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2026-01-14 03:40:00
テック企業はかつて、情報の取得先にユーザーを誘導していた。ウェブサイト側はリファラル(送客)という見返りがあることを前提にデータを無料で提供し、サイトに誘導されてきたユーザーに対する広告表示やサブスクリプション契約の獲得を通じて、提供したデータに見合う収益を得てきた。
ウェブの世界ではそうした取引関係で結ばれた大きな図式が成立していたが、新たな生成AIの世界ではそれが崩壊しつつある。
AI回答エンジンやAIチャットボットはユーザーに直接クエリに対する回答を提示するため、その生成と検証に際して参照されたウェブサイトにまでユーザーが遡及して訪問する可能性は低くなっている。
世界のインターネットトラフィックの約20%をプロキシ(=アクセスを代理や仲介)するクラウドフレアは、大手テック企業のクローラーボットによるHTTPリクエストと、それらの企業(の運営するプラットフォーム)からデータ取得先のウェブサイトへのリファラルトラフィックを2025年から計測している。
クローリングトラフィックとリファラルトラフィックの比率は、テック企業がウェブからどれだけのものを得て、どれだけのものを返しているかを示す有用な指標と言える。
例えば、あるテック企業について、クローリング対リファラルの比率が100対1だとすれば、その企業はウェブサイトを100件クロールするたびにユーザーを1回送客していることを意味する。
これはAI時代におけるテック企業の倫理性を測る一つの尺度になり得ると筆者は考えるが、どうだろうか。判断は読者に委ねたい。
下の【図表1】は今年1月1〜7日の1週間に計測されたクラウドフレアのデータだ。

見ての通り、アンスロピック(Anthropic)は6万5000対1と際立っている。ウェブサイトへの送客をはるかに上回る量のデータをウェブサイトから収集していると言える。
クラウドフレアのデータによれば、アンスロピックのクローリングトラフィック比率は2025年9月の最初の1週間と比較しても拡大している。
オープン(Open)AIもアンスロピックとの比較では目立たないものの、比率は1400対1と、ウェブサイトから収集しているデータなりバリューなりの方が圧倒的に大きい。アンスロピック同様にオープンAIもクローリングトラフィックの比率が拡大傾向にある。
2024年9月中旬のBusiness Insider記事は、まさにこうしたクローラーボットによるトラフィックの増大が引き起こす問題を指摘したものだ。
上記の記事でダリウス・ラフィヤン記者はアンスロピックやオープンAIのクローラーボットによる大量のトラフィックがウェブサイトの運営者や所有者にとって大きな負担となっている実態を明らかにした。
記事に登場したウェブ開発者は、顧客企業のサイトリニューアル作業後にアンスロピックのクローラーが殺到して「大量の無意味なトラフィック」を発生させたことで、客先の(従量課金制の)クラウド料金が「前月比で倍増した」とラフィヤン記者に語っている。
言ってみれば、AI開発を手がけるテック企業はウェブからより多くを得てより少なく返すにとどまらず、一部のウェブサイト運営・所有者に高額な請求書まで押しつけていることになる。
筆者はアンスロピックに対し、これほど多くのクローラーボットを放ってデータを収集しておきながら、なぜこれほどウェブサイト側への送客による還元が少ないのかをメール経由で質問したが、返答は得られなかった。
実は、同社に同じ質問を送ったのは9月に続いて2回目だ。前回は、クラウドフレアが算出したクローリングとリファラルのトラフィック比率をアンスロピック側では確認できず、算出の手法に何かしら「問題」があるのではないかとの回答があった。
アンスロピックからの回答メールには、会話型AI『クロード(Claude)』にウェブ検索機能を追加した2025年3月以降、ウェブサイトへのリファラルトラフィックが急増しているとの追加説明も記載されていた。
オープンAIにもコメントを求めたが得られなかった。
また、先の【図表1】でグーグル(Google)の比率が5対1と極端に低いのは、同社が提供する従来型の検索エンジンではまだ検索結果にウェブサイトへのリンクが明確に表示されるからだろう。
とは言え、グーグル検索においても、検索結果の最初に「AIによる概要」が表示される(2024年8月以降)など、AIチャットボット的な回答手法が導入されており、その影響はこれから可視化されていくものと思われる。
グーグルは近頃、ウェブへの送客を継続しており、エコシステムの健全性を重視する姿勢に変化がないことを強調している。
なお、一つ補足しておくと、クラウドフレアが算出したクローリングとリファラルの比率はウェブのみを計測対象としており、(iOSやAndroidなどの)ネイティブアプリ経由のトラフィックは含まれていない。
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