白血病などの治療に必要な造血幹細胞の提供を巡り、患者と白血球の型が一致しても、仕事の休暇取得などの時間的負担から提供を辞退する例が相次いでいる。日本骨髄バンクによると、令和8年3月末時点で1721人の患者が移植を待つ一方、昨年度は適合通知を受けた人の約1割にあたる2145人が都合がつかないとして辞退した。
造血幹細胞移植を待つ患者と登録者の現状
白血病や再生不良性貧血、先天性免疫不全症などの患者1721人が、健康な人からの造血幹細胞の移植を待っていると日本骨髄バンクが明らかにしている。提供者となるドナー登録者は、令和8年8月末時点で56万5196人に上る。しかし、患者とドナーの白血球の型が一致しなければ移植はできない。型は数万人に1人程度しか見つからない場合もあり、さらなる登録者の増加が求められている。
適合しても辞退せざるを得ない時間的負担
白血球の型が一致しても、実際の提供に至らないケースがある。日本骨髄バンクによると、令和7年度はドナーの適合通知を送った1万9544人のうち、2145人が「都合がつかない」という理由で辞退した。背景には重い時間的負担がある。指定された病院と日程で事前検査を受け、提供時には入院が必要となるため、平日に約10日程度を割く必要がある。
会社員が語るドナー経験とボランティア休暇
昨年12月に横浜市内の病院でドナーとなった会社員の當銘梨夏さん(32)は、献血の際に骨髄バンクに登録し適合の連絡を受けた。事前の健康診断などで半日休を3回、注射や採取のための入院で丸4日、有給のボランティア休暇を取得した。當銘さんは腕の血管から採取する末梢血幹細胞採取を行い、「緊張したが痛みもほどほどで、退院後の生活に影響はなかった」と振り返る。
あいおいニッセイ同和損害保険の制度活用と実績
當銘さんが勤務するあいおいニッセイ同和損害保険は、社会貢献活動に参加する社員に年間最大12日間のボランティア休暇を付与している。當銘さんの例を機に社内で制度を改めて周知したところ、9月時点での社員の延べ申請日数が昨年の3倍程度に増加した。人事部の中冨正人担当課長は、「自主的に社会活動に気兼ねなく参加する風土を作っていく上で休暇制度は重要」と述べている。
ドナー休暇の普及と職場環境の整備
日本骨髄バンクによると、ドナー登録者の4割は20から30代の働き盛りの世代が占めている。平日に会社を複数回休む必要があり、同僚への遠慮が辞退を招きやすい。同バンクの広報渉外担当者は、企業にドナー休暇の普及を呼びかけ、周囲の理解と応援ムードが広がることで職場への愛着やエンゲージメントの向上にもつながるという副次的な影響を示唆している。