米海軍が真珠湾攻撃の英雄ドーリー・ミラーにちなんで命名予定だった最新鋭空母を、ドナルド・トランプ大統領の名前に変更する計画を進めていると複数のメディアが報じ、物議を醸している。計画が実現すれば、現職大統領の名前を冠する初めての空母となる。
建造中のフォード級空母「USS Doris Miller」の名称変更をめぐる動き
米海軍で現在建造が進められているフォード級の最新鋭空母について、艦名をドナルド・トランプ大統領の名前に変更する方向で内部協議が行われていると、CNNが3人の情報筋の話として報じた。さらにNBC Newsも、この名称変更に関する協議が数か月にわたって続けられていると報じている。
もともとこの艦は、第二次世界大戦中の真珠湾攻撃で英雄的な活躍を見せた従軍水兵ドーリー・ミラー(Doris Miller)にちなみ、「USS Doris Miller」と命名される予定だった。この名称決定と発表は、トランプ大統領の第1次政権下で行われたものである。USS Doris Millerは、黒人および下士官の名前が冠される初めての航空母艦となる予定だった。
しかし、内部の議論に詳しい情報筋によれば、海軍は現在この空母の改名を検討しており、その中でトランプ大統領の名前を讃える案について話し合われてきたという。CNNによると、海軍は内部の会話において、この建造中の空母を「USS Doris Miller」と呼ぶことをすでにやめている。また、新造空母のカタパルトシステムを電磁式から蒸気式に戻す最近のホワイトボードのプロclamation(布告)においても、当該艦は船体分類番号である「CVN-81」で言及されていた。
CNNによると、海軍はミラーの名前を別の艦(別の航空母艦になるのか小型艦になるのかは不明)に付け替える方向で検討を進めているという。また、米当局者2人は、ミラーが現在名誉勲章(Medal of Honor)の受章候補として検討されているとも述べているが、ホワイトハウスによる承認はまだ下りていない。駆逐艦は名誉勲章受章者の名前が付けられることが多いが、航空母艦は通常、大統領の名前が付けられる。
艦名の命名権は海軍長官(Navy secretary)にあるものの、国防長官(defense secretaries)も航空母艦の命名決定に深く関与することが多く、最終的な決定はピート・ヘグセス国防長官(Defense Secretary Pete Hegseth)とフン・カオ代行海軍長官(acting Navy Secretary Hung Cao)によって下されることになる。なお、この建造中のフォード級の4番艦は、トランプ氏が命じた電磁式ではなく蒸気式のカタパルト発進システムを採用する最初の艦の一つになる可能性がある。
第二次世界大戦の英雄ドーリー・ミラーと海軍クロス
ドーリー・ミラーは、第二次世界大戦中の1941年、ハワイの真珠湾攻撃において、使用兵器の正式な訓練を受けていなかったにもかかわらず、対空銃を操作して日本軍の爆撃機4機から6機を撃墜したとされる海軍のコック(メス・アテンダント、Mess Attendant First Class)である。彼は攻撃中、敵の銃撃や爆撃、激しい火災の中、負傷して致命傷を負った艦長をより安全な場所へ移動させるのを助け、その後、命令を受けるまで日本軍の攻撃機に向けて機関銃を操作し続けた。
ミラーの受章した海軍クロス(Navy Cross)の公式引用には、次のように記されている:
戦艦USSウエスト・バージニアの艦橋で艦長の傍らにいた際、敵の銃爆撃と激しい火炎にもかかわらず、メス・アテンダント一等兵ドーリー・ミラーは、致命傷を負った艦長をより安全な場所へ移動させるのを助け、その後、艦橋を離れるよう命じられるまで、敵の日本軍攻撃機に向けて機関銃を操作し続けたと、公式引用は伝えている。
(戦艦USSウエスト・バージニアの艦橋で艦長の傍らにいた際、敵の銃爆撃と激しい火炎にもかかわらず、メス・アテンダント一等兵ドーリー・ミラーは、致命傷を負った艦長をより安全な場所へ移動させるのを助け、その後、艦橋を離れるよう命じられるまで、敵の日本軍攻撃機に向けて機関銃を操作し続けた。)
ミラーは、黒人サービスメンバーとして初めて海軍クロスを受章した。式典では、チェスター・W・ニミッツ・アドミラル(Admiral Chester W. Nimitz)が、1942年5月27日にハワイ・真珠湾のUSSエンタープライズ艦上で彼に勲章を授与している。その後、ミラーは1943年、リスコム・ベイ(Liscome Bay)が日本の魚雷攻撃を受け乗組員の3分の2が失われた際、海上で命を落とした。俳優のキューバ・グッディング・ジュニア(Cuba Gooding Jr)は、2001年の映画『パール・ハーバー』で彼を演じた。彼の家族は長年、彼の受章を名誉勲章(Medal of Honor)に格上げするよう求めてきた。
フォード級空母の計画と過去の艦名
米海軍は、老朽化したニミッツ級原子力空母を置き換えるため、少なくとも10隻のジェラルド・R・フォード級(Gerald R. Ford-class)艦を艦隊に導入する計画を立てている。ネームシップであるジェラルド・R・フォード大統領にちなんで名付けられた艦はすでに就役しており、現在海上公試を行っているUSSジョン・F・ケネディ(USS John F. Kennedy)が来年それに続く予定となっている。
USSドーリー・ミラーのほか、同級の次の数隻は、過去に2隻の空母で使用された名前である「USSエンタープライズ(USS Enterprise)」に続き、「USSウィリアム・J・クリントン(USS William J. Clinton)」および「USSジョージ・W・ブッシュ(USS George W. Bush)」と命名される予定となっている。現職大統領の名前が空母に付けられた例は、米海軍の歴史上これまでに存在しない。
政治的批判と背景
現職大統領の名前を空母に冠する計画の浮上や、ドーリー・ミラーの名が変更される可能性が報じられたことを受け、各所から批判の声が上がっている。
アリゾナ州選出の民主党連邦上院議員であり、元海軍士官でもあるマーク・ケリー(Mark Kelly)は、自身のX(旧Twitter)に次のように書き込んで批判した:
真珠湾におけるドーリー・ミラーの勇敢さは伝説的であり、彼が海軍クロスを受章する結果となったとマーク・ケリー上院議員は指摘し、この航空母艦の名前は変更されるべきではなく、ましてや、ドーリー・ミラーのように最高の犠牲を払った軍人を蔑んできたドナルド・トランプのために変更するなど論外だと述べている。
(真珠湾におけるドーリー・ミラーの勇敢さは伝説的であり、彼が海軍クロスを受章する結果となった。この航空母艦の名前は変更されるべきではない。ましてや、ドーリー・ミラーのように最高の犠牲を払った軍人を蔑んできたドナルド・トランプのために変更するなど論外だ。)
海軍はこの潜在的な名称変更に関するコメントの求めに対し、即座には応じなかった。また、この艦名の変更をめぐる報道は、トランプの名前がワシントンのジョン・F・ケネディ舞台芸術センター(John F. Kennedy Center for the Performing Arts)の施設名称やファサード(建物正面)に使用された別の論争とも背景を同じくしている。昨年、トランプが選任した取締役会が同センターを「The Donald J. Trump and John F. Kennedy Center」に改称しファサードにトランプの名前を掲げた件では、批判や訴訟が引き起こされ、連邦判事が原告側に有利な裁定を下してボードに対してトランプの名前の撤去を命じる事態となった。トランプの名前は撤去されたものの、同センターの取締役会は今月、会場に「Restored and Renovated by President Donald J. Trump」(ドナルド・トランプ大統領により修復および改修)という碑文を追加することを投票で可決している。さらに昨年、トランプは新たな船団の建造計画についても発表を行っていた。