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巨大企業の「マインドセット改革」の本気度。三菱電機・武田CDOに聞く「顧客ニーズ」の大変化 | Business Insider Japan

撮影:竹井俊晴 100年以上の歴史を持ち、正社員で約3万5000人(2022年度)、グループ全体で従業員15万人を抱える巨大企業・三菱電機。 同社はいま、DX人材を2030年度に、2023年度の約3倍にあたる2万人まで拡大するという目標を掲げ、モノづくりをめぐる「マインドセット改革」に取り組んでいる。 「製造業というのは、手数を重ねて、本当にミスなくものを作り上げていくものです。組織も課長がいて、リーダーがいてと指示系統が(モノづくりに)最適化されています。 一方でデジタルの世界はプロジェクトごとに組成して、終わったらパッと解散して、また次のプロジェクトへと移り変わっていく。これは従来の三菱電機の中にはなかったものです」 三菱電機グループ全体のDXの推進と従業員のマインドセット改革の舵取りを担う武田聡氏(取締役 常務執行役 CSO兼CDO)は、いま三菱電機がマインドセット改革に取り組み始めた「危機感」についてこう語る。 伝統的なモノづくりを得意とする巨人が新しい時代に適合した組織へと脱皮することは並大抵のことではない。それでも「やり遂げなければ」と武田氏が言う理由は何か。 (聞き手・Business Insider Japan編集長 伊藤有、文・太田百合子、撮影・竹井俊晴) 100年企業を動かした、顧客ニーズの変化 三菱電機 取締役 常務執行役 CSO兼CDO 武田聡氏。1989年4月、三菱電機に入社。FA海外事業部長、FAシステム業務部長を経て、2022年4月に同社常務執行役、インダストリー・モビリティビジネスエリアオーナー(FAシステム事業本部長)。2023年10月より現職。 撮影:竹井俊晴 規模の大きな組織には、ある種の「慣性の力」が働く。従業員のマインドセットを変えるような難しいミッションは、号令をかけただけではうまく進まない。 そんななか、武田氏が組織の変革装置の1つとして2023年4月に立ち上げたのが、横浜の「DXイノベーションセンター」だった。 いわば、マインドセット改革を先導するための、社内DX部隊といったところだ。 このチームが主体となって、各事業本部をデータという切り口で横断的に連携させるデジタル共通基盤「Serendie(セレンディ)」を立ち上げた。 令和の時代になぜ、グループ横断のデジタル基盤が必要なのか。武田氏は言う。 「三菱電機は電力、エレベーター、空調、FA(Factory Automation)などさまざまな分野でハードウェア製品やサービスを提供しています。これまで各ビジネスユニットがそれぞれにビジネスを展開していて、横の連携はそこまで必要とされませんでした。 しかし、例えばビルでいえば、空調とエレベーターと電力というように掛け合わせることで、新たな価値を提供できるはずです。 その価値のもとになるのが、新たに立ち上げる共通デジタル基盤の『Serendie』です」 三菱電機のハードウェア製品が生み出すデジタルデータを、Serendieを通じて組み合わせ、データを分析・活用することで、ビジネス上の新しい価値を生み出す。社会課題の解決にも貢献できると、武田氏は言う。 実際、三菱電機が納入した機器を組み合わせるなどの「新しい提案」を求めるニーズは近年増えている。導入先企業がサステナビリティへの取り組みを本格化しはじめたことで、さまざまな機器やデータを組み合わせたソリューションが求められるようになってきたからだ。 「今はカーボンニュートラルでいかに効率よく、ビルや工場を運営するかが重要になっています。 (例えば)電力をどう制御したら最適に配れるかという技術を持つ一方で、需要側、例えば工場で、いろいろな機械なり設備を動かす動力自体も(三菱電機は)供給しています。 またビルで最も電気を消費する機材の1つの空調や、エレベーターも持っている。それらを組み合わせれば、もっといい提案ができる」 こうも言う。 「(近年は)単に機器を納入するだけでなく、データを活用してどうアップグレードしていくか、そこにどんな価値を足していけるかが重要になってきました。お客様も以前は、機器の納入を決める部署と、納入後に保守をする部署が別々で違っていたりもしました」 サービスを作る側も、顧客側も、自分の担当領域で完結するのではなく、他の事業本部、場合によっては自社と他社を組み合わせるといったように、「視野をもっと広く、マインドセットを変えなければならない」と武田氏は言う。 2025年1月に横浜・みなとみらいに新たに開設される「Serendie…

巨大企業の「マインドセット改革」の本気度。三菱電機・武田CDOに聞く「顧客ニーズ」の大変化 | Business Insider Japan

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2024-09-11 02:05:00

撮影:竹井俊晴

100年以上の歴史を持ち、正社員で約3万5000人(2022年度)、グループ全体で従業員15万人を抱える巨大企業・三菱電機。

同社はいま、DX人材を2030年度に、2023年度の約3倍にあたる2万人まで拡大するという目標を掲げ、モノづくりをめぐる「マインドセット改革」に取り組んでいる。

「製造業というのは、手数を重ねて、本当にミスなくものを作り上げていくものです。組織も課長がいて、リーダーがいてと指示系統が(モノづくりに)最適化されています。

一方でデジタルの世界はプロジェクトごとに組成して、終わったらパッと解散して、また次のプロジェクトへと移り変わっていく。これは従来の三菱電機の中にはなかったものです」

三菱電機グループ全体のDXの推進と従業員のマインドセット改革の舵取りを担う武田聡氏(取締役 常務執行役 CSO兼CDO)は、いま三菱電機がマインドセット改革に取り組み始めた「危機感」についてこう語る。

伝統的なモノづくりを得意とする巨人が新しい時代に適合した組織へと脱皮することは並大抵のことではない。それでも「やり遂げなければ」と武田氏が言う理由は何か。

(聞き手・Business Insider Japan編集長 伊藤有、文・太田百合子、撮影・竹井俊晴)

100年企業を動かした、顧客ニーズの変化

三菱電機 取締役 常務執行役 CSO兼CDO 武田聡氏

三菱電機 取締役 常務執行役 CSO兼CDO 武田聡氏。1989年4月、三菱電機に入社。FA海外事業部長、FAシステム業務部長を経て、2022年4月に同社常務執行役、インダストリー・モビリティビジネスエリアオーナー(FAシステム事業本部長)。2023年10月より現職。

撮影:竹井俊晴

規模の大きな組織には、ある種の「慣性の力」が働く。従業員のマインドセットを変えるような難しいミッションは、号令をかけただけではうまく進まない。

そんななか、武田氏が組織の変革装置の1つとして2023年4月に立ち上げたのが、横浜の「DXイノベーションセンター」だった。

いわば、マインドセット改革を先導するための、社内DX部隊といったところだ。

このチームが主体となって、各事業本部をデータという切り口で横断的に連携させるデジタル共通基盤「Serendie(セレンディ)」を立ち上げた。

令和の時代になぜ、グループ横断のデジタル基盤が必要なのか。武田氏は言う。

「三菱電機は電力、エレベーター、空調、FA(Factory Automation)などさまざまな分野でハードウェア製品やサービスを提供しています。これまで各ビジネスユニットがそれぞれにビジネスを展開していて、横の連携はそこまで必要とされませんでした。

しかし、例えばビルでいえば、空調とエレベーターと電力というように掛け合わせることで、新たな価値を提供できるはずです。

その価値のもとになるのが、新たに立ち上げる共通デジタル基盤の『Serendie』です」

三菱電機のハードウェア製品が生み出すデジタルデータを、Serendieを通じて組み合わせ、データを分析・活用することで、ビジネス上の新しい価値を生み出す。社会課題の解決にも貢献できると、武田氏は言う。

実際、三菱電機が納入した機器を組み合わせるなどの「新しい提案」を求めるニーズは近年増えている。導入先企業がサステナビリティへの取り組みを本格化しはじめたことで、さまざまな機器やデータを組み合わせたソリューションが求められるようになってきたからだ。

「今はカーボンニュートラルでいかに効率よく、ビルや工場を運営するかが重要になっています。

(例えば)電力をどう制御したら最適に配れるかという技術を持つ一方で、需要側、例えば工場で、いろいろな機械なり設備を動かす動力自体も(三菱電機は)供給しています。

またビルで最も電気を消費する機材の1つの空調や、エレベーターも持っている。それらを組み合わせれば、もっといい提案ができる」

こうも言う。

「(近年は)単に機器を納入するだけでなく、データを活用してどうアップグレードしていくか、そこにどんな価値を足していけるかが重要になってきました。お客様も以前は、機器の納入を決める部署と、納入後に保守をする部署が別々で違っていたりもしました」

サービスを作る側も、顧客側も、自分の担当領域で完結するのではなく、他の事業本部、場合によっては自社と他社を組み合わせるといったように、「視野をもっと広く、マインドセットを変えなければならない」と武田氏は言う。

「Serendie Street YIMP(横浜アイマークプレイス)」

2025年1月に横浜・みなとみらいに新たに開設される「Serendie Street YIMP(横浜アイマークプレイス)」のCGイメージ。

画像提供:三菱電機

三菱電機は2025年1月に、横浜・みなとみらいに新たに「Serendie Street YIMP(横浜アイマークプレイス)」を開設し、3分の1ほどのスペースをオープンな共創空間にする予定だ。

同施設では、自社内での事業本部横断のビジネス創出だけではなく、従来では機密保護の観点で難しかった、「他社(パートナー)も比較的自由に出入りできる空間」とすることで、共創を加速させる狙いがある。

2024年度中に“みなとみらいにDX人材2000人”計画

三菱電機 取締役 常務執行役 CSO兼CDO 武田聡氏

撮影:竹井俊晴

三菱電機が社内DX部隊にどれほど「本気」なのかは、DXイノベーションセンターにかかわる人の規模感からも見えてくる。

DXイノベーションセンターは30人ほどでスタートを切ったが、2024年度中には、社内の従業員で500人、関係会社も含めた各事業部のDX人材まで含めれば約2000人規模という人員が横浜・みなとみらい周辺に集結する計画だ。

武田氏がDXイノベーションセンターを作るにあたって講じた「組織的な工夫」は、横浜に集まる従業員を「各ビジネスユニットのDX担当チーム」から出張のような形で集結させたことだ。

「所属部署を変えない」ことが、この段階では重要だと、武田氏は考えている。

その理由を、三菱電機のコアにあるのは、あくまでもハードウェアだからだと武田氏は強調する。

「ハードウェアが大事なのは、データを生み出す元だからです。データだけでは、本当の意味での付加価値は生み出せません。データの分析結果をハードウェア側にフィードバックして、より良い制御をするとか、より良い使い方できるように回していきたい」

さらに、社員数約3万5000人の人材プールを生かして、社内から隠れた優秀人材を見つける仕組みにも工夫がある。

「弊社ではいろんなベンダーさんと組んだ社内イベントもやっています。例えば、AWS(アマゾン・ウェブサービス)だったら『AWS Day』みたいなものを企画して、社員を集める。すると、上司も分からなかったようなスキル、データ分析の勉強をしていたり、AWSの資格を持っている社員が数百人、集まってくるんです。それで初めて、社内の隠れDX人材が可視化されてきたります」

DX人材の目星をつけたとしても、異動が難しい、というのもよく聞く話だ。

ただ、三菱電機ではユニークな人事制度がある、と武田氏は言う。

「三菱電機の人事制度では、本人がやりたいと言って、受け入れ側が了承すれば、所属上長の許可なく、異動ができる仕組みがあるんです。実際に、この仕組みによる異動も増え始めています」

とはいえ、社内で人材の取り合いのようにならないのだろうか。武田氏は、一定の議論になるのは想定内だとする。

「もちろん元の部署からは文句を言われることもありますよ。ただ、(若手社員が)辞めてしまうよりいいでしょ、とよく言っています。『隠れDX人材』は潜在的にデジタルをやりたい人。もし、三菱電機で実現できなかったとしたら、いずれ他社に行ってしまうんですよ」

価値観を変える「本気度」

三菱電機 取締役 常務執行役 CSO兼CDO 武田聡氏

三菱電機 取締役 常務執行役 CSO兼CDO 武田聡氏

撮影:竹井俊晴

三菱電機が5月に公表した「DX STRATEGY 2024」では、DX人材を2023年度の6500人から、2030年度に 2万人に拡充するという、高い目標を掲げている。

人手不足時代のDX人材の確保は、通常の採用活動や社員のリスキリングだけでは限界がある。当然、企業買収なども視野に入ってくる。

「外の力を社内に取り込んでくる、これは必要だと思います。全然違うカルチャーが入り込むことで組織に刺激が与えられ、社内のマインドセットチェンジを促すという効果もある。

もちろん2万人を集めるためにということもありますが —— リスキリングなり、カルチャー変革を進めるためにも、人材を外部から『買ってくる』というのは、特にデジタル分野では必要なんだろうなと」

2030年は先のように見えて、企業の時間軸で考えればそれほど猶予はない。

マインドセット改革、DX人材の拡充も確実に進めるためには、社内にも「本気度」を目に見える形で示していかなければならない。

「三菱電機では従来、戦略を緻密に議論して、石橋を壊れるぐらいまで叩いてきた。でも、(変化の時代には)それじゃダメなんじゃない、と。

特にDXとサステナビリティ分野については、『とりあえず渡ってみようぜ』『一定の失敗も許容する』という考え方にしているんです。ただこういうカルチャーにみんな慣れてない。だから、自分が(挑戦する人を支える)後ろ盾もします」

一番重要なのは、従業員の主体性を引き出すこと、そして多様性だ、と武田氏は締めくくった。

「多様性って、効率で言えば悪いんですよ。いろんな意見が出ますから。でも、同質性だけでは、議論をしても同じような結論しかでません。

(これからは)多様な意見のなかから、良いアイデアも生まれてくる、そういうカルチャーに変えていかなければ。非常に難しい挑戦ですが、やり遂げなければいけないと考えています」

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執筆者について: nipponese

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