ドイツ東部ザクセン・アンハルト州の州議会選挙で、極右政党「ドイツのために選択肢(AfD)」が得票率43.8%を獲得し圧勝した。これは5年前の2.1%から2倍以上に増加した数字であり、2021年の得票率23.7%をほぼ倍増させた結果となる。AfDは83議席の州議会で39議席を確保したが、過半数に必要な42議席には3議席届かなかった。

メルツ首相率いるCDUが歴史的大敗、連立政権への打撃
連邦レベルで政権を担うフリードリヒ・メルツ首相のキリスト教民主同盟(CDU)にとって、今回の選挙結果は極めて厳しいものとなった。CDUの得票率は17.2%にまで低下し、支持を約半分失い、15議席にとどまった。CDUのフランツィスカ・ホッパーマン(Franziska Hoppermann)幹事長は、この結果を「全体としての敗北」とし、「過去35年間にわたりザクセン・アンハルト州の民主主義において責任を担ってきたすべての人々にとっても敗北である」と述べた。
また、中道左派の社会民主党(SPD)は9.3%、緑の党は8.9%、左翼党は8.6%を獲得し、それぞれ8議席を得た。一方、AfDとの協力拒否姿勢を崩さない「防火壁(ファイアウォール)」を批判しつつも、現職のスヴェン・シュルツェ(Sven Schulze)やウルリヒ・ジーグムント(Ulrich Siegmund)の知事選出を支持しないとしたBSW政党は5.3%を獲得し、5議席を得た。
今回の選挙は、SPDとの連立政権を率いるメルツ首相にとって最大の試練とされていた。メルツ首相は、低迷するドイツ経済の立て直しやAfDの台頭を止めることを約束してきたが、実現に至っていない。最近の世論調査では、ザクセン・アンハルト州の有権者のわずか9%しかメルツ氏の政治に満足していないことが示されている。また、全国的な世論調査においてもCDUはAfDに追い抜かれており、AfDは2029年または2033年の次期連邦選挙での勝利を目指している。
欧州各国と国際社会からの反応:警鐘と歓迎の交錯
この選挙結果はドイツ国内にとどまらず、国際社会に大きな波紋を広げた。フランスのベンジャミン・アダ(Benjamin Haddad)欧州問題相は、結果について「欧州にとって非常に重大な瞬間」であり、「ナショナリズムと外国人嫌悪(ゼノフォビア)が決して答えにはならない」と述べ、「我々は歴史を忘れてはならない」と警告した。また、フランス政府のレスキュール(Lescure)氏はRTLラジオに対し、AfDの勝利は欧州に「非常に、非常に懸念すべき信号」を送るものであり、世界的に広がるポピュリズムの波という「大きな挑戦」に直面していると述べた。
一方で、他国の極右勢力や著名人はこの結果を歓迎した。スペインの右派政党Voxのサンティアゴ・アバスカル(Santiago Abcal)党首は、X(旧Twitter)でアリス・ワイデル(Alice Weidel)共同代表とウルリヒ・ジーグムント氏を祝福し、「ドイツと欧州にとっての大きな希望を表している」と記した。ポルトガルの右派政党Chegaのアンドレ・ヴェントゥーラ(Andr Ventura)党首は「歴史的な勝利」と呼び、ドイツ人が「不法で制御不能な移民、腐敗、そして我々の自由とアイデンティティの奪取」に目覚め始めていると述べた。
また、ポーランドのラドスワフ・シコルスキ(Radoslaw Sikorski)外相はRadio Vox FMに対し、AfDが過半数にわずかに届かなかったことは「非常に懸念すべき兆候」であると述べた。さらに、実業家のイーロン・マスク(Elon Musk)氏はXで「Gut gemacht!(よくやった!)」と述べ、これに対しジーグムント氏はマスク氏の「支持」と「現代の政治的展開に関する明確で非常に重要な視点」に感謝を述べた。ハンガリーのヴィクトル・オルバン(Viktor Orban)元首相は「ドイツと欧州にとって巨大な夜」であり、「これは始まりに過ぎない」と述べた。元米国駐独大使のリチャード・グレネル(Richard Grenell)氏は「ドイツにとっての巨大な勝利であり、新しい日」であるとした。ロシア直接投資基金のキリル・ドミトリエフ(Kirill Dmitriev)CEOは、ジーグムント氏を「理性の声」であると評した。
今後の政権樹立の行方と連邦政界への影響
約170万人が投票資格を持つ今回の選挙では、投票率は過去最高の76.5%を記録した。AfDのジーグムント氏は、ARDに対し、有権者が「このままではいけない」という信号を送ったとし、「我々は歴史を書き換えた」と述べ、政権を担う明確なマンデート(負託)を得たと主張した。また、彼は「政治的変化を求めるあらゆる勢力に手を差し伸べる」と述べたが、移民や国内治安といったテーマは議論の余地はないと付け加えた。

AfDの共同代表アリス・ワイデル氏は、この結果が「明確な政府マンデート」を与えるものであり、統治戦略を練るために「すべての政党と話し合う」と述べた。一方で、CDUはAfDとの連立を拒否し続けており、AfD側もそれを排除している。ジーグムント氏は少数政府のような「ゲーム」には関与しないと述べている。
もしAfDが政権を樹立した場合、ジーグムント氏は直ちに「再移民(remigration)と強制送還の攻勢」を開始し、学校でのレインボーフラッグの禁止、および新しい風力発電所の建設停止を実施することを約束している。