2023年7月にオーストラリア・レオンガタの自宅で提供したビーフウェリントン料理により、親族4人が猛毒のドクツルタケ(death cap mushrooms)で中毒死した事件で、3件の殺人罪と1件の殺人未遂罪で有罪判決を受けたエリン・パターソン受刑者が、判決を不服として控訴した。ビクトリア州控訴裁判所の3人の裁判官に対し、弁護団は複数の論拠を挙げ、有罪判決の取り消しと再審を求めている。
陪審員の隔離不備と審理の公平性
パターソン受刑者の弁護団は、公判中の手続きに重大な不備があったと主張している。弁護士のリチャード・エドニー氏は、陪審員が警察側の証人や検察チームのメンバーと同じホテルに隔離されていた事実を指摘し、これを「隔離措置の非常に深刻な違反」であると訴えた。
さらに、弁護団は検察側のナネット・ロジャース検察官による5日間にわたる反対尋問について、「不公平かつ威圧的」であったと主張している。これに対し、検察側のジェレミー・マックウィリアムズ検察官は、尋問は徹底的かつ公正であり、確立された原則に基づいて行われたと反論した。また、裁判を担当したクリストファー・ベイル裁判官が、パターソンのFacebook上の「友人」に関する証拠を採用したことが「不当な偏見」を招いたとも主張されている。
検察側の「動機の変遷」と証拠の妥当性
弁護側のヴェロニカ・ドラゴ弁護士は、検察側の立証プロセスにも問題があると指摘した。検察は冒頭陳述で「毒殺の動機を示す証拠はない」としていたにもかかわらず、結審時にはパターソン受刑者が夫の家族に対して抱いていた反感や敵意を動機として示唆した。ドラゴ弁護士は、審理の開始時と終了時で主張が一貫していないことは「正義の誤り(miscarriage of justice)」であると主張した。

また、パターソン受刑者が毒キノコの自生場所を検索した可能性を示唆する証拠についても、弁護団は異議を唱えている。裁判では、パターソン受刑者の携帯電話がロックおよびアウトリムの町周辺の基地局に接続されていたという通信専門家の証拠が提示された。しかし弁護側は、これは端末がそのエリアにあった可能性を示すに過ぎず、オンライン上の情報を閲覧したという証拠にはならないと強調した。
検察側は刑期の延長を要求
一方、検察側はパターソン受刑者に対する一審の量刑が「明らかに不十分である」として、量刑の引き上げを求めている。パターソン受刑者は昨年9月、終身刑の判決を受け、仮釈放の申請まで少なくとも33年の服役が義務付けられている。

検察側のブレンダン・キッサネ検察官は、パターソン受刑者が犯した罪の性質を「冷酷な行為(pitiless behavior)」と非難した。検察側は、パターソン受刑者に対して仮釈放の可能性を一切認めない終身刑、あるいは33年よりも長い非仮釈放期間の設定を求めている。
事件の背景と今後の見通し
この事件は、パターソン受刑者が調理した昼食会で、義理の両親であるドン・パターソン氏とゲイル・パターソン氏、およびゲイル氏の姉妹であるヘザー・ウィルキンソン氏が死亡し、ヘザー氏の夫であるイアン・ウィルキンソン氏が重体となったことで発覚した。パターソン受刑者は公判を通じて、中毒死は事故であったと主張している。
なお、公判前にはパターソン受刑者が元夫のサイモン・パターソン氏を毒殺しようとした疑いも持たれていたが、これらの容疑については2025年4月の公判開始前に検察側が取り下げている。
控訴審は2日間の日程で行われており、パターソン受刑者は刑務所からビデオリンクを通じて審理を傍聴した。控訴が認められた場合、有罪判決が破棄され、再審が命じられる可能性がある。
[https://apnews.com/article/poisonous-mushrooms-australia-erin-patterson-death-cap-bee29f74d7af491cda9c99b58b8f49e3] [https://www.cbsnews.com/news/australia-erin-patterson-mushroom-murder-appeal/] [https://www.nbcnews.com/world/asia/erin-patterson-appeals-3-murder-convictions-australia-mushrooms-rcna593281]