アメリカのドナルド・トランプ政権による厳格な移民取り締まりが進む中、同国から退去強制されたメキシコ国籍の人々がグアテマラやホンジュラスを経由してメキシコへ送られていることが、公式データや関係機関の発表で明らかになった。こうした強制送還の新たな実態が、移民たちの生活や地域社会に波紋を広げている。
グアテマラとホンジュラスを経由する第三国送還の拡大
グアテマラのベルナルド・アレバロ大統領は水曜夜の記者会見で、今年に入って米国から強制送還された2,284人のメキシコ人が「中継地」として同国に到着していると確認した。これらはメキシコ政府との「取り決め」に基づくものであり、難民や亡命のステータスはない状態だという。
アレバロ大統領は「彼らはグアテマラ人の帰還者を乗せた飛行機で到着しており、我々が行っているのは、メキシコの移民当局と調整し、到着後24時間以内にメキシコ領土へ送還できるようにすることだ」と説明し、費用はメキシコ政府または場合によっては米国の資金でカバーされていると述べた。
メキシコ南部へのバス輸送と中米ルートの背景
メキシコの国立移民院(INM)は、AP通信への簡潔なメッセージの中で、米国政府によってメキシコ人が主に4月以降グアテマラやホンジュラスに強制送還され、その後バスでメキシコ南部へ輸送されていることを確認した。同機関は「理由は、米国が再び自国領土内に戻るのを防ぎたいためである」と述べている。
ホンジュラス当局はコメントの要請に応じなかったが、AP通信が取得した同国の公式文書によると、米国から強制送還された82人のメキシコ人が8月13日と15日の2便でホンジュラスのサン・ペドロ・スーラに到着した。さらに、木曜日には35人が到着した。
非政府組織(NGO)のヒューマン・ライツ・ファースト(Human Rights First)とリフュージーズ・インターナショナル(Refugees International)が運営するウェブサイト「サード・カントリー・デポルテーション・ウォッチ(Third Country Deportation Watch)」によると、5月から7月中旬にかけてさらに165人のメキシコ人がホンジュラスに強制送還された。
メキシコ外務省の反発と米国土安全保障省の姿勢
これに対し、メキシコの外務省は木曜日に声明を発表し、「The Mexican government has expressed its opposition to this practice to U.S. authorities and has reiterated that every Mexican citizen has the right to enter the country」と述べ、一連の対応について強い反発を示している。また、メキシコ国民の安全な帰国を確保するため、関係各国と調整を行っていると付け加えた。
移民行政を監督する米国国土安全保障省(DHS)は、メキシコ人が自国ではなく中央アメリカに送られた理由や詳細についての質問に対し、電子メールによる声明で、トランプ大統領が約束した通り、政権は「史上最大の退去強制作戦を実行するためにあらゆる合法的なオプションを活用している」と述べた。
「リトル・ロサンゼルス」に広がる帰還者の現実と過酷な道のり
トランプ政権が1月に2度目の任期を開始して以来、これまでに約14万5,500人のメキシコ国民が強制送還されている。首都メキシコシティのダウンタウンにあるタバカララ地区は、広い並木道や quaint なカフェ、英語とスペイン語が飛び交う街並みから「リトル・ロサンゼルス」と呼ばれている。何十年も米国で過ごした後に強制送還された多くの人々にとって、故郷でありながら外国のように感じられるメキシコの中でより馴染みやすい避難所となっている。
今年6月、ロサンゼルスで仕事場に向かう途中に米移民・関税執行局(ICE)の職員に止められ、手錠をかけられて拘留施設に入れられたクリストファー・ギル・オルティスさんもその一人だ。30年以上前に子供の頃に国を離れて以来の帰国となったオルティスさんは、妻と2人の幼い子供を米国に残してメキシコへ送還された。トゥルムに放り出され、カンクンへ向かったもののホテルの部屋からすべての持ち物を盗まれ、最終的に家族のいるメキシコシティにたどり着いた。
支援団体「ニュー・コミエンゾス」による帰還者支援
出生証明書やIDの取得、仕事探しなど、多くの困難に直面していたオルティスさんは、妹から「ニュー・コミエンゾス(New Comienzos / 新しい始まり)」という組織のTikTok投稿を送りつけられた。「リトル・ロサンゼルス」に拠点を置くこの組織は、帰還者の社会復帰を支援するために設立されたものだった。
投稿を見たオルティスさんはリトル・ロサンゼルスを訪れ、「ヤシの木を見ていると、まるでLAにいるような気分になる」と語り、「私と同じような状況を経験している人はたくさんおり、今後さらに増えると確信している」と述べた。
同団体を立ち上げたイスラエル・コンチャ氏自身も、米国に30年間暮らした末に2014年に強制送還された経験を持つ。コンチャ氏は、帰国直後に直面した過酷な現実から立ち直り、法的支援や英語クラス、メンター制度などを通じて新たに到着した人々を支えている。トランプ政権の第2次政権発足以降、すでに14万5,500人を超えるメキシコ国籍者が送還されており、現地の支援団体はさらなる大規模な送還の波に備えている。