イスラエル軍は、シリア北西部のイドリブ県にあるアブ・アル・ドゥフル空軍基地に対して空爆を実施した。シリアの国営放送やメディアによると、攻撃は基地の滑走路や保管施設を直撃し、インフラに損害を与えたものの、死者は出なかったとされる。
アブ・アル・ドゥフル空軍基地への空爆と米国による自制要請
この攻撃を受けて、米国は事態のさらなるエスカレーションを防ぐため、関係各国に対して自制と対話を呼びかけた。アメリカ国務省の担当者は、ワシントンがイスラエル、トルコ、シリアの間で複数のルートを通じて外交努力を行っていると述べ、「緊張緩和と対話がさらなる対立を防ぐ最善の方法である」との見解を示した。
米国およびトルコの反応と国際社会の懸念
在トルコ米国大使兼シリア・イラク担当大統領特使のトム・バラック氏は、ソーシャルメディアを通じてイスラエルによる空爆を批判した。バラック特使は、アブ・アル・ドゥフル空軍基地への空爆について「地域の安定を前進させない不必要なエスカレーションであり、深く懸念している」と表明した。また、アフマド・アル・シャラア率いるシリアの暫定政権は攻撃的な姿勢をとっておらず、イスラエルとの緊張緩和を望んでいると指摘した。
さらに、トルコ外務省もこの空爆を強く非難し、国際社会に対してイスラエルの攻撃的な行動を終わらせるためにより断固とした姿勢をとるよう求めた。
空爆の背景とイスラエルの安全保障上の懸念
アブ・アル・ドゥフル空軍基地はトルコ国境から約70キロメートル離れており、かつて軍用飛行場として使用されていたが、内戦中に長期間稼働していなかった。報道によると、アサド政権崩壊後はシリアの新軍による訓練センターとして活用される計画があり、トルコの軍事関係者も基地の再稼働に向けた動きの一環として現地を訪れていたとされる。

イスラエル側では、トルコの軍事プレゼンスが拡大し、防空システムやレーダーなどがシリアの基地に配備されることで、イスラエル空軍の作戦行動の自由が制限されることへの懸念が高まっている。イスラエルの報道では、今回の攻撃はシリアの再軍備やトルコによる同基地への先進兵器の配備を牽制する狙いがあったとされている。
シリア政府の立場と今後の展望
シリア外務省は、今回の空爆を主権と領土の一体性に対する「明白な侵害」であり、「不当な敵対行為」であると非難する声明を発表した。シリアとイスラエルの間では、ヨルダンにおいてモサド長官のロマン・ゴフマン氏とシリアのアサド・アル・シバニ外相が会談するなど、安全保障上の対話を再開し緊張を軽減するための接触も行われてきた。

しかし、相次ぐ軍事行動や非難の応酬が続く中、米国は中東地域の安定とシリアの主権維持、そしてイスラエルとトルコの間でのさらなる衝突回避に向けた外交的協議を継続している。