所信表明演説のため衆院に姿を現す石破茂首相=東京・国会内で2024年11月29日午後3時30分、平田晃宏撮影
石破茂首相が国会での精力的な議論を求めること自体は正しい道だが、日本の将来に対する明確なビジョンがなければ、有意義な議論は得られない。
石破氏は臨時国会の所信表明演説で「可能な限り幅広い合意を求める」と約束し、反対の声に耳を傾ける考えを強調した。異なる視点を交換しながら共通点を見出すという議会制民主主義の根幹を反映するプロセスであり、首相がこのプロセスを重視するのは当然だ。
石破氏は演説の冒頭、リベラル派の指導者である石橋湛山元首相が1957年に与党自民党が圧倒的多数を占めていたときでも野党の意見を尊重するよう求めた発言を引用した。自民党の過去の強権的な統治を声高に批判してきた石破氏にとって、現在の与野党の力関係は、一方的な政治的駆け引きを変える好機となるかもしれない。
しかし、石破氏は国民民主党などとの便宜提携に頼ることで少数政権の脆弱性をカバーしているようだ。このことは、彼の政権が国民のニーズに焦点を当てた議論を展開できるかどうかについて疑問を生じさせている。
この演説では、日本が直面する課題に対する具体的な解決策についても不十分だった。
外交政策に関して石破氏は、相互の利益を守るためにドナルド・トランプ次期米大統領や中国の習近平国家主席と連携する一般的な意向を表明しただけだ。
経済政策では前任の岸田文雄氏のアプローチを踏襲し、賃金引き上げと投資による成長を主張した。人口減少の中の日本再生を口にしながらも、提案は地方創生交付金の倍増にとどまった。
現在進行中の二つの戦争とトランプ大統領の復帰によって世界が不安定になる中、石破氏は日本の安定化や国際秩序への貢献に関するビジョンを提示できなかった。
この臨時国会は、政治におけるカネ問題に対する有権者の不満を浮き彫りにした10月の総選挙の直接の結果であるが、石破氏の改革は後退しているようだ。政治資金規正法改正に向けた同氏のアプローチは、政治活動資金の廃止など自民党案を踏襲しただけで、多くの野党の主要要求である企業・団体献金の問題は回避した。
政治に対する国民の信頼を回復し、激動の時代を乗り切ることは、国会論戦に臨む首相の責務である。
#社説石破首相の国会演説に欠けている日本の将来への明確なビジョン