ホルムズ海峡での衝突再燃を受け、米国がイラン施設を攻撃した2026年8月31日、原油価格が急騰しウォール街の株価は下落した。サプライチェーンの混乱とインフレ圧力への懸念から、市場や金融政策の先行きに警戒感が広がっている。
ホルムズ海峡での軍事衝突と原油価格の急騰
この戦闘の再燃を受け、原油市場では供給不安が急速に意識された。国際基準である北海ブレント原油の11月限先物は3.4%上昇して1バレル=91.09ドルを記録し、米国産WTI原油の10月限も3%以上高騰して86.22ドルとなった。日曜日夜に米軍がホルムズ海峡のラク島(Larak Island)にあるロケットランチャーを攻撃し、これに対してイラン軍がヨルダンのアメリカ軍基地を標的として報復したことで、米イラン間の紛争は4週間ぶりの戦闘再燃となった。
今回の紛争は、8月1日にドナルド・トランプ米大統領が米軍の軍事攻撃の「一時停止」をアナウンスして以来の戦闘であり、すでに6カ月以上続いている。世界の原油出荷の約20%を占めるホルムズ海峡でのタンカー交通の大幅な制限により、供給の混乱がさらに長期化・深刻化するとの懸念が市場に広がっている。

UPIを通じたPVMオイル・アソシエイツのアナリストであるタマス・バルガ氏によると、今後数週間から数カ月にかけて供給リスクが持続し、原油在庫の減少が続くだろうとの見解を示しており、イラン危機によって中東の安全保障の現状維持の状態がおそらく変化したと述べている。
米国のガソリン価格は、全米自動車協会(AAA)によると、8月のガソリン平均価格が毎日1ガロンあたり4ドルを超えて推移し、コロナ禍のサプライチェーンの混乱に見舞われた2022年8月をも上回る、統計史上最も高価な8月となった。月曜日の全米平均価格は、レギュラーガソリンが前日から0.2セント上昇して1ガロンあたり4.08ドルとなり、ディーゼルは0.3セント強下落して1ガロンあたり5.60ドルとなった。
ウォール街の株価下落と米国債利回りの動向
中東情勢の緊迫化とエネルギー価格の上昇は、株式市場にも即座に波及した。月曜日のニューヨーク市場では主要株価指数が軒並み下落し、S&P 500指数は0.4%安、ダウ工業株30種平均は348ポイント(0.7%)下落して9:51(東部時間)の時点で取引を推移した。ナスダック総合指数も0.3%下落した。エネルギー関連銘柄の一部(エクソンモービルが2.9%上昇、シェブロンが3%上昇など)は買い戻されたものの、市場全体ではほぼすべてのセクターが売り優勢となった。
個別銘柄では、ビデオゲーム小売りのゲームストップ(GameStop)が前年同期を上回る第2四半期の暫定利益見通しを発表したことを受け、4.2%上昇した。一方で、保険仲介会社USIインシュアランス・サービシズをプライベート・エクイティファンドのKKRから買収すると発表したアオン(Aon)の株価は、債務を含めて170億ドル規模に上る買収計画を嫌気して5.8%下落した。欧州およびアジアの市場はまちまちの動きとなった。

債券市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め政策に対する警戒感がくすぶっている。FRBのケビン・ウォーシュ長官によるジャクソンホール会合での講演などを背景に金利変動への意識が高まる中、連邦準備制度の動向に敏感に反応する2年物米国債の利回りは金曜夜から変わらず4.34%で推移した。これは2026年初頭の約3.50%から大幅に上昇した水準である。10年物国債の利回りは、金曜夜の4.73%から4.76%へと上昇した。
エネルギー価格の高騰はすでに高い水準にあるインフレをさらに刺激しており、家計の支出や消費者信頼感を圧迫している。インフレ率はFRBが目指す2%の目標を大きく上回る3%超で推移しており、ウォール街では、インフレ鎮静化のために年内少なくとも1回の利上げが実施されるとの見方が強まっている。
精製能力のひっ迫とベネズエラ産原油をめぐる動き
原油の採掘・輸送だけでなく、世界的な精製能力の不足も価格を押し上げる要因となっている。投資銀行のゴールドマン・サックスは、中東やロシアにおける製油所への攻撃が相次ぎ、すでにひっ迫していた世界の精製能力が一段と制限された結果、石油製品のマージンが新たな高水準に押し上げられていると分析ノートで指摘した。

また、米軍によるホルムズ海峡での攻撃に先立ち、アラブ首長国連邦(UAE)は月曜日に自国上空でイランのドローンを迎撃したと発表しており、中東地域の安全保障環境の変貌が懸念されている。トランプ大統領が8月19日にイランに対して政権崩壊を引き起こすと主張する「強烈な経済作戦」を展開すると威嚇したことを受け、過去2週間にわたって原油価格は乱高下を続けていた。
市場の先行きと今後の展望
ホルムズ海峡での偶発的な衝突が再びエネルギー市場の混乱を引き起こす中、米国の金融政策、中東の安全保障環境、そして経済指標の動向がどのように収束に向かうのか、市場関係者の視線は今週の経済指標と現地の情勢変化に注がれている。インフレ圧力の長期化と金利政策の不確実性が、今後の株式市場および実体経済の大きな重荷となっている。