東京大学の次期総長に、意向投票で2位だった藤垣裕子教授が選出された。教職員の支持でトップだった染谷隆夫副学長を上回る選考結果に対し、学内外から選考理由の不透明さを問う声が広がっている。産経新聞などによると、文部科学省も説明責任を求めている。
意向投票で1107票を集めた染谷氏を逆転
東京大学の次期総長選考を巡り、学内での意向投票結果と最終的な選考結果の乖離が波紋を呼んでいる。産経新聞によると、9月29日に行われた記者会見で、次期総長に大学院総合文化研究科の藤垣裕子教授が選出されたことが発表された。しかし、直前に行われた教職員らによる意向投票では、大学院工学系研究科教授で副学長の染谷隆夫氏が1107票を獲得し、1位となっていた。藤垣氏は553票で2位だった。朝日新聞によると、国立大学の学長選考は法人化以降、学外メンバーを含む選考会議が決定権を持つ仕組みとなっており、意向投票の結果は参考情報という位置づけである。

文部科学相が求める説明責任
選考会議の決定に対し、政府側からも説明を求める声が上がっている。産経新聞によると、関芳弘文部科学相は記者会見で「なぜそのような判断をしたのか、しっかり説明する必要がある」と述べた。東大には年間800億円超の運営費交付金が税金から投入されており、国民に対する説明責任が問われる形だ。また、朝日新聞は、かつて安倍政権下の2014年に文科省が投票結果をそのまま反映させないよう通知を出した経緯を報じている。しかし、千葉大学など他の国立大で意向投票と異なる選考が行われた際にも、選考過程の透明性が課題となってきた。
「能力より性別」との指摘とSNSの反応
藤垣氏が東大初の女性学長となることに対し、SNS上では選考理由を巡る憶測も飛び交っている。産経新聞によると、ネット上では「能力より性別が優先されたのではないか」との指摘があり、これが誤解であるならば詳細な説明が必要だと報じている。また、J-CASTニュース(Yahoo!ニュース)によると、メディアアーティストで准教授の落合陽一氏が「私たちはなんのためにあの時間を空けて投票していたのか」とXに投稿するなど、学内からも疑問の声が噴出している。山内啓太郎教授も「染谷さんの過半数獲得は意味なし?」とSNS上で疑義を呈した。
選考会議が掲げた「変革」の根拠
選考会議の議長を務める国谷裕子氏(元NHKキャスター)は会見で、藤垣氏を選んだ理由について「総合的に考慮した」と説明した。産経新聞によると、選考会議は「国際的な経験をもとに、より開かれた大学に向けた変革を実現する能力がある」と評価したとしている。一方で、候補者資料を比較すると、染谷氏は文部科学大臣表彰や日本学術振興会賞など13の受賞歴があるのに対し、藤垣氏の特記事項は「なし」とされており、学術的実績の面で疑問視する声が一部で上がっている。J-CASTニュースによると、藤垣氏は会見で、自身の選出について「学内コミュニケーションを充実させることで乗り越えたい」と述べている。
放置される過去の不適切投稿問題
東大を巡っては、今回の総長選考以外にも学内のガバナンスに対する懸念が指摘されている。産経新聞によると、大学院教育学研究科の本田由紀教授がX上で女性皇族の写真を引用し「遺伝的要因のおそろしさを感じる」と投稿した問題について、大学側が適切な処分を行っていない点が問題視されている。この件についても関文部科学相は、過去の処分事例を踏まえた適切な対応を求めている。東大は政府が支援する「国際卓越研究大学」への認定を目指しているが、一連の選考プロセスや不祥事への対応を巡り、大学の姿勢が厳しく問われている状況だ。

今後の見通しと学生への対話
朝日新聞によると、選考に先立つ候補者インタビューに藤垣氏が応じなかったという学生新聞の報道もあり、今後の学内対話のあり方が注目される。意向投票の重みや選考理由の透明性を巡る議論は、今後も大学運営の根幹に関わる課題として残りそうだ。千葉大学のように選考会議の議論概要を公表した事例もあり、東大が今後、どのような形で納得できる説明を行うかが焦点となる。東大総長選考を巡る不透明さへの指摘は、過去に京都大学や千葉大学でも同様の逆転人事が起きた際にも繰り返されてきた。