神奈川県相模原市の光学ガラスメーカー「オハラ」は2026年9月30日、同社の光学ガラスがアメリカ航空宇宙局(NASA)の「ナンシー・グレイス・ローマン宇宙望遠鏡」に採用されたと発表した。同望遠鏡のコロナグラフ装置の光学系と広視野観測装置のプリズムに搭載され、ダークエネルギーの解明や太陽系外惑星の探索を素材の面から支える。
ローマン宇宙望遠鏡のコロナグラフ装置を支える耐放射線ガラス
ローマン宇宙望遠鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡と同じ口径2.4メートルの主鏡を備え、2026年8月30日にスペースXの「ファルコン・ヘビー」ロケットで打ち上げられた。ダークエネルギーやダークマターの解明、太陽系外惑星の探索を主な目的とする。恒星のまぶしい光を抑えて周囲の暗い惑星や塵の円盤を観測するコロナグラフ装置には、オハラの耐放射線光学ガラスなどが採用された。同社によると、このガラスは放射線を浴びても透過率がほとんど変化せず、宇宙の過酷な放射線環境でも光学性能を維持できるという。
広視野観測装置の分光プリズムに採用された光学素材
もう一つの主要な搭載機器である広視野観測装置は、約3億画素のカメラによる撮影と、天体の光を波長ごとに分けて調べる分光観測を行う。視野はハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ「WFC3」の赤外線観測時と比較して約200倍あり、広い範囲の天体を一度に捉えることが可能である。オハラの光学ガラスは、この装置の分光観測に使うプリズムに採用された。銀河や超新星から届く光を波長ごとに分け、天体の性質を詳しく調べる役割を担う。
すばる望遠鏡から火星探査車まで続くオハラの宇宙実績
オハラのガラス素材は、これまでにも多くの国際的な宇宙・天文プロジェクトで採用されてきた。1969年のアポロ11号による月面着陸をはじめ、1973年の宇宙ステーション「スカイラブ」、1982年のスペースシャトルコロンビア号に搭載された実績を持つ。地上や月・火星の探査においても、1999年と2012年のすばる望遠鏡、2007年の月周回衛星「かぐや」、2014年の小惑星探査機「はやぶさ2」、2021年の火星探査車「パーシビアランス」、2023年の小型月着陸実証機「SLIM」などで重要な光学部品を支えてきた。
最新の宇宙望遠鏡ミッションにおける今後の観測成果に注目が集まる
打ち上げを終えたローマン宇宙望遠鏡は今後、本格的な観測運用に向けた初期調整段階へ移行していく。数多くの宇宙機に素材を提供してきたオハラの光学ガラスが、系外惑星の直接撮影技術の実証や、いまだ謎の多いダークエネルギーの正体に迫る観測データをどのように下支えするのか。世界中の研究者が、同望遠鏡が切り拓く新たな宇宙像の成果に期待を寄せている。