陸上自衛隊中央情報隊の「現地情報隊」が、日本人の思想信条に関する個人情報を組織的に調査し報告書にまとめていた問題で、同隊の幹部会議において「報告書は公文書として扱わない」と申し合わせていたことが4日、分かった。元幹部の男性が熊本日日新聞の取材に対して証言した。
現地情報隊の幹部会議における公文書不扱いの申し合わせ
陸上自衛隊中央情報隊(東京・埼玉、朝霞駐屯地)の対外情報部門である現地情報隊において、収集した報告書を公文書として扱わない方針が幹部会議で共有されていた。熊本日日新聞が入手した「個人BSD(ベーシック・ソース・データ)報告書」などの文書には、日本人の大学教授やNPO法人関係者の氏名、職業、顔写真のほか、思想・信条などの項目が記録されている。元幹部の男性は2010年代の在籍時、隊長らが出席した会議で「押印がある文書は公文書ではないか」と手続き上の懸念を指摘した。
当時の隊長による「ただの確認印」という回答の実態
元幹部の男性の指摘に対し、当時の隊長は公文書として扱う必要はないと答え、「ただの確認印だ。幹部が活動を承認したチェックみたいなものだ」と述べたとされる。報告書を含む一連の文書には幹部らの決裁印が押されていたものの、その後も公文書として登録・管理されない運用が続けられた。別の元隊員も、報告書が公文書扱いされていなかったと裏付けており、部隊内での曖昧な管理体制が浮き彫りとなっている。
個人情報や思想信条を含む41項目に及ぶ調査内容
熊日が入手した個人BSD報告書には、対象者の思想や信条、対自衛隊感情、異性関係、性的嗜好など41に及ぶ詳細な項目が並んでいる。さらに、対象者への接触の経過や目標などを記録した「継続接触伺」という文書には、隊長らの決裁印が実際に押されていた。元幹部の男性は、自衛隊側には情報を集める法的根拠も権限もないとした上で、「余計なことをするべきではないと考えていた」と当時を振り返り、集めた情報は中央情報隊や防衛省の陸上幕僚監部と共有していたと明かした。
隊員の間で認識されていた違法性とグレーな情報収集
組織的な情報収集活動について、別の元隊員は「違法またはグレーとの認識が隊全体にあった」と証言している。法的な権限や明確な裏付けがないまま、対外情報部門として日本人の個人情報を調査・報告する行為が行われていた実態が、内部関係者の証言によって示されている。こうした活動は、防衛省の上位組織とも共有されながら、公的な文書管理の枠外で継続されていた。
2025年2月の公益通報と陸上幕僚監部による受理状況
関係者によると、2025年2月に部隊関係者が一連の文書について「朝霞駐屯地で保管しながら行政文書としての登録、管理がなされていない」として、公益通報を行った。この通報では公文書管理法と個人情報保護法に違反している疑いが指摘されている。これに対し、陸上幕僚監部は同年5月に公文書管理法違反の件を受理した一方、個人情報保護法違反については不受理としており、今後の対応が注目されている。