イギリスの下院防衛委員会は2026年10月22日、同国が極北地域の防衛において「著しい空白」を抱えており、ロシアの攻撃に対して脆弱な状態にあると警告する報告書を発表しました。水上艦艇や潜水艦の不足が、海底ケーブルなどの重要インフラを危険にさらしていると指摘されています。
極北地域における防衛上の「著しい空白」
イギリスの下院防衛委員会は、極北地域における同国の軍事力に重大な懸念を示しました。ロシアのウラジーミル・プーチン政権が同地域を軍事的な優位性のために掌握しようと動いている中、イギリス軍の備えが追いついていない実態が浮き彫りになっています。
委員会は、海底ケーブルやエネルギー供給網といった極北の重要インフラが無防備な状態にあると指摘しました。ロシアが紛争時に大西洋の補給路やイギリス本土を脅かす危険性について、報告書は強い警鐘を鳴らしています。

下院防衛委員会の委員長を務めるタン・デシ氏は「ここは厳しく敵対的な環境であり、最大の敵対国であるロシアが軍事的な優位性を求めて支配しようとしている場所だ」と述べた。
下院防衛委員会の委員長を務めるタン・デシ氏は、この厳しく敵対的な環境で最大の敵対国であるロシアが優位性を求めていると述べ、早急な対策の必要性を強調しました。
また、欧州のNATO加盟国と同様に、イギリスも弾道ミサイル防衛、長距離打撃能力、情報・監視・偵察(ISR)資産といった重要な軍事能力の多くをこれまで主に米国に依存してきたことが報告書で指摘されています。米国が同地域でより単独行動的な動きを見せる中、カナダや欧州のNATO同盟国とともに、極北における自国の利益防衛により多くの責任を持つようグループは強く促しました。

艦艇の稼働率不足と氷底下での潜水艦運用能力の喪失
防衛委員会の調査では、イギリス海軍が直面する具体的な装備の不足が明らかにされました。対潜水艦戦の要となる艦艇や原子力潜水艦は老朽化が進んでおり、メンテナンスのために稼働できる数が限られています。
現在、敵の潜水艦を追跡する23型フリゲート艦が5隻、45型駆逐艦が6隻運用されていますが、これは海軍が必要とする19隻という要件のわずか半分程度にすぎません。潜水艦についても衝撃的なほど低い稼働率となっており、北極海の氷の下で運用する能力を一時的に失っていると伝えられています。

将来的には新しい26型フリゲート艦8隻が引き継ぐ予定であるものの、建造の進捗が遅いため、残存する艦艇が早期に退役しないよう維持することが強く求められています。氷底下での運用能力が失われていることで、紛争時にロシアが氷を利用して自国の原子力潜水艦を隠蔽・保護しつつ、NATOの海上交通路やイギリスの核抑止力を脅かすおそれがあるとの指摘もなされました。
2030年の脅威に向けた防衛費と装備増強の議論
かつてキア・スターマー前首相は、ロシアが早ければ2030年末までにNATOを攻撃する可能性があると警告していました。保守党の戦争準備担当影の閣僚であるスチュアート・アンダーソン氏は、戦争を抑止するためには戦闘への備えが不可欠であり、将来への先送りではなく現在防衛費を投じる必要があると主張しています。
委員会はまた、イギリス主導の北部欧州諸国による軍事連合である統合遠征軍(Jef)が、バルト地域と同等の活動レベルを維持するのではなく、極北地域の脅威により重点を置くべきか検討するよう提案しました。これに対し英国防省(MoD)の広報担当者は、JefがすでにNATOの北部方面の強化や急速な脅威への対処能力向上に寄与しているとしつつ、ロシアの脅威に対して明確な認識を持って対応にあたっていると強調しています。