パキスタンのアシム・ムニール国防軍最高司令官は、サウジアラビアとイラン支援のフーシ派による衝突激化を受け、イラン外相と相次いで電話会談を行いました。パキスタンはサウジとの防衛協定を抱えつつ、イランへの外交的働きかけを通じて地域情勢の沈静化を図る難しい舵取りを迫られています。
フーシ派による紅海沿岸の完全掌握と原油価格への影響
戦況は急速に悪化しています。サウジ主導の連合軍によると、火曜日にはフーシ派のドローンとミサイル攻撃により、サウジアラビアの4都市で石油施設が炎上し、73人が負傷しました。その後、木曜日の夜明けにはフーシ派が沿岸の町モッカに到達し、金曜日の朝までには イエメンの紅海沿岸すべてを制圧しました。
この軍事的進展は、世界のエネルギー市場に即座に影響を与えました。金曜日のブレント原油価格は 1バレル=107ドル を突破しました。これは、サウジアラビアの主要な輸出ルートであるホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の両方が、同時に圧力にさらされるという懸念を反映したものです。
さらに、サウジアラビアのホルムズ海峡バイパスルートである東西パイプライン(1日約700万バレルを輸送)沿いで火災が発生したことを示す衛星画像が木曜日に確認されました。リヤド側はこのパイプラインへの攻撃を認めていませんが、緊張は極限に達しています。
パキスタン国防軍最高司令官とイランの「静かな外交」
このような危機的状況下で、パキスタンのアシム・ムニール国防軍最高司令官はイラン側と緊密な連絡を取り合っています。イラン側からの情報によれば、ここ1週間から10日の間に、ムニール最高司令官とイラン外相の間で3〜4回の電話会談が行われたとされています。
「公表されたのはイラン側が発表した2回のみであり、残りはイスラマバードが好む『静かな外交』の一環であった」 イランの外交接触に詳しい情報筋, via Al Jazeera
ムニール最高司令官は4月以降、すでに4回テヘランを訪問しています。直近の訪問は先月であり、ドナルド・トランプ米大統領からイランへの働きかけを求められた電話会談の数日後に行われました。パキスタンは、米イラン間の仲介役としての経験を活かし、フーシ派への抑制をイランに求めていると 毎日新聞が報じています。
防衛協定のジレンマと外務省の曖昧な回答
パキスタンは外交努力を続ける一方で、サウジアラビアとの強い軍事的な結びつきというリスクを抱えています。パキスタンのカワジャ・アシフ国防相は今週、戦闘がサウジアラビア国内へさらに波及した場合、パキスタン、サウジアラビア、トルコの間で結ばれている 相互防衛協定が「間違いなく」発動されると警告しました。
しかし、パキスタン外務省のサジャド・ハイダー・カーン報道官は、木曜日の定例会見で矛盾する姿勢を見せました。サウジアラビアがイランにフーシ派の抑制を求めるようパキスタンに要請したという報道については 根拠がない と否定し、サウジからフーシ派への攻撃を依頼されたという主張についても 仮定の話 であり そのような議論はない と切り捨てました。
一方で、イランを通じてフーシ派に接触しているかという問いに対しては、否定しませんでした。カーン報道官は、パキスタンが 広範な地域の平和と安定のために対話と外交を追求し続ける と述べるにとどめています。
中立の伝統と高まる外交的リスク
パキスタンが直面しているこの状況は、10年前のジレンマの再現といえます。2015年4月、パキスタン議会はフーシ派に対抗するための軍隊や艦船、航空機の派遣を求めるサウジアラビアの要請を全会一致で拒否しました。当時の決議では、危機を終わらせるための積極的な外交的役割を果たすため、イエメン紛争において中立を維持することが定められていました。

元外務次官のジョハル・サリーム氏は、今回のパキスタンの立ち位置について次のように分析しています。
「外交においては、意図的に語られなかったことは、語られたことと同じくらい重要である」 ジョハル・サリーム, 元外務次官
サリーム氏によれば、パキスタンが防衛協定に言及しながらも裏で外交を続けるのは、抑止とエスカレーション回避 を強調するためです。また、サウジアラビアとイランの間の調停役という役割は過去のパターンに沿ったものですが、今回は はるかに高いリスク を伴っていると指摘しています。
パキスタンは現在、サウジへの軍事的なコミットメントと、イランへの外交的アプローチという、相反する二つの線の上を歩いています。フーシ派が紅海の戦略的要衝を完全に掌握した今、イスラマバードの「静かな外交」が実効性を持ち、さらなる軍事衝突を回避できるかどうかが焦点となっています。