富山県立山町の黒部ダムと黒部峡谷鉄道トロッコ電車の終点である欅平駅を結ぶ新たな観光ルート「黒部宇奈月キャニオンルート」が、十月二日に一般開放される。関西電力がダム建設や水力発電所の整備のために切り開いた工事用ルートであり、小説の舞台となった「高熱隧道」や三十四度の急傾斜を昇降するケーブルカーなどを乗り継ぎながら、電源開発の過酷な歴史を体感できる仕組みとなっている。
黒部宇奈月キャニオンルートの一般開放はいつ始まるのか
一般開放は十月二日から開始される。ルートは黒部川の電源開発のために整備された「上部専用軌道」や「黒部トンネル」などで構成されており、三十四度の急傾斜を昇降するケーブルカーの「インクライン」や、二百メートルの標高差を一気に移動する巨大なエレベーターなどを乗り継いで進む。旅行会社でのツアー予約が必要であり、今年は十一月三十日まで約二千七百人の限定販売となっている。県委託でツアーを企画するJTBによると、予約枠は残りわずかとなっている。
高熱隧道とはどのような場所なのか
黒部川第三発電所と仙人谷ダムの建設時に、地熱の影響で最高温度が百六十度を超える高熱地帯を切り盛りして掘り進められたトンネルである。一九三六年に関係者が着工し、作家の吉村昭の小説でも取り上げられた。工事中には自然発火したダイナマイトによる死亡事故や、雪崩が作業員宿舎を直撃して八十人以上の死者・行方不明者が出るなどの惨事もあった。周辺は現在も約四十度の熱を帯び、硫黄のにおいが立ちこめている。専用の蓄電池機関車で通過することが可能で、吉村昭記念文学館の北山ゆかり主任学芸員は「作品の世界を体験できる貴重な場所」と述べている。

一般開放が延期された経緯とは
一般開放の計画は二〇一八年に持ち上がり、安全対策工事が進められてきた。当初は二〇二四年六月の開始を予定していたが、能登半島地震の影響で時期が延期されていた。地震により鐘釣橋が破損するなどの被害が出たため、秋以降のスタートとなった。関西電力北陸水力センターの米津和哉所長は、トンネルが現在もダムや発電所の維持管理に使われていることに触れ、「まさに電源開発の原点。現代につながる歴史を感じられる」と語っている。
観光関係者や地元自治体はどのような期待を寄せているのか
開業に向けて関係者からは観光振興への期待の声が上がっている。黒部・宇奈月温泉観光局の川端康夫代表理事は、「注目が集まる機会。富山県全体で一緒になって盛り上がりを広げていきたい」と話している。十月一日には記念式典や出発式が開催され、観光関係者らおよそ百五十人が出席した。落雪被害を乗り越えて三シーズンぶりに全線再開した黒部峡谷鉄道とともに、秋の立山黒部観光の本格化を告げる目玉として期待を集めている。
今後のルート利用と観光の見通しは
初年度となる今年は十一月三十日までの期間中、約二千七百人限定のツアー形式での運行となる。ツアーの予約はJTBを通じて行われており、すでに残りわずかという人気を集めている。長年一般の立ち入りが制限されてきた電源開発の現場が公開されたことで、今後は富山県の山岳観光における新たな周遊ルートとして定着していくかが注目される。