米中間選挙を1か月後に控え、各州で郵便投票が始まっている中、対面で行われない投票を巡って憲法論争や透明性の確保に向けた動きが活発化している。トランプ大統領が郵便投票を「不正の温床」とみなして連邦政府による管理強化を図る一方、各州の選挙管理当局は追跡システムの導入を進め、疑念の払拭に当たっていると、yomiuri.co.jpが報じた。
バージニア州の選挙管理事務所における追跡システムの導入
9月30日、バージニア州アーリントン郡の選挙管理事務所には、投票用紙の入った郵便封筒が有権者から続々と届いた。封筒には追跡用のバーコードが印刷されており、到着がシステムに正確に記録される仕組みになっている。投票用紙の配布から投票、受理までの各段階で記録が残るため、有権者はオンラインで自身の投票状況を確認することが可能だ。選挙登録責任者のグレッチェン・ライネマイヤーさんは、「投票用紙が今どこにあるのか、把握する仕組みは欠かせない」と語る。各州によると、近年は全米でこうした追跡システムの導入が急速に広がっている。
コロナ禍で拡大した郵便投票と支持層の偏り
米国における郵便投票の大規模な拡大は、新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけとなった。トランプ氏が敗北した2020年大統領選では、投票者に占める郵便投票の割合が43%に達し、2016年選挙の21%から大幅に上昇した。マサチューセッツ工科大学の研究グループの調査によると、2020年選挙で郵便投票を利用した共和党支持者は32%だったのに対し、民主党支持者は60%に上った。民主党支持者の利用率が圧倒的に高い状況について、トランプ大統領は2日の演説で「郵便投票の結果がこれだけ偏っているとは驚きだ。合法的な票を数えれば、私は楽に勝てる」と述べ、不正があったとの主張を展開した。
連邦政府による管理強化と州の自治を巡る憲法論争
24年大統領選では郵便投票の割合が29%に下がったものの、今回の中間選挙でも民主党支持者が多く利用する傾向は続くとみられている。こうした状況を受けて、トランプ氏は今年3月、投票資格を持つ有権者のリストを連邦政府が作成するとの大統領令に署名し、郵便投票への管理強化を試みた。しかし合衆国憲法は連邦選挙の実施方法を決める権限を州に与えており、バージニア州などは4月、大統領令による選挙手続き変更は違憲だとして連邦政府を提訴した。連邦最高裁が9月に暫定的な判断を下し、今回の中間選挙では従来の仕組みで郵便投票が行われることになっている。
全米で異なる実施方法と処理の遅れという課題
米国で導入されている郵便投票の仕組みは州によって大きく異なっており、首都ワシントンとカリフォルニアなど8州では全有権者に投票用紙が届けられる。バージニアなど29州では申請すれば理由を問わずに利用できる一方、テキサスなど13州では病気などの理由が必要となる。日本の郵便投票制度が身体に重度の障害がある人などに限定され、2021年衆院選での利用率が1%に満たなかったのとは対照的だ。一方で、米国では処理に時間がかかることが結果判明の遅れを招いており、24年の連邦議会下院選では最後の議席判明に約1か月を要した。連邦最高裁は6月、投票日までの消印があれば締め切り後に届いた票も有効と判断しており、各地の選管は正確性と迅速性の両立を迫られている。