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2025-12-26 22:20:00
佐藤さん:思考の原型ということです。例えばレシピ本をたくさん読んだとしましょう。1つ1つのメニューの細かいレシピは忘れてしまうかもしれません。でも、レストランに行って料理を食べたとき、だいたいどんなレシピで作られているかアタリをつけることが出来るようになるんです。
シマオ:なるほど。細かい記憶はなくなっても、無意識の中にエッセンスが残っているということですね!
佐藤さん:そう思います。たえさんは読書が好きなわけで、とくに思想哲学、地理歴史、社会情勢や経済などの本を読んでいる。無意識の中の蓄積によって、何か新たな社会問題や出来事が起きたとき、そこにどんな問題があり、そのポイントがどこにあるかが知らずに頭の中で整理されているはずです。
シマオ:それが出来ているならば、読書の効用は大いにあるということですね! たえさんご自身も「間違いなく人生のプラスになっている」と書いています。下手に細かな知識や情報を覚えて、なにかとひけらかして悦に入っている人になるよりずっといいですね。
佐藤さん:なので、今のままの読書でいいということなんです。
理解し、関連付けできるほど記憶に残る
佐藤さん:ただ、一般論として、覚えられないということと、そもそも理解できていないということは違うということを認識しておくべきでしょう。
シマオ:耳が痛い話ですね……。そもそも理解できないということは、メモリーどころかHDDにも振り分けられていないってことですね?
佐藤さん:そういうことです。その場合にはもっと簡単な本や入門書のようなものから読んで、基礎的な力を付けなければいけません。
シマオ:本を読む順番があると、前もお話しされていましたね。
佐藤さん:はい、理解できて初めて記憶に結びつく。理解と記憶はセットになっているのです。ちなみにたえさんの場合ですが、「通史」を勉強されるとおそらく記憶に残る力がよりアップすると思います。
シマオ:ツ、ツウシというのは……?
佐藤さん:哲学なら個別の哲学者やテーマで読書をするのではなく、歴史的にすべて通して学ぶのです。例えば哲学であれば中央公論社から出ている『哲学の歴史』(全12巻)。これは西洋哲学を勉強する人にとっては最適の「通史」でしょう。
シマオ:読むのは大変そうですが、一度読んだら頭の中がスッキリと整理されそうな気がしますね。
佐藤さん:古本で全部そろえると7万円くらい掛かりますが、それでも損はない買い物だと思います。あとは歴史であれば集英社の『日本の歴史』もお勧めですし、岩波の『歴史講座』シリーズの日本歴史と世界歴史。こちらは古本で1万円くらいで全巻揃えられると思いますから、大変にお買い得です。
シマオ:全体を総合的に学ぶことで、いま読んでいる本がどういう立ち位置でどういう立場で書かれているかが分かるわけですね?
佐藤さん:そうですね。その本の内容を俯瞰して見て、他との関係性が分かれば理解は進みます。また、いろんなものと関連付けて理解できるので、それだけ記憶が強固になるわけです。家や部屋に全集を置く場所がないということなら、全部PDF化してパソコンやスマホなどで見れるようにするという手もあります。いわゆる「自炊」というやつですね。
記憶術も覚えておいて損はない
シマオ:ちなみに、巷にある記憶術の本などは参考になるでしょうか?
佐藤さん:もちろんテクニカルな部分では参考になると思います。例えば水王舎から出ている出口汪さんの『「最強!」の記憶術』や『KGBスパイ式記憶術』などは読んでおけば、記憶力を伸ばすきっかけにはなると思います。
シマオ:それこそ佐藤さんもインテリジェンスの第一線で活躍されていたわけですから、独自の記憶術があったのでは!?
佐藤さん:テクニックとしてはそんなに目新しいことはありませんよ。それこそKGBの記憶術には何回も復唱して覚えるというのがあります。これはメモなどが自由に取ることが出来ない拘置所生活で大いに役に立ちました。
シマオ:声に出して本を読むだけでも違うと言いますもんね。
佐藤さん:目で文字を追い、声に出すことで視覚を使い、声帯という筋肉を使うと同時に、耳でそれを聞くので聴覚も使う。複合的に身体機能を使うことで記憶はより定着しやすいのです。
シマオ:あ、あと、確か重要な本は3回読むとお話をされていました!
佐藤さん:はい。まずはざっと全体に目を通し、その本が熟読する本に値するとなったら、今度は重要な箇所をノートに書き出しながらじっくりと読む。それが終わったら、最後にノートを見つつもう一度読む。これでほぼ記憶にしっかりと定着します。
シマオ:うわぁ、僕なんか1冊の本をそこまで熟読する機会すらないかも……。
佐藤さん:私の場合はそれこそ本業ですから、大事な本に関しては徹底的に熟読します。ただ、皆さんの場合は本の中で気になった言葉、キーワードをノートに書き出しながら読むだけでも十分だと思います。
シマオ:それは単語レベルでいいってことでしょうか?
佐藤さん:そうです。それで後でノートを見返してその言葉をしっかりと説明できるかどうか? うまくできなければ再読して説明できるようにする。それを繰り返していけば驚くほど理解力と記憶力が高まると思います。
ただ、一番の記憶の特効薬はやはり「必要性」です。理解した上で忘れてしまうことに関しては、「必要性がなかった」とスルーされていいと思います。
シマオ:逆に言えば、読書は必要な時にすればいいってことなんですね! たえさん、いかがだったでしょうか? これからも忘れることを恐れず、いままで通り好きな読書を続けられてくださいね!
「佐藤優のお悩み哲学相談」、そろそろお別れのお時間です。引き続き読者の皆さんからのお悩みを募集していますので、こちらのページからどしどしお寄せください! 私生活のお悩み、仕事のお悩み、何でも構いません。それではまた!
※この記事は2025年5月28日初出です
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