南極に近い英領サウスサンドウィッチ諸島のザボドフスキー島で、ヒゲペンギンの巣が15年足らずの間に63%減少し、地球最大のコロニーとしての称号を失ったことが最新の研究で明らかになった。英南極観測局(BAS)などの調査によると、気候変動に伴う主食のオキアミ減少が響き、50万羽以上が失われたという。
ザボドフスキー島のヒゲペンギンが15年で63%減少
南大西洋に浮かぶ英領サウスサンドウィッチ諸島の最北端に位置するザボドフスキー島は、活火山カリー山を取り囲む丘の斜面がヒゲペンギンやマカロニペンギンで埋め尽くされ、長らく「地球最大のペンギンコロニー」という称号を保持してきた。しかし、2026年10月7日付で学術誌「Current Biology」に発表された研究により、同島のヒゲペンギンが地域の他の群れよりもはるかに速いペースで減少していることが判明したと、ナショナル ジオグラフィック日本版およびYahoo!ニュースが報じている。
ドローンと衛星画像が暴いた50万羽の損失
1980年代から南極半島でヒゲペンギンが激減し始めた動向を受け、科学者たちは隔絶された同島の状況についても懸念を強めていた。英南極観測局(BAS)の研究者は、ドローンによる空中調査と衛星画像を組み合わせた分析を実施した。その結果、1つの巣につがい1組とするヒゲペンギンの巣が15年足らずの間に63%減り、50万羽以上が失われたことが突き止められた。2011年以降は気候変動に伴う減少が一定のペースで続いており、島のペンギン全体の約4割が失われた結果、地球最大のコロニーの称号は南極ロス海のアデア岬に譲ることとなった。
専門家が警鐘を鳴らす南極海の急速な変化
チリの研究センター「南極・亜南極エコシステム生物多様性ミレニオ研究所」の極地科学者で海鳥生態学者のルーカス・クルーガー・ガルシア氏は、「ある国の総人口が15年間で60%減ったと想像してみてください。これは本当に憂慮すべき事態です」と指摘する。なお、クルーガー・ガルシア氏は今回の研究には関与していない。また、研究に参加したBASのリモートセンシング専門家ピーター・フレットウェル氏は、「南極海は急速に変化しています。そのペースは地球上のどこよりも速いです」「現在、南極で目撃されている現象は、世界のほかの場所で今後起こり得る事態の予兆です」と述べている。
温暖化と水温上昇が脅かす南極の氷の基盤
地球の気候を安定させるうえで重要な役割を担う南極海は、世界の海洋が吸収する熱の約4分の3、そして人為的な二酸化炭素排出量の5分の1を取り込んでいる。しかし海面下では、暖かい中間層の水が棚氷を下から解かしており、南極のウェッデル海では水深2000メートルより深い層が温まる速さが世界平均の約5倍に達するとの研究もある。南極の海洋生物を支える氷の基盤そのものが脅かされる中、今後の環境変動が他のコロニーや生態系全体にどのような影響を及ぼしていくのか、さらなる動向が注視されている。