スイス氷河観測ネットワーク(GLAMOS)とスイス科学アカデミー(SCNAT)の調査により、2026年だけでスイスの氷河が体積の5%以上を消失したことが明らかになった。GIGAZINEなどが報じた。観測史上最大の減少を記録した2022年に次ぐ歴代2位の規模となり、直近5年間で氷の総量のほぼ5分の1が失われる異常事態となっている。
2026年の猛暑と熱波がもたらした記録的な氷河減少
2026年の夏は、5月から9月にかけて異例の暑さが続き、数度の熱波がアルプスを襲った。スイス気象局メテオスイスによると、4月から9月にかけては1864年の観測開始以来で最も暑く乾燥した6カ月間を記録した。英紙ガーディアンを引用した中央日報の報道によると、今年1月から8月の体積減少率は5.5%に達し、2021年以降の累積減少率は19.4%にのぼる。GIGAZINEは、7月から9月に氷河から失われた水分量が約2兆2000億リットルに達し、スイス全世帯の年間飲料消費量の4倍を超える規模であると伝えている。BBCの報道によれば、英ブリストル大学のファビアン・モーシオン博士は「10年前なら、氷河がこれほど急速に消失する可能性があるとは考えもしなかっただろう」と述べ、気候科学者の視点からは予想できた変化であるとしつつも非常に憂慮すべき事態だと指摘している。
雪の層の消失と氷河の内部崩壊という新たな危機
氷河の減少を加速させた直接的な原因には、冬の降雪量の不足と春季からの急速な雪解けがある。SCNATによると、2026年6月の時点で雪の層が部分的に消失し、9月には海抜3500メートルの高地でも雪の層を確認できない状態に陥った。新雪は太陽光を反射する役割を持つが、雪が失われてむき出しになった暗色の氷は熱をより多く吸収する。さらに、中央日報の報道では、氷河の表面が後退するだけでなく、内部を流れる水が氷を削ることで巨大な空洞ができ、その天井部分が崩落する現象が起きたことが報告されている。研究チームを率いるETHチューリッヒのマティアス・フス氏は、「氷の内部にチーズの穴のような巨大な空洞ができ、その天井が崩れ落ちる。氷河は文字通り崩れ落ちている」と述べ、崩壊がさらなる後退を加速させていると警鐘を鳴らしている。
過去の記録との比較に見る融解プロセスの変化
2026年の減少幅は過去最大の損失を記録した2022年を下回る水準だったが、特定の氷河では深刻さが際立っている。GIGAZINEの報道によると、ローヌ氷河やアルプス最長のアレッチ氷河などで激しい減少が観測され、アレッチ氷河の最も低い観測点では厚みが13メートル失われた。また、プラタルバフィルン氷河ではわずか20年間で面積の99%が消失した。2022年と比較して今年の減少がわずかに抑えられた要因についてSCNATは、多くの氷河で冬の終わりの積雪量が2022年をわずかに上回ったことや、雪解けを促すサハラ砂漠からの降砂量が少なかったことを挙げている。しかし、フス氏が指摘するように、長年蓄積されてきた古い氷が熱い岩の上で解ける現象は持続可能ではなく、小規模な氷河では以前のような水位の回復が見込めない状況にある。

長期的な水供給のリスクと残されたわずかな見通し
急速な氷河の融解は、一時的に夏の水不足を緩和する効果をもたらしているものの、長期的な水資源の安定供給には重大なリスクをはらんでいる。BBCの報道においてフス氏は、現在流れ出ている水は何世紀も前に蓄えられた古い水であり、氷の総量が減少している以上、将来の猛暑時には同じ量の水を供給できなくなると警告している。今後数十年にわたり、農業、水力発電、船舶輸送のための水供給が脅かされるおそれがある。SCNATは「この環境下では、アルプスの氷河を長期的に維持できる見込みはまったくありません」との見解を示している。その一方で、BBCが伝える専門家の見解によれば、大規模な炭素排出量の削減を実行できれば、ヒマラヤ山脈や極地など世界中の大部分の氷河を救うことはまだ可能であり、気候変動対策が世界的な海面上昇の抑制にも直結すると強調されている。