イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がフォークランド諸島(アルゼンチン名:マルビナス諸島)をめぐる紛争でアルゼンチンを支持するよう外交官に指示したとの報道に対し、イスラエル政府はこれを強く否定した。英テレグラフ紙が2026年10月24日に報じたこの方針転換の噂は、英国による西岸地区の入植地に対する制裁を背景に浮上していた。
テレグラフ紙の報道と外交方針の転換
英紙テレグラフは2026年10月24日、ネタニヤフ首相が外交官に対し、フォークランド諸島をめぐる領有権争いでアルゼンチンの立場を支持し、直接交渉を求めるよう指示したと報じた。同紙によると、この動きはアルゼンチンが主張する同諸島への「歴史的なつながり」を認めるものであり、イスラエル政府の公式な立場における重要な変更を示唆するものだった。
この報道は、イスラエルの国連大使ダニー・ダノン氏が先週の国連セッションで行った発言を根拠としている。ダノン氏は英国とアルゼンチンに対し、フォークランド諸島の将来について直接交渉を行うよう呼びかけた。ダノン氏は、アルゼンチン国民がこの問題に寄せる重要性を認識していると述べた。
イスラエルは、アルゼンチン国民がこの問題に寄せる重要性、そして国際法に基づいた外交的手段による解決に向けた継続的な努力を認識している。
ダニー・ダノン、イスラエル国連大使
テレグラフ紙は、この発言が政府高官によって承認されたものであり、イスラエルがこの紛争に関与したのは今回が初めてだと指摘した。一方で、この動きはアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領とネタニヤフ首相の親密な関係を背景としていると分析されている。ミレイ氏は、イスラエルの独立記念日に儀式用の松明を灯すなど、一貫してイスラエルを支持してきた人物である。
イスラエル大使館による全面否定
こうした報道に対し、イスラエル側は即座に反応した。在英イスラエル大使館のアレックス・ガンドラー広報官は、SNSのXを通じてこの報道を完全に否定した。
その主張を断固として否定する。そのような指令は存在しない。
アレックス・ガンドラー、在英イスラエル大使館広報官
イスラエル政府関係者は、国連でのダノン大使の発言について、特定の「方針転換」ではなく、あくまで一般的な外交姿勢であると示唆している。しかし、テレグラフ紙は、もし英国がさらなる制裁を科すようなことがあれば、イスラエルがより踏み込んだ対応をとるのではないかという懸念が政府内で共有されていると報じている。
英国とアルゼンチンの領有権争いと歴史的背景
フォークランド諸島(英領)をめぐる紛争は、1982年に両国が74日間の戦争に突入した歴史を持つ。この紛争では、アルゼンチン側で649人、英国側で255人、島民3人が死亡した。英国は現在も、島民の同意なしに主権を議論することはできないとの立場を維持している。2013年に実施された住民投票では、1,517票のうち1,513票が英国領土としての残留を支持し、反対はわずか3票であった。

現在、アルゼンチンは国際海洋法裁判所(ITLOS)に対し、島周辺の英領海内で行われている「シーライオン」プロジェクトと呼ばれる深海石油開発を阻止するよう求めている。この開発計画は約220キロメートル北の海域で進められており、アルゼンチンはこれを違法と見なしている。
イスラエルと英国の外交的摩擦
今回の外交的な摩擦の背景には、イスラエルと英国の間の緊張関係がある。英国政府が西岸地区の入植地に対して制裁を科す決定を下したことは、イスラエル側の激しい反発を招いた。これに関連し、イスラエル国内では英国領事館の格下げや職員の追放といった報復措置がとられた。

イスラエル政府内では、イタマル・ベングビール国家安全保障相が、英国の制裁に対する対抗措置として、アルゼンチンの主権を公的に承認するようネタニヤフ首相に強く求めていた。一方で、イスラエルは「ファイブ・アイズ」を通じた英国との情報協力や、フォークランド周辺の石油開発に携わる英企業との商取引など、多岐にわたる経済的・戦略的な利害関係も抱えている。英国外務省は、現時点でテレグラフ紙の報道についてコメントを発表していない。