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2024-11-03 23:30:00
ガーマン氏はその場で「悪気があって言ったわけではない」と付け加え、自らの発言をフォローした。
冒頭の提出書簡や、Business Insiderが確認したAWSの社内スラックチャンネルの内容から判断すると、ガーマン氏自身が話を聞いた部下のほとんどが今回の変更を「実際のところ、相当楽しみにしている」などと語っていたという部分に(実態とのかい離を感じて)納得いかない従業員も多いようだ。
また、ガーマン氏は全社ミーティングの場で、同じ職場で対面して働いていない従業員が「真のイノベーション」を生み出すケースを見たことがないとも発言しており、それに対して提出書簡は「多くの従業員の実感や経験と矛盾している」と反論する。
前出の社内スラックチャンネルには、「マット(・ガーマン氏)のこの発言は私もしくは私たちのチームには当てはまらない」との投稿も見られる。
アマゾンの従業員総数は2023年に約150万人(株主総会向け事業報告書の記載による)で、そのほとんどを倉庫作業員が占める。一方、ガーマン氏宛て書簡の作成母体となったスラックチャンネルの参加者は3万人を超え、実際に提出された書簡には523人が署名、うち172人は実名公開を選択した上で署名した。
以下にガーマン氏宛てに提出された書簡の全文を紹介する。
AWSおよびアマゾンの従業員として、顧客のためにたゆまぬ努力と革新に日々取り組んでいる私たちは、去る10月17日のAWSグローバルミーティングの席で、週5日オフィス出社の義務化に関してあなたが行ったデータに基づかない説明に愕然(がくぜん)としています。
あなたのコメントは以下のようなものでした。
実際のところ、従業員の10人中9人は今回の変更を相当楽しみにしているのだと思っています。それにはいくつか理由があります。
アマゾンが特別であり続けている理由は、議論を通じてイノベーションを生み出す能力にあります。
革新を望む時、本当に革新的な製品を生み出したいと思う時、そうした能力が対面での仕事なしに発揮されたケースを私は見たことがありません。
ホワイトボードの前に立ち、現状を丁寧に説明して共有し、ブレインストーミングを行い、隣のブースにいる同僚に進捗を尋ね、コーヒーやランチをともにしながら語り合い、同僚が取り組んでいる仕事から学びを得て、それが自分の仕事に何らかの刺激をもたらす。
それらは何にも代えがたいことで、リモートワークでは決してうまくいかないし、そもそも起こり得ません。だからこそ私たちはこう感じるのです。自分は特に強く感じているのですが、オフィス環境での仕事に復帰するのが当社にとっていかに重要であるかということを。
上記のようなあなたのコメントは、多くの従業員の経験や実感と一致しないだけでなく、世界で最もイノベーティブな企業であり、業界の成長を牽引するリーダー企業である当社AWSの役割を放棄するのと全く一緒です。
あなたはこうした発言をすることで、アマゾンのSチーム(=CEOを取り巻く同社の最終意思決定機関)がこれまで行ってきたような、アマゾンにおける労働の実態やオフィス復帰命令が社内ひいては顧客にもたらす影響について不正確な事実を伝える風潮を、温存ないしは悪化させているのです。
アマゾンはデータ駆動型企業を自ら謳(うた)っており、「当社は考えています(信じています)」「私は感じています」といった表現の多用や、多数の従業員が興奮しているなどという自己正当化を目的とした強弁は、数十万規模の従業員やその顧客に影響を及ぼす決定的な問題に関する意思決定をめぐるコメントの水準として、相応しいものではありません。
あなたの発言は、自身の見解を裏付ける十分なデータを収集できていないのに無理やり前進しようとしているか、あるいは自らの見解と異なる事実を示すデータを確認しながらもそれをあえて無視しているか、もしくは新たなポリシーを支持する動機を持ちながらもその影響を受ける人たちに事実を包み隠さず明かすつもりがないか、いずれかと解釈されます。
そのような可能性があるとすれば、それらはいずれも、リモートワークのメリットを経験した当事者としての従業員、さらにはそうした経験を裏付ける詳細なデータを把握している従業員からの信頼を損なうものです。
独立した研究データによって繰り返し証明されてきた事実はただ一つ。
フレキシブルな職場ポリシーを備えた企業では、より多様な従業員の就業が可能になり、それが各事業に共通する目標の達成に向けた持続的かつ効果的な貢献を生み出すのです。
従業員それぞれの置かれた環境やワークスタイルを包摂し、理解することこそが当社にとって正しいアプローチであるとまでは言えなくても、多様な視点がより大きなイノベーション、生産性、レジリエンス(強靭さ)につながることは、すでに研究データから証明されています。
こうした(生い立ちなどの)バックグラウンドや所在、ワークスタイルの多様性は、AWSが将来にわたって優秀な人材を採用して流出を防ぎ、市場の牽引役かつ革新者であり続けるために不可欠です。
週5日出社義務を厳格に運用し、会社のミッションに決められた特定の形で貢献できないもしくは貢献する意思のない従業員に「(勤務先として選び得る)他の会社もある」などと告げることで、あなたは重要な視点を持つ従業員の口を封じ、そうすることによって当社のカルチャーと未来を毀損していることになります。
さらに言えば、それはアマゾンが標榜する「地球上で最高の雇用主を目指す」との企業理念を表現したリーダーシップ・プリンシプルにも合致しません。
より安全でより包摂的、なおかつより健全な職場環境を必要とし、今回のポリシー変更で不相応に大きな影響を被る一部の保護すべき従業員たちにとっては特にそう言えます。
子育て中の(特に乳幼児の小さな子供を抱える場合)両親、神経多様性(=脳や神経に由来する多様な特性)や障害、疾患を抱える従業員、高齢の身内などの介護義務を負う従業員、就労ビザを維持するため会社命令に従うかさもなくば退社して帰国する以外に選択肢のない従業員らがそれに該当します。
あなたの発言はあなたが認識する範囲における対面コラボレーションのメリットに焦点を当てていますが、これまであらゆるレベルの逆境を克服してアマゾンのミッションに貢献してきた大切な従業員たちに(新たなポリシーが)もたらす数々の深刻な困難を認識することさえしていません。
そうした困難な課題に目を向けてもらえるよう、従来の週3日出社義務ポリシーですら彼ら彼女らの生活と仕事に大きな影響を与えていた実態を示す匿名の体験談をまとめてこの書簡に添付しました。
さらに複数の研究によれば、オフィス出社の義務化は、勤続年数の長いシニアポジションの従業員を退社に追い込む傾向にあることが分かっています。
あなたが言及したところのホワイトボードを使った現状共有やブレインストーミングセッションで、意見や洞察を述べることが期待されているのがそれらの従業員ですから、その退社は残される従業員たちの士気低下につながる可能性もあります。
あなたは新たな、以前(の週3日)より大きな影響を及ぼす週5日出社ポリシーを絶賛するだけで、今述べたような問題に取り組むことも解決策を提示することもしていません。
リーダーのそうした振る舞いを私たちは容認するわけにはいきません。
それらの(逆境を克服して会社のミッションに取り組んできた)従業員たちの貢献を日々目にし、高く評価してきた私たちとしては、あなたが彼ら彼女らの人間性を否定し、会社に与えてきたインパクトを矮小化する様子を黙って傍観しているわけにはいかないのです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るう中でオフィス出社を回避して業務に取り組んだ時期の経験から、私たちは対面を基本とする勤務形態でなくても効率的、創造的に仕事を成功させられることを知りました。
そうした経験から何も学んでいないとしたら、極めて残念なことです。と言うのも、アマゾンは現在もこれからもグローバル企業であり続けるからです。
物理的に離れた場所や国、タイムゾーンに散らばるチームや利害関係者との協業は今後も続いていきますが、そこでは第一の、場合によっては唯一のやり取りがバーチャル経由になる可能性もあります。
しかし、私たちはそのやり取りを効果的に行うためのツールやアプローチをすでに獲得しています。それらを使いこなすのも、もはや目新しいことでも難しいことでもありません。
逆に、地域を超えたやり取りが数え切れないほど発生する一方、協業する従業員や関係者間の勤務時間の重なり合いは(時差などにより)極めて短く限られるわけなので、オフィス出社しての業務遂行を増やすよう強いるほど仕事の足を引っ張ることになります。
ビデオ会議で済ませられたはずのミーティングをメールのやり取りのような非同期的メカニズムに置き換えねばならず、結果として意思決定が数分、数時間、数日と遅延していくことになるのです。
最後に、今回の出社ポリシー変更により、AWSはポテンシャルを最大限に発揮できなくなり、将来の見通しに暗雲を生じさせることになります。
現行のフレキシブルなリモートワークに課題があることは間違いなく事実です。
しかし、私たちは過去のある時期にたまたまうまく機能した古いやり方に安易に頼ることなく、常に新しくエキサイティングかつイノベーティブなやり方で問題を解決してきた企業であり、もし過去にそうした視野の狭い考え方に固執していたとしたら、私たちが仕事と生活の基盤とするクラウドコンピューティングは今日誕生していなかったかもしれません。
世界中に散らばる従業員が物理的距離を超えて取り組まねばならない数々の問題、その規模感を考えると、進歩や新たな発想につながるオフィス内での自然発生的な会話に期待してそこで満足しているわけにはいかないのです。
私たちが受けている指示は、データを収集、解釈し、それに基づいて行動し、望む結果を導くための新しいメカニズムを発明することであり、指をくわえて何か良いことが起きるのを待つことではありません。
私たちが真に困難な課題に直面して、行く手を阻むその問題の解決を拒否するとしたら、それを見た顧客はすぐにAWSのイノベーションを実現する能力への信頼を捨て去ってしまうのではないかと懸念します。
ここまで述べたような理由から、私たち従業員はあなたが全社ミーティングの際に発したコメントおよび週5日出社義務化に関するあなたの立場を再考するよう強く求めます。リモートワークやフレキシブルワークはアマゾンが他社に先駆けてリードを奪うチャンスであって、脅威ではありません。
この機会を認識して活用し、あるべき働き方を再発明せよと意欲をかき立ててくれるような会社やリーダーのために仕事がしたい、私たちはそう思っています。
署名したアマゾン従業員523名より謹んで宜しくお願い申し上げます。うち172人は以下に実名を記載することを選択しました。
※書簡を提出したアマゾン従業員のプライバシーを保護するため、Business Insider編集部の判断により、記載された実名は割愛させていただきました。
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