骨肉腫との過酷な闘病の末に17歳で世を去った奈良県田原本町の西村岳流さんの追悼・回顧展「いつまでもKAZOKU展」が3日、奈良市のアートギャラリー「Dear Gallery NARA」で開幕した。会場には、17年間の短い生涯を駆け抜けた軌跡を伝える遺作約30点や家族写真が並び、多くの来場者を引きつけている。
中学3年の秋に発症、余命宣告のなかで開いた初の個展
西村岳流さんが骨肉腫と診断されたのは、中学3年生だった2023年秋のことだった。幼い頃から絵を好んでいた岳流さんは、病魔に蝕まれる過酷な日々のなかでも筆を握り続け、表現活動への情熱を失わなかった。余命1年の宣告を受けた昨年には、家族の全面的な協力のもと、今回と同じギャラリーで初の個展「KAZOKU展」を実現させいのちの輝きを刻んだ。のべ約300人が足を運んだその会場で、岳流さんは「皆さんのおかげ」と満面の笑みで喜びを語っていた。
病室で残した「ほんまにいい人生やった」という言葉
初個展のあとも創作への意欲が衰えることはなかった。しかし、今年1月15日、岳流さんは17歳の若さで帰らぬ人となった。母の千代さん(52)によると、旅立つ前日の14日、病室で息子の口から飛び出したのは意外なまでの達観だった。「病死は天寿を全うしたのと一緒だから、全然不幸じゃない。ほんまにいい人生やった」。そう自身の心境を穏やかに語っていたという。会場の一角には、その亡くなる直前まで懸命に取り組んでいた未完成のアクリル画が、生前の息吹をそのままにとどめている。
生前の応援に報いるため家族が立ち上げた追悼の場
今回の展覧会は、生前に岳流さんを支え、応援してくれたすべての人々へ感謝を伝えたいという家族の強い思いから企画された。父の朋也さん(47)は、「限られた時間の中で、新たなスタートができた場所で、また個展ができた」と、かつて最初の個展を開いた思い出の地での開催をしみじみと振り返る。会場に足を運んだ母・千代さんの同僚である大和郡山市の女性(44)は、「岳流君には人を引きつける魅力があったことが、展示を通して感じられた」と静かに語った。
多彩な自画像とペンギンの作品が示す17年の足跡
会場を巡ると、岳流さんがたしなんだ多彩な画風の自画像や、ペンギンをモチーフにしたユーモアあふれる作品群に出会うことができる。さらに別室には、生前に参加したイベントの様子をとらえた写真や家族との思い出の記念写真、お気に入りだった服なども丁寧に飾られている。遺作とこれらの私財が織りなす空間は、17年間をいかに濃密に、懸命に生きたかを雄弁に物語る。母の千代さんは、「17年間精いっぱい生きた岳流の姿を見てほしい」と、多くの来場を呼びかけている。

5日までの開催日程と今後の展覧会情報
「いつまでもKAZOKU展」の会期は5日まで。入場は無料で、開場時間は正午から午後6時までとなっているが、最終日の5日のみ午前10時から開かれる。奈良市での会期終了後も、岳流さんの作品に触れる機会は続く。11月21日から23日まで、橿原市内で開催される「奈良・町家の芸術祭 はならぁと」においても、ふたたび作品が展示される予定だ。