id Softwareのリード・サービス・プログラマーであるクリス・ヘイズ氏は、親会社であるマイクロソフトによる大規模な人員削減を受け、以前のようなAAAタイトルの制作は「不可能」であると主張しました。ヘイズ氏は、スタッフが半分になった状態で2016年の『Doom』のようなゲームを制作することの困難さを指摘し、必要な部門や専門分野が完全に消滅している現状を批判しています。
「半分になったid」とスタジオの現状
7月に実施された人員削減により、id Softwareでは136名のスタッフが削減されました。これは、新CEOのアシャ・シャルマ氏が「Xbox史上最も重要な再編」と呼んだ、Xboxチーム全体に及ぶ「リセット」の一環です。このリセットにより、マイクロソフト傘下の開発スタジオ全体で3,200人の職が失われ、そのうち1,600人が即時解雇となりました。
id Softwareは7月10日の声明で、再編後も「2016年の『Doom』制作時とほぼ同じ規模」であり、既知のゲームや技術を構築するために必要な人員を確保していると主張しました。しかし、2010年からチームに在籍しているヘイズ氏は、この見解に反論しています。ヘイズ氏は、マイクロソフトが「ほぼ同じ」という表現を使うのは実際には人数が少ないためであると述べ、「我々は同じidではない。半分になった同じidだ」と語りました。
開発体制への影響と専門スキルの喪失
ヘイズ氏は、AAAスタジオの50%を削減して理にかなう方法などあり得ないと主張しています。具体的に、以下のような専門的な役割を担う人員が失われたことで、開発への影響を懸念しています。

- スカイボックス・アーティストの不在による、スカイボックス制作への影響
- インフラストラクチャ・チームの解雇による、インフラ維持への影響
- エンジン・チームの大量解雇による、ゲームエンジンのメンテナンスへの影響
ヘイズ氏は、チーム間の結束こそが成功の要因であったとし、制作プロセスを考慮せずに人員を削減したことは、マイクロソフト側が「アートを理解していない」証拠であると批判しました。また、現在のスタジオ規模では、シングルプレイヤーのXbox 360時代のゲームと同程度の規模のものしか作れないのではないかと懸念を示しています。
マイクロソフトの経営判断とGame Passへの疑問
ヘイズ氏は、マイクロソフトの経営陣がゲームビジネスのモデルを理解していないと主張しています。特にGame Passの運用について、ベセスダ傘下での販売不振が報告される一方で、Game Passというモデルを採用しながら「販売数」で評価することに矛盾があるとの見解を示しました。

また、スタジオ管理職が提示している安心させるような言葉について、それはマイクロソフトから提供された「トークポイント(想定問答)」に過ぎないと指摘しています。ヘイズ氏によれば、これらの説明は、残っている開発者が「idに未来はない」と考えて離職することを防ぎ、不安を最小限に抑えるためのものであるとしています。
業界における信頼の失墜
今回の人員削減について、ヘイズ氏は「非人道的で意欲を削ぐものであり、士気はかつてないほど低下している」と述べました。かつては「定年まで雇う」という文化があったが、もう誰もそれを信じていないと語っています。
さらに、マイクロソフトが業界内で多くの「橋を焼いた(関係を破壊した)」と主張し、今後の採用活動への悪影響を懸念しています。スタジオ管理職がどれほど優れた人物であっても、親会社であるマイクロソフトが決定権を握っている限り、外部からの信頼を得ることは難しいとの見方を示しました。