2026年10月8日午後4時頃、ニューヨーク市マーブル・ヒル地区で移民・関税局(ICE)の捜査官がドミニカ共和国籍の男性を標的とした一斉検挙作戦中に発砲し、同男が負傷した。
マーブル・ヒルでの発砲事件と現場の状況
捜査対象となった男性は、大窃盗の有罪判決のほか、暴行、強盗、薬物所持、武器所持の前科があり、トリニタリオス・ギャングに関わっていると当局は主張している。当局の発表では、同男は2023年12月7日にニューヨーク市警察(NYPD)に逮捕されたものの、数日後に釈放されたとされている。
目撃証言や現地の情報によると、現場の住宅街において、捜査官らが男性と5歳の子供が乗った車を取り囲んだ後に複数発の銃弾が発射された。近隣のレストランで働いていたペドロ・アルマレズ氏は、銃声を聞いて外に出たところ、ICEの服装を着用した複数の捜査官や3、4台の車両が現場にいるのを目撃したと証言している。

ニューヨーク・タイムズ紙が公開した携帯電話の動画には、銃撃の直後とみられる場面が捉えられており、黄色いベストを着用した捜査官がアサルトライフルとみられる銃を保持しながら電話で話している様子が映し出されていた。
別の目撃者は、車の手前の路上で男性が血を流して倒れており、捜査官が小さな子供を抱きかかえているのを見たと地元ニュースに語っている。
ニューヨーク市のゾフラン・マンダニ市長は、ガーディアン紙およびYahooに対して「その人物は生存しており、地元の病院にいる」と述べた。
負傷した男性の身柄と病院周辺での衝突
国土安全保障省(DHS)は声明の中で、ICE職員が武器を発使して当該の不法滞在外国人が負傷したと発表し、職員らが直ちに救護措置を行ったと付け加えた。男性は意識があり、病院へ搬送されて生存が確認されている。
ニューヨーク市警察(NYPD)のジェシカ・ティッシュ警察委員によると、この男性は28歳であり、2023年と2025年にニューヨーク市内で2度逮捕された経歴があるという。また、車内にいた5歳の子供は身体的な負傷はなく、NYPDが福祉確認を行った上で親族の元へと引き渡された。

国土安全保障省は、ガーディアン紙およびYahooを通じて「その人物は生存しており、地元の病院にいる」と発表した。
サンクチュアリ政策と相次ぐ車両銃撃の背景
銃撃事件が発生した現場周辺には黄色い規制線が張られ、集まった市民や目撃者からは抗議の声が上がった。ある女性はバルコニーから捜査官に向けて「私たちの子供を連れ去っている」と叫ぶなど、現場は緊迫したことに包まれた。
ニューヨーク市のゾフラン・マンダニ市長は声明を発表し、「これは良心にもとる、信じられないほど深刻な事態だ」と銃撃を非難した。
さらに同市長は、ドナルド・トランプ大統領および国土安全保障省のマークウェイン・マリン長官と電話会談を行い、銃撃された男性の釈放や、ニューヨーク市内でのICEによる取り締まり活動を即時停止することを要求したが、交渉は不調に終わったことを記者会見で明らかにした。マンダニ市長は、こうした連邦移民当局の行動が都市の安全を脅かしていると主張し、「市外へ出ていってほしい」と強く反発している。
一方の国土安全保障省側は、民主党の進める「サンクチュアリ政策」が犯罪者を野放しにし、アメリカ国民の命を危険にさらしていると批判を強めている。また、ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事もトランプ大統領とDHS長官に対して厳重に抗議の意を伝え、取り締まりの中止とボディカメラ映像の公開を要請した。共和党のドナルド・トランプ大統領が政権に復帰して以降、全米各地で移民捜査官による発砲事件が相次いで発生しており、今回の事件により連邦政府による強制送還政策およびその執行手法をめぐる議論が一層激しさを増している。