米財務省は2026年9月8日、イランの残るすべての現役航空会社27社を含む36の対象を新たに制裁指定した。同国の航空網が武器や人員、不正貨物の輸送に利用されているとするもので、関係企業や個人に対しても世界的な金融システムからの排除を警告している。
スコット・ベッセント米財務長官は今回の追加措置について、テヘランの金融上の生命線を断ち切るためのキャンペーンの一環であると説明している。
米国政府は、イランの航空産業が武器や要員、不正な貨物を移動させるために悪用されていると主張してきた。今回の指定により、イラン・エア・ツアー、イラン・アセマーン航空、ゲシュム航空、キシュ航空、ザグロス航空、ターバン航空、サハ航空、アータ航空、カールン航空などの現役キャリアが正式に制裁対象となった。これらは、大統領令第13902号に基づき、イランの航空部門で活動していることを理由に外国資産管理局によって指定されたものである。サハ航空については、ロシアへの兵器移転に関与したとして2024年10月に欧州連合(EU)からも制裁を受けていた経緯がある。また、同月には残る未処罰の航空会社すべてに対する制裁も追加で実施されていた。

イランの航空会社27社と仲介網を対象に追加指定
米財務省の外国資産管理局(OFAC)が今回指定した36ターゲットの中には、イラン国内に残るすべての現役航空会社27社が含まれている。
対象となったのは、イラン・エア・ツアー、イラン・アセマーン航空、ゲシュム航空、キシュ航空、ザグロス航空、ターバン航空、サハ航空、アータ航空カンパニー、カールン航空カンパニーなど多岐にわたる。さらに、外国のフロント企業、仲介業者、貨物サービス、そして国際金融システムへの接続を支援してきたその他の企業や個人も標的とされた。これには、アラブ首長国連邦(UAE)を拠点とするECTアviationサポートおよびエアブラボ・エアプレーン・マネジメント・アンド・オペレーション、トルコのスカイ・フェニックス、マレーシアのアイカーゴ、カザフスタンのツアー・インベスト、トルコのSシステム・ロジスティックやMESカーゴなどが含まれている。Sシステムについては、無人航空機(UAV)の部品や産業用設備をイランへ向けて出荷する調整に関与したと指摘されている。
米国政府による一連の包囲網は、航空機調達を支える海外のネットワークにも及んでいる。
財務省の発表によると、UAEのシャルジャを拠点とするECTアviationサポートは、退役した機体を一時的に保管し、C5登録と呼ばれるガンビアの一時登録を付与する役割を果たしていた。同社の創設者兼オーナーであるエジプト国籍のイブラヒム・アリー・モハメド・モハメド・マフラン氏も個別に制裁対象となったほか、英国にある同社の小会社も指定リストに加えられた。また、トルコのスカイ・フェニックス・ハバ・ヨラーズ・タシュマジュル・ティカレット・リミテッド・シルケティも、ボーイング777型機の移転において2番目の仲介役として関与したと認定されている。一方で、ECTアviationサポート側は2026年7月6日に発表した声明の中で、サウディアからイランへの元サウディア機移転への関与を一貫して否定していた。
マーハン航空によるボーイング777の調達ルートを追う
長年にわたり米国から厳しい制裁を受けてきたマーハン航空は、2011年以降の制裁下にもかかわらず、2026年を通じてボーイング777型機の導入を続けていた。

財務省の確認によれば、同航空は2026年夏までに少なくとも3機のボーイング777型機を第三国経由で取得していた。具体的には、EP-MTEが1月に到着し、2月にEP-MTBが続き、7月にはEP-MTAが加わったことで一連の機体が揃った。さらに別の機体として、マルタ登録の5R-RISとしてマダガスカルの登録を維持したまま2025年7月からイラン国内に留まっていたEP-MTDも控えている。これらの機体は、かつての中東の主要航空会社などの退役艦隊から調達され、UAEやオマーンを経由するルートを通じて引き渡された。ECTアviationサポートなどのUAE企業を通じる過程で一時的な登録変更が行われ、国際的な追跡を逃れる手法が取られていた。
マーハン航空に対する包囲網は、国家安全保障や大量破壊兵器の拡散防止の観点から長年強化されてきた。
米国務省は2019年12月に、大量破壊兵器の拡散者とその支持者を対象とした権限に基づき、マーハン航空を個別に指定していた。さらに、2026年7月にも、中国、インド、ロシア、イランに所在する同航空やイスラム革命防衛隊(IRGC)を支援した6つのエンティティと個人が制裁を受けている。ワシントンは、同航空が要員、武器、軍事機材などの輸送を通じてIRGCに物心両面の支援を提供していると非難を続けている。こうした調達活動を金融面から阻止するため、米国の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)も同日、イランの航空調達に結びつく取引について金融機関へ警戒を呼びかける並行アラートを発令した。
「これらの残りの航空会社とビジネスを行うすべての人々に警告します。あなた方はグローバルな金融システムから遮断される危険にさらされています。私たちは、イラン政権の金融の生命線を遮断するキャンペーンを緩めることはありません。」
スコット・ベッセント米財務長官(Scott Bessent)、米財務省発表
米国務省による専門家の見解として、ケリー・ビットソフ氏などの当局者は、今回の措置が世界規模で影響を及ぼす理由を解説している。
世界のほぼすべての商用機が米国製であるか、あるいは米国製のエンジンやアビオニクスを使用して運航されているため、今回の特例承認の停止は実質的に世界の航空フリートの大部分に到達するものとされている。財務省は、航空安全に関する要請が生じた場合には例外的に個別審査を行う方針を示しているものの、関係企業に対する圧力はかつてない規模に達している。
広がる国際的な影響と運航停止に追い込まれるイラン便
一連の厳格な制裁措置は、イランの航空セクターだけでなく、世界中の航空会社やサプライヤーにも波及している。米財務省は、非米国籍の航空会社による米国製または米国制御の商業機のイラン乗り入れや、上空通過を許可していた3つの航空関連の特例承認を停止した。個別の航空安全に関する要請のみ個別に審査される。
米財務省長官スコット・ベッセントは9月22日のメディアインタビューにおいて、すべてのイランの航空会社が世界中で運航停止に追い込まれると警告していた。
「もし着陸すれば、燃料を提供することはできず、地上サービスを提供することも、チケットを販売することもできない。さもなければドルシステムから排除されるだろう」と強調した。この動きは、2月下旬に米国とイスラエルが共同で実施したイランへの攻撃に端を発するものであり、その後イランがエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡を封鎖したことで、世界的な原油価格の急騰を招いていた。ベッセント長官はさらに、ドナルド・トランプ米大統領の中国の習近平指導者との首脳会談に先立ち、中国の何立峰副総理と経済協議を行い、イランに対する「経済的なDデー」を執行する姿勢を示していた。
「ほぼすべての商用機が米国製であるか、米国製のエンジンやアビオニクスで飛んでいるため、その措置は世界のほぼすべてのフリートに及びます。」
ケリー・ビットソフ(Kerri Bitsoff)、元米財務省OFAC高官
制裁が発効した9月23日以降、イランの航空会社はバグダッドやマスカット、カタール、ジョージア、アゼルバイジャンなどへの国際便の一時運航停止を余儀なくされた。
テヘランの旅行代理店によれば、状況は不安定であり、キャンセルの恐れがあるため当面はチケットの販売を停止しているという。一方で、中国の広州や上海、さらに一部のイスタンブール便などは、中国側が米国の制裁に反対を表明する中で運航が継続されている。