学によるAIを用いた人種改変は、全米のニュースとして大きく取り上げられる事態となった。
ルッキズムを助長するアジア系学生への体形修正
人種の差し替えだけでなく、写真内の学生に対する体形修正も大きな論争を呼んでいる。加工対象となったアジア系の女性については、顔や体形を細く見せるような修正が施されていた。これに対し、大学が公的な広報素材においてルッキズム(外見至上主義)を助長するような改変を行うことは「ありえない」との批判が相次いだ。単なる集合写真の加工を超え、大学が学生の容姿を理想化しようとした姿勢そのものが、教育機関としての倫理観を問われる結果となっている。
ウィスコンシン大学とアイダホ大学の過去の事例
大学による広報写真の改変は、今回が初めての事例ではない。過去にも同様の不祥事により、大学の信頼が大きく揺らいだ例が存在する。

- 2000年:ウィスコンシン大学マディソン校が、新入生募集パンフレットの表紙で、白人学生ばかりの観客席に黒人学生の写真を合成し、掲載したことが発覚した。
- 同2000年:アイダホ大学が公式サイトに掲載した写真で、白人学生をアフリカ系およびアジア系の学生に差し替えていたことが判明し、学長が謝罪に追い込まれた。
名門大学に突きつけられたAI利用の倫理的課題
今回のスタンフォード大学のケースは、生成AIという新しい技術が広報戦略に安易に組み込まれたことで、より巧妙かつ深刻な問題を引き起こしたといえる。かつての写真加工ソフトによる合成は、その不自然さから発覚に至ったが、AI技術の向上は事実と虚構の境界を曖昧にしている。実在する学生のアイデンティティを操作し、見栄えを調整する行為が、大学のコミュニティや学生本人にどのような心理的影響を与えるのか。大学側がこの広報戦略の意図について今後どのような説明を行うのか、また、AIを広報活動で活用する際のガイドラインをどう再構築していくのかが注視されている。