ソウルで働く34歳のIT企業社員オ・スノさん(仮名)は、給与を貯蓄しても住宅購入は困難だと語る。かつて朴槿恵大統領の弾劾を求めた彼は、現在、メディアや選挙管理委員会への不信を背景に右派的な主張を支持している。
不動産価格の高騰と将来への諦め
ソウルの中小IT企業に勤務するオ・スノさん(34歳・仮名)は、自身の経済的な見通しについて厳しい見方を示している。大学で理系学問を修め、国内大手メーカーで研究開発に従事した経歴を持つが、現在は住宅購入を現実的な選択肢と考えていない。オさんは「給料を1銭も使わず、10年、20年と貯めても買えるかどうかわからない」と述べ、雇用環境や不動産価格の現状に強い閉塞感を抱いていることを明かした。
朴槿恵政権への怒りと政治への目覚め
オさんが政治に関心を持ったのは高校3年生の頃だった。当時発生したセウォル号事故での初動対応の遅れを目の当たりにし、朴槿恵大統領に対して強い憤りを感じたという。大学生時代には、周囲の友人と共に朴大統領の弾劾を求める「ろうそく集会」に参加した経験がある。この時期、オさんは自身の政治的スタンスをリベラルな方向と重ね合わせていた。
メディアと世論に対する疑念の芽生え
集会への参加を経験したオさんだが、その後、別の政権下で災害や事故が発生した際の対応を比較し、メディアの報道姿勢に疑問を抱くようになった。「同じように責任を問われていないように見えた」と語るオさんは、メディアが世論を誘導しているのではないかという疑念を強めていった。この経験が、従来の政治的な立ち位置から右派的な主張へと傾倒するきっかけとなった。
中央選管に対する不信感の背景
政治的不信は、2022年の大統領選における中央選挙管理委員会の対応によって決定的となった。当時、新型コロナウイルス感染者の投票用紙が紙箱や籠で運ばれるなど、杜撰な管理実態が露呈し、選管は謝罪に追い込まれた。さらに、2023年には国民権益委員会が、選管幹部の子弟が採用されるなど353件の不正疑惑を確認している。オさんは「親が選管にいるという理由で高給で安定した公職に入れるなら、相対的剥奪感を抱かないほうが難しい」と指摘した。
「公正さ」を求める保守的な主張
オさんの政治姿勢の根底には、社会全体に対する「公正さ」への強いこだわりがある。彼は中国人の待遇を「まるで天竜人のよう」と表現するなど、既存の政治や社会システムが公平性に欠けているという不満を抱えている。自身のキャリアにおいて「大企業疲れ」から転職を選択した経緯も含め、現在の韓国社会における格差や特権構造に対する強い警戒心が、彼の右派的な主張を支える論理となっている。
- 2022年大統領選:事前投票における管理不備で選管が謝罪
- 2023年国民権益委員会:選管における353件の採用不正疑惑を確認