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2024-09-13 03:05:00
発表会場に展示されていたiPhone 16 Pro。画面上の「虹色の枠」はApple Intelligenceが動いている証し。
撮影:西田宗千佳
アップルは2024年のiPhoneを「Apple Intelligence」を前提とした製品にしている。
ただ、Apple Intelligenceとはなにか? スマホを買い換えるほどの価値があるのだろうか?
Apple Intelligenceに関する解説記事や試用レポートを掲載してきたが、あらためてその意味を考えてみよう。
なお、Apple Intelligenceが日本で使えるのは2025年からとアナウンスされており、最短でも4カ月後だ。
しかし、アップルの戦略を考える上でも、「Apple IntelligenceレディなiPhone 16などを買うべきか」を考える上でも、現状を知っておくのは重要なことだ。
パーソナルアシスタントをiPhoneの中に
Apple Intelligenceとはなにか? 簡単に言えば、「アップル製品にパーソナルアシスタントを組み込むもの」だ。
主軸となるのはiPhone向けだが、MacやiPadなどにも対応。アップル製品全体で活用される機能になっていく。
できることは多数ある。
まず大きいのは、音声アシスタントの「Siri」が改良されることだろう。それは「音声がリアルになる」とか「もっと賢くなる」という話だけではない。

Apple Intelligence版Siriの動作中は「虹色の光」が特徴。
撮影:西田宗千佳
もっとも重要なのは「人間のラフな物言いにちゃんと対応できる」ということだ。
音声アシスタントに話しかける時、ちょっと構えてしまう感覚を持つことはないだろうか?
一般的に音声アシスタントの対話では、言い間違ったり言い淀んだりすると「わかりません」と言われたり、思ってもみない反応が返ってくるからだ。
そのため、話し始める前に「どう命令するのか」を考えてしまうし、なにを聞けばどう反応するかも考えてしまい、窮屈さや不自然さを感じやすい。
人間の会話は思ったよりラフで、行き当たりばったりなところがある。
Apple Intelligenceによって改善されたSiriでは、言い淀んだり話を少し変えたりしてもちゃんと反応する。
一般的な生成AIと同じように「要約」や「翻訳」もできる。
あらゆる文字入力欄で「作文ツール(Writing Tools)」が使えて、選択した文章の要約や翻訳、リライトなどに使える。

メモ帳やメールを含む「文字を書くあらゆるアプリ」で、生成AIを使った補助である作文ツールが使える。
撮影:西田宗千佳
メール機能とも連動する。複数人でメールをやりとりして長いスレッドができた場合、「冒頭に要約」した文が表示される。
メール自体を、読むべき優先度に従って並べ替えることもある。

大量のリプライを含むメールのスレッドも、要約機能で簡単に内容を把握できる。
撮影:西田宗千佳
写真や動画については複数の強化点がある。
まずは「検索」機能だ。写真や動画に何が写っているかをAIが把握し、検索に使えるようになる。
これまでは「車」「寿司」のような単語単位だったが、「サッカーをプレイしている娘」や「先週のバーベキュー」のように、文章で欲しい画像を見つけられるようになる。
しかも、動画については「動画内の1シーンに含まれる内容」についても検索対象となる。

「サッカーをしている娘」を、写真や動画から一発検索。以前は難しかったことだ。
撮影:西田宗千佳
写真から邪魔なものや人を一発で消す「クリーンアップ(Clean Up)」も搭載される。
グーグルが「消しゴムマジック」の名称で展開しているもののアップル版……といったところだろうか。

「Clean Up」で背景にいる人を一発で消すことも。
撮影:西田宗千佳
また、誰かとメッセージをやり取りしている時、そこに挿入する絵文字として、オリジナルのものを生成する「ジェン文字(Genmoji)」機能もある。
さらには、カメラで撮った写真を簡単にApple Intelligenceへと送る「Visual Intelligence」も搭載される。
この機能では、「予定をカレンダーに登録する」「写っているものがなにかを検索する」ことなどができるし、グーグルの画像検索との連動もある。
多様な新機能が追加されていき、その中核にはApple IntelligenceというAIがある……と考えればいいだろう。
iPhone 16を選ぶか「15 Pro」を選ぶか
Apple Intelligenceを使うには、機械学習処理を高速化するNeural Engine(いわゆるNPU)に加え、メインメモリーが一定量必要になる。
MacやiPadの場合には、いわゆる「Appleシリコン」であるMシリーズ搭載であることが必須となっている。iPhoneの場合には、2023年発売の「iPhone 15 Pro」シリーズも動作対象だった。
2024年発売の「iPhone 16」シリーズは、全機種が動作対象。発表会レポートでも述べたように、プロセッサーを含めてApple Intelligenceを使う前提の構成になったためだ。
だから、iPhone 16シリーズを買うのであれば、「(日本でも今後)Apple Intelligenceが使えるようになる」という点を強く意識するべきだろう。
なお、iPhone 16シリーズ発売以降、Apple Intelligence対応機種は「iPhone 15 Proシリーズ」「iPhone 16シリーズ」「iPhone 16 Proシリーズ」の3ラインになる。
この3ラインにおけるApple Intelligenceの機能・使い勝手に差はない。動作速度についても、画像生成などを除くと差は小さいだろう。
最新の高性能なものほど付加価値が高いわけではない……という点を考えると、「iPhone 15 Proシリーズをあえて狙う」という考え方もあるだろう。
日本語だけでなく英語でも「慎重かつ段階的」提供

アップルは日本語などの言語対応を2025年としている。
出典:アップル
もちろん留意点はある。
まず「Apple Intelligenceは段階的に利用可能になる」ということ。これは日本語だけでなく、2024年中の提供が決まっているアメリカ英語でも同様だ。
アメリカ英語の場合、まずは2024年10月から一部機能、画像生成機能である「Image Playground」、ラフスケッチを画像に変える「画像マジックワンド(Image Wand)」が提供される。
前出のGenmojiやVisual Intelligenceは、10月の段階では提供されず「2024年中の提供」とされる。「目玉機能が発売日から搭載されていない」という意味では、アメリカも日本も変わりはない。
この点は、iPhone 16/16 Proシリーズの初期の売れ行きに影響を与えるかもしれない。
アップルが段階的に提供する理由は「慎重だから」だ。生成AIを使った機能は言語依存性が高く、間違いや不適切な回答が生成される可能性もある。
競争が激化する中、各社は「公開できるところから出していく」「不完全・不評なら取り下げて改善する」ような形で進めている印象も強い。
アップルは他社ほど細かく分けて公開するわけではないものの、段階的提供を選んでいる。
オンデバイスゆえの「非力さ」はどう影響するのか
Apple Intelligenceのようなパーソナルアシスタント路線は、現在のスマホやPCに共通する方向性である。
グーグルもマイクロソフトもサムスンも目指しており、それぞれの機能の有無だけで言えば、各社がやろうとしていることに大きな差はない。
その上でいかに使い勝手を良くするか。そこが製品としての評価を決める。アップルはOSとハードウエアの両方を開発しており、ユーザーインターフェース(UI)の統合では有利な部分もある。

iPhone 16シリーズで追加されたカメラコントロールキーの活用も今後期待される(写真は大学のノートの写真をChatGPTをに送っているところ)。
出典:アップル
他方で、パーソナルアシスタントの使い勝手はUIだけでは決まらない。なぜなら、その多くが「オンデバイスAI」だからだ。
オンデバイスAIとは、機器の中で動作が完結するAIのこと。各種メッセージやアプリの利用履歴、写真に至るまで、スマホの中にはプライベートな情報が大量にある。
AIが自分のアシスタントとして働くには、「自分の事情を知っている」ことが望ましい。
だが、それをプラットフォーマーがクラウドに吸い上げていくのは危険だし、認められるものでもない。また、AIのレスポンスを早くするには、デバイス内で処理している方が有利になる。
パーソナルアシスタント路線の機能は、ほとんどがオンデバスAIで動いている。これは各社共通だ。オンデバイスAIならクラウドを使わないため、プライバシーに対する懸念を排除できる。
アップルもこの点は強調しており、Apple Intelligenceのほとんどはネットに情報を送らず、デバイス内で処理を完結する。
しかし、オンデバイスAIは「デバイス内で動く」ゆえに課題もある。クラウドで動くAIに比べ、性能面での制約が大きいためだ。
Apple Intelligenceで採用され、iPhoneの中で動作するAIは約30億(3B)パラメータ。それに対し、クラウドで動作する大規模な生成AIのパラメータ数は数百億を超える。GPT-4に至っては「兆単位」とも言われている(OpenAIは詳細を公開していない)。
パラメータ数に比例して性能が決まるわけではないのだが、オンデバイスAIはクラウド上の巨大生成AIほど性能が高くないのも事実だ。その結果として「期待するほど賢くないのでは」という懸念もある。
ただ、アップルはその点をよくわかっている。Apple Intelligenceには「Private Cloud Compute」という仕組みがある。

アップルは生成AI機能について、セキュリティーやプライバシーの面で慎重な姿勢を示している。
出典:アップル
デバイス内で処理が足りなくなるような場合には、クラウドであるPrivate Cloud Computeの処理能力を使ってカバーするもので、こちらではオンデバイス向けより大きなAIモデルが動作している。
Private Cloud Computeでは使ったデータも蓄積できない仕組みが取られており、もちろん、AIの学習にも使えない。クラウドではあるが、必要な時にiPhoneの使うプライベートな処理系が一時的に増える……という仕掛けである。
これは他社にない仕組みであり、興味深いものだ。
ただ、アップルが負担する処理コストを考えると、「Private Cloud Computeの利用率が低い」方が望ましい。
それがどのくらいアップルの経営に影響を与えるのか、巨大なクラウド型AIプラットフォーマーとどう違うかたちになるのか、サービス開始後を見守る必要はありそうだ。
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