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2024-06-25 02:00:00
撮影:小林優多郎
パナソニック コネクトは8月25日、ChatGPTをベースにした社内向けAIアシスタントサービス「ConnectAI」の導入成果を発表した。
2023年6月1日から2024年5月31日までの1年間で18.6万時間の労働時間を削減したと明らかにした。
情報漏洩などの事故はゼロだったとする一方、自社固有の情報の活用を進める中で見えてきた課題もあるという。
プロジェクトを主導するパナソニック コネクトのAI&Dataプラットフォーム部 シニアマネージャーの向野孔己氏に、生成AIの業務活用の実情と次なるステップについて聞いた。
1年間で18.6万時間、生産性向上に効果

パナソニック コネクトのAI&Dataプラットフォーム部 シニアマネージャーの向野孔己氏。
撮影:小林優多郎
パナソニック コネクトは、マイクロソフトがAzure上で提供するChatGPTサービスをベースに「ConnectAI」を自社開発。
2023年2月から、1万2400人の国内社員に提供している。2023年9月からはウェブサイトに掲載済みの情報など、自社固有の公開情報の利用を開始している。
さらに、2024年4月からは品質管理に関わる社外秘情報も利用できるようにし、AIが品質管理規定や過去の事例をもとに解答できる環境を整えている。

「ConnectAI」はGPT-3.5からスタートし、現在はGPT-4、GPT-4 Turbo、GPT-4oが利用可能。バージョンが上がるにつれて精度が高くなる一方で、日本語におけるトークンの数え方や価格設定が下がっているため、利用率があがってもコストは微増程度という。
出典:パナソニック コネクト
「ConnectAI」にはプロンプトの選択式テンプレートや、解答に対する評価など、独自の機能が数多く盛り込まれている。
どのくらいの時間短縮になったかを都度、5分、15分、30分、45分、1時間以上の5段階で報告する仕組みもある。
この評価機能により、これまでに約2000件の報告がされているが、5分が46%と最も多い一方で、1時間以上も12%ある。平均すると1回につき20分程度の短縮になっている。
12カ月間のAIの総利用回数は約140万回。1つの課題解決に平均2.5回ほどのやり取りがあるため、短縮された時間にこれを加味して集計した数字が18.6万時間になる。

1年間で18.6万時間の業務効率化になったという。
出典:パナソニック コネクト
利用回数は、導入直後の2023年3月から5月の3カ月間は約30万回だったが、2024年5月まで直近3カ月間は約42万回と、41%増えている。
「勤怠管理のように、必ず使わなければいけないものではないのに利用が増えているのは、皆が便利だと感じているということ。
最初は検索エンジン代わりのような使い方をする人が多かったが、最近は個々のAI活用スキルが向上し、業務に直結するような使い方をする社員が増えています」(向野氏)
以下に紹介するのは、1時間以上の短縮につながった業務活用の具体例(プロンプト)だ。
「物流業界の2030年までの課題をPEST分析を用いて整理してください」
「あなたは米国の〇〇の職員です。今のPCでの困りごとや、新しいPCに切り替えるとしたらどういった機能が必要か、ディスカッションしてください」
実際にアメリカで関係者を集めてリサーチするには時間もコストもかかるが、シミュレーションだけならAIでも可能だ。

社員の使い方について。
出典:パナソニック コネクト
「このように具体的な業務にも、かなり活用されている」と向野氏。意外なことに、部門による利用率の差もほぼなかった。
「営業よりも若干、R&Dやシステム開発部門が多い傾向はあるものの、利用率はほぼ人員構成比と同じ。法務などの部門でも、時間が大幅に削減できています」(向野氏)
例えば、アメリカで製品を販売するにあたって関連する法令はどれか、日本語で質問してあたりをつけられる。
最終的には英語の法令文を読んで調べるとしても、あらかじめあたりをつけられるだけで業務効率は大幅にアップする。
英語以外の言語でも同様のことが言えるため、「特にグローバル業務に携わる社員の生産性が上がっている」と話す。
GPT-4oにも対応。新機能の導入にも手応え

翻訳が即座にできる「日米翻訳アシスタント」。
出典:パナソニック コネクト
なお、「ConnectAI」には、アシスタントのタイプ(役割 ※)が選べる機能も用意されていて、「日英翻訳アシスタント」を選択すれば、「以下の文章を〇〇語にして」などと頼まなくても、翻訳ができる仕組みになっている。
ほかにも、法務、人事、プロジェクトマネージャーなどをAIに設定できるようになっているが、向野氏によれば、最新のGPT-4oでは「翻訳以外では、役割設定による解答精度の違いはほとんどなくなっている」そうだ。
※役割とは:ChatGPTでは、AIに「あなたは○○の専門家です」などと入力して役割を演じさせることで、より自然で精度の高い回答を返すようになることが知られている。「役割」の選択機能はこれをシステム的に組み込んだものと考えられる
「ConnectAI」ではこのほかにも、社員が利用しやすいようにさまざまな機能が追加されている。
導入から現在まで、大きなものだけで12回のアップデートを実施。直近のアップデートでは、プロンプトの作成自体をAIがサポートする機能が追加された。
質問を入力すると、AIがわかりやすい文章に自動変換してくれる。数日前に提供が開始されたばかりだが、すでに1日の利用回数は800~900回にのぼっている。

GPT-4oはマルチモーダルに対応。「ConnectAI」でも文字に比べるとまだ少ないものの、製造中止になった部品を撮影して、代替となる製品の品番をたずねる、エクセルのグラフデータから数字を抜き出して再利用するなど、活用が進んでいる。
出典:パナソニック コネクト
AI活用の懸念事項であるハルシネーション(AIが誤情報や関係のない内容を回答する現象)についても一定の対策が実施されている。
2023年9月から利用可能になったオープンな自社情報や、2024年4月から提供する品質管理に関わる社外秘の情報では、回答からソースとなったドキュメントを確認できるようになったことも大きい。
課題は「AI以前のナレッジマネジメント」

成果と同時に課題も明らかになってきていると語る向野氏。
撮影:小林優多郎
一方で、自社データの活用については、課題も見えてきた。
AIと社内情報の連携をまず品質管理から開始したのは、社内のニーズが高かったことと、PDFなどにデータ化されている文書が多かったからだ。
その中にはテキストだけでなく図表や写真も多く含まれている。
「そもそも誰も、生成AIに使うと思ってドキュメントを書いてないので、部門や人によってフォーマットがバラバラだったりする。
どんなデータでも掘り込んだら回答してくれると思っている人もいるかもしれないが、AIが解答しやすいように社内データを構造化する必要がある。AI以前のナレッジマネジメントの問題です」(向野氏)
データ化されていても、必要なものがどこにあるのかたどり着けないこともある。

研修推奨AIのイメージ。
出典:パナソニック コネクト
例えば、品質管理の次に横展開が進められている社内情報が、研修に関するものだ。パナソニックコネクトでは、2023年度からジョブ型人事制度を導入。
同制度には1400種類のジョブディスクリプション(職務記述書)と多くの研修が設けられているが、数が多すぎて自分のキャリア形成に必要なものが選びにくい。そこでAIが、個々に適切な研修を提案できるようにするという。
パナソニックコネクトではこのように、引き続きさまざまな社内情報をAIが活用しやすいデータ「パナソニックコーパス」として整備していく計画だ。フォーマットの統一やデータの構造化など、この整備にもAIを積極的に活用していく。

パナソニックコーパスの概要。
出典:パナソニック コネクト
「製造業にはさまざまなノウハウがあるが、体系化されていなかったり属人化していて、誰かに聞かないとわからなかったり、その人が退職してしまうとノウハウがなくなってしまうといったことがある。
それらを『パナソニックコーパス』としてAIから利用できるようにすることで、知識や経験を永続化し、誰もが活用できるように民主化したい」(向野氏)
「出張規定を知りたい」と質問すれば、AIが人事関連のドキュメントと判断してデータベースから情報を引っ張ってくる。
「製品の納期を知りたい」と聞けば、生産管理システムから情報を表示するといったように、「ConnectAI」にたずねれば「パナソニックコネクトのことは何でも聞ける状況を作りたい」と向野氏。
さらにその先の課題として、「情報の権限管理をどうしていくかも、同時に考えて行く必要がある」と話す。
「質問に答えるAI」の先も見据える

撮影:Business Insider Japan
向野氏はAI技術の将来について、哲学者のニック・ボストロム博士によるAIの発展段階を引用して次のようなイメージを持っている言う。
- オラクル型……現在の姿。AIは聞いたことに対して解答する
- ジーニー型……与えたタスクや課題を解決してくれる
- ソブリン型……目的を伝えると達成するまで主体的にやってくれる
例えば、オラクル型では自社データを連携させると、出張したいときに手続き方法を教えてくれる。
これがジーニー型に発展すると、旅行会社のシステムなどと連携して、出張規定に合った交通機関や宿の予約までやってくれるようになる。
ソブリン型では、提案にとどまらず自主的に動いてくれる。例えば、ある製品の問い合わせを100件獲得したいと命令すれば、マーケティングリサーチのAI、コピーライターのAI、ビジュアルを作るAI、成果確認をするAIがそれぞれPDCAを回して100件獲得するまでやる。

ソブリン型のイメージ。
出典:パナソニック コネクト
「こんな世の中になるんじゃないかなと思う」と向野氏は話すが、「一方で、これって怖いことでもある」とも。
「100件の獲得の仕方が(倫理的にも)あまり良くないという可能性もある。
そのためには技術だけでなくルールも大切。今後も技術とルールの2つの動向に注目しつつ、歩みを進めていきたい」(向野氏)
なお、技術については「コストとスピードが重要」だと言い、現在はAzureでChatGPTを活用しているが、今後「社員のニーズに応じて、グーグルのジェミニや、Anthropic(アンソロピック)のクロードを導入する可能性もある」と話した。
編集部より:初出時より、向野氏の肩書きを「戦略企画部シニアマネージャー マーケティングIT総括担当」としておりましたが、正しくは「AI&Dataプラットフォーム部 シニアマネージャー」です。お詫びして訂正致します 2024年6月25日 13:15
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