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2025-05-08 12:00:00
連載
一生に一度は見たい東京美術案内
根津美術館には日本庭園と4つの茶室がある。都心にある美術館で、これほど本格的な庭園を持っているところはない。広さもあり、また手入れがされている。館の周りは南青山だ。オフィスもあるけれど、閑静な住宅地である。
高低差がある日本庭園で、館内の作品を見た後に庭をめぐる人は少なくない。庭園は池を中心とする「池泉回遊式庭園」で、広さは1万7000平方メートル。東京ドームのグラウンド面積(1万3000平方メートル)よりも広い。園路は上ったり、下りたりして歩くようになっている。植栽や景色を眺めながら足早に歩くと30分くらいで、時々足を止めて自然を楽しみながら回ると、1時間はあっという間だ。
歩いていると、時折、高層ビルが視界に入る。しかし、木々が発する匂いを感じていると、都心の南青山にいることを忘れさせてくれる。緑に包まれ、苔むした石の質感、土の匂いを感じ取ることができる。「都会のオアシス」とは今や古くさい表現になっているけれど、その言葉通りの場所なのである。
庭園の外周と主要な通路は舗装されている。そのため車椅子での散策も可能だ。だが、坂を上ったり下りたりするため介助する人が必須だ。特に本館へ戻る際には上り坂になる。電動車椅子で、しかも介助する人がいればいい。
日本人として生まれたら見ておくべき
根津美術館の庭園がもっとも込み合う季節は4月下旬から5月中旬にかけてだろう。池の周辺に群生する約3000株の燕子花が花を咲かせる。ちょうどこのころ、館内では『燕子花図』の展観がある。本物の燕子花と尾形光琳の燕子花図の両方を見に来る人たちで館内も庭園も混雑する。だが、混み合っていてもこの時期には2つの燕子花を見に来る価値はある。一生に一度でもいいから、日本人として生まれたら、これは見ておいた方がいい。

庭園で本物の燕子花を見ていると、あることに気づく。
本物の花の色は光琳の作品よりも明るいのだ。青ではなく、鮮烈な紫だ。茎の色もまた緑青色ではない。明るい緑色だ。色が薄く明るいこともあって、本物の花なのにどこか軽い感じがする。

光琳が描いた燕子花の方が落ち着いた色のせいもあり、存在感がある。実は絵の方が本物よりも見る人の目をひきつけるのである。
燕子花が咲く季節以外でも、根津美術館の日本庭園は美しい。春は梅、桜が咲く。桜に続いてつつじが咲き誇る。新緑は目に眩しく、日差しのなかでの散策は楽しい。
初夏は燕子花を味わう。夏は涼しさを楽しむ。日中よりも夕方がいい。庭園の新緑が夕方を過ぎると涼しさを感じさせる。ほんの少しは都会の猛暑を忘れさせてくれる。
秋は紅葉が美しい。もみじ、かえでが色づいて写真にすると映える。都内にある庭園のなかでも紅葉の美しさは格別だ。それに、この時期、平日に行けば空いている。紅葉を楽しむにはもってこいの場所だ。

冬は寒さのためか庭園を歩く人は少ない。落ち着いて庭園を見て歩くことができる。ただし寒いから、散策は短時間にしておいて、館内にあるカフェ、NEZUCAFÉに避難する。雪が降った日などはカフェからガラス越しに水墨画のような日本庭園を眺めることができる。これがまた贅沢だ。
カフェは入館者だけが利用できる。コーヒーはおいしい。BLTサンドも悪くない。オープンは午後4時30分までだ。ラストオーダーもフードが午後3時で、ドリンクが午後4時。庭園散歩の後、カフェを利用する場合は早めに行くことだ。カフェから庭園を眺めていると、いつの間にか時間が経ってしまう。
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