オハイオ州ミドルタウン出身であるJD・バンス副大統領は、2026年8月21日に故郷へ戻り、地元にある製鉄所 クリーブランド・クリフス・ミドルタウン・ワークス にて昼食時の演説を行う予定であると、メディアが報じている。
バンス副大統領の故郷凱旋とミドルタウン・ワークスでの演説
今回の訪問には、クリス・ライト米エネルギー長官も同行する計画だ。政権の掲げる「米国第一主義」の経済アジェンダに目を向け、国内の製造業における現況や方針を訴える場となる。副大統領にとって同プラントは個人的な縁が深く、回顧録『ヒルビリー・エレジー』でも触れられているように、祖父のジェームズ・「ジム」・バンス氏がかつてアームコ・スチール時代を含めておよそ40年間勤務した場所である。
JD・バンス副大統領は、あの製鉄所はかつてアームコ・スチールと呼ばれていたが、現在はクリーブランド・クリフス・ミドルタウン・ワークスとなっており、ここは実際に自身の祖父が40年近く働いていた場所であると述べたうえで、トランプ政権の経済政策がなければこうしたプラントは存在しなかっただろうと語った。
副大統領の地元帰還に合わせて、周辺地域では大統領の移動に伴う厳戒態勢が敷かれ、交通規制や検問所が設置されることが明らかになっている。
エネルギー計画の方向転換と石炭回帰の背景
かつてバイデン前政権下では、同製鉄所を環境配慮型の近代的な施設へと生まれ変わらせるための大規模な計画が進められていた。インフレ抑制法などを通じて、環境負荷の低いクリーン水素や天然ガスを利用して高炉を転換し、温室効果ガスの大幅削減と雇用創出を狙うものであった。

しかし、政権交代や連邦準備制度の金利政策、水素燃料市場のインフラ未発達といった要因が重なり、計画は大きく狂った。企業側は方針の転換を余儀なくされ、政権の動きや市場の現実を理由に水素プロジェクトの断念を明らかにした。
関税政策と地元住民が抱える健康・生活の懸念
環境面の近代化計画が後退する一方で、現在の経営基盤を支えている大きな柱の一つが輸入鉄肉に対する関税措置である。政権側は鉄鋼業界の立て直しを強調しており、直近では輸入鋼材にかかる関税率が従来の25パーセントから引き上げられている。

一方で、プラントの近隣に暮らす住民の間からは、従来の操業形態が継続されることへの複雑な声が上がっている。プラントのすぐ近くで長年生活を共にしてきた住民からは、日常的な騒音や粉じん被害、健康面への不安を訴える声が漏れており、クリーン化への期待が削がれたことに対する失望感も示されている。
ミドルタウンの製鉄所をめぐる動きは、巨額の連邦補助金による脱炭素化の推進から、関税保護と化石燃料の活用を重視する現在の経済アジェンダへと、米国の製造業政策が大きく舵を切った現実を如実に物語っている。