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2025-05-19 02:50:00
三井住友カードとソフトバンクは5月15日、デジタル分野における包括的な業務提携について基本合意書を締結したと発表した。
具体的には三井住友カードの「Olive」とソフトバンクの系列決済ブランド「PayPay」が決済手法やポイントプログラムにおいて相互乗り入れを行うほか、ソフトバンクのAI基盤を活用したデータビジネス、そして両グループの顧客基盤を組み合わせての送客などを想定している。
事前に報道されたリーク情報を含め、報道各社の視点は「QRコード決済首位とクレジットカード首位の企業が『大連立』して日本最大級のポイント経済圏を創出し、みずほフィナンシャルグループが出資する楽天経済圏に対抗」といった形だ。
メガバンクとIT・通信大手らが提携によってそれぞれ異なる経済圏を作り、金融分野での競争が激化するといった部分にあるようだ。
一方で、2つの勢力が組み合わさることで必ずしも「1+1=2」のような総和の式が成り立ったり、あるいは相乗効果でさらなる拡大を実現するわけでもないというのが、この世界の競争における興味深い点でもあり、両社の提携について改めて分析したい。
現状でPayPayにとっての提携メリットはない

今回の提携で最も重要なのはこの部分だ。例えば、決済の取扱高であるGMV(Gross Merchandise Value)をPayPayと三井住友カードで比較した場合、PayPayが15兆円なのに対し、三井住友カードは39兆円と、両社のユーザー数は三井住友カードの方が少ないにもかかわらず2.6倍の差がある。
日常使いがメインのサービスと、それを含んであらゆる場面での支払いに用いられる決済手段で単価の差異が大きいと思われる。
また、加盟店数はPayPayが1000万程度なのに対し、三井住友カードが利用可能なVisa加盟店は1億ある。この差は後者がVisaの世界中の加盟店数を含んだ数字という点に由来するが、一方でPayPayは国内加盟店のみでの数字であり、しかもPayPayのコード決済のみが利用可能なQRコードを店内に提示している店舗を多分に含んでいる。
海外利用の部分を除けば、PayPayはすでに国内で独自の決済経済圏を確立しており、今回の提携は三井住友カードがこの経済圏にOliveで相乗りできるようになることを意味する。

PayPayは2018年のビジネス開始から一貫して独自の加盟店開拓を行ってきており、これまで手数料や各種コストなどを理由に電子決済サービスを導入してこなかった中小小売店を巻き込む形で日本のキャッシュレス決済の底上げに貢献してきた。
決済手数料を業界他社より引き下げて競争力を高める一方で、営利企業としての利潤を追求するためにさまざまな施策を行っている。
グループ再編で「PayPay銀行」や「PayPayカード」「PayPay証券」といったPayPayブランドを冠する企業群を傘下とし、PayPayアプリからの導線を用意して各サービスへの誘導を行ったり、カード利用や銀行への出金手数料の優遇で同業他社との差別化を図ったりと、グループ全体で「PayPay効果」を享受できる体制を固めてきた。
そして、PayPayにとって決済手数料のみでの黒字化する上でネックだったのは、PayPayカードを除く他社クレジットカードを通したPayPay決済の扱いをどうするかだ。
クレジットカードをPayPayの決済手段として利用すると、現金を残高としてチャージした場合と比較して、1回の決済ごとにクレジットカード利用の手数料が発生し、PayPayが加盟店から徴収している1.9%などの手数料を超過して「逆ざや」が生じてしまう。
PayPayでは過去に「他社クレジットカードの利用を終了する」との通知を出したものの、これをいったん反故にし、結論を先延ばししている。
理由としてはPayPayカードのみの優遇に対する世間の批判のほか、大部分のPayPayでのクレジットカード利用者がPayPayカードを利用する一方で、残り少数の他社クレジットカード利用者の購入金額がそれなりに多く、単純にユーザー数を理由に切り捨てられなかったという側面がある。

だが今回、三井住友カードとの提携が発表されたことで、PayPay銀行の特典だった「出金手数料無料」が三井住友銀行の口座にも適用されることになり、同時にPayPayカードの特典でもあった「PayPayでの決済手段として利用できる」というメリットも三井住友カードに開放されることになった。
2025年夏以降に前述2つのカードを除く他社クレジットカードの扱いは新方式に移行すると予告されているが、現時点でPayPayからは具体的にどのような方式になるかの発表はない。
おそらくは別途手数料のようなものを設ける、あるいは利用金額や回数に制限がつくものと思われる。このような仕組みを導入しないと、PayPayカードやOliveの優位性を示せないからだ。

まとめると、三井住友カードにとってはPayPayが築いてきた独自の経済圏をそのまま利用できるメリットがある一方で、PayPayは個人間送金やポイント還元を経てユーザーアカウントに貯まった残高やポイントを、より世界に向けて加盟店網の広い三井住友カードのVisaネットワークで使われる可能性がある。

ある意味で、これまで閉じた経済圏で活動を続けてきたPayPayが、今回の提携により他社ブランド(Visa)のオープンループの世界へと開放される形となり、PayPayにとって中短期でのメリットがないにもかかわらず、従来とは異なる(PayPayブランドでの)グループ戦略を求められるようになったと言える。
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