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2024-09-24 22:55:00
東証からの退出を選ぶ企業、アクティビストと向き合う企業など、さまざまだ。
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アクティビスト(物言う株主)の参入や東証からの経営改革要求、事業会社からの同意なき買収提案など、上場企業へのプレッシャーがかつてないほどに高まっている。そんな中、東証が「非公開化する経営判断を尊重」し、上場企業の「数ではなく質を重視」していくと発表したことが、話題を呼んだ。
それもそのはず。欧米諸国では上場企業が減っている一方で、日本では増え続けているのだ。日本の上場企業は1993年末時点で1777社だったが、2024年8月末時点では3956社と約30年で2.2倍程度増加しており、TOPIXについても約1.5倍に伸びている。この状況を「資本市場が盛り上がっている」とだけ捉えるのは早計だろう。
上場をステータスと捉えてしがみついたり、上場を維持することが「投資ではなくコスト」になっている企業もいるからだ。株式市場からの退出を促すべきタイミングは、今かもしれない。
東証が抱えるジレンマ
本来、上場の目的は株式を公開することで資金を集め、事業を発展させ社会に還元していくことだ。しかし最近は、上場益が実質的なゴールになっていたり、初値がついた後10年以上も停滞していたりする企業も少なくない。上場企業が多いこと自体は問題ではないが、市場と対話しようという姿勢がなく、上場というステージに居続けることが目的となってしまっている「現状維持バイアス」に陥る企業が増えていることこそが問題なのである。
そのような企業に求められるのは、「変革すること」か「退出(非上場化)すること」の2択だが、東証はPBR(株価純資産倍率)1倍割れの改善など「資本コストや株価を意識した経営」を求めて、企業に変革を促してきた。
東証が上場している営利団体である以上、利益の追求は必須であり、上場企業を増やすことが求められる。要は、現状維持バイアスに陥る企業が増えてしまう事実に煩悶(はんもん)しつつも、退出を簡単には促すことができないジレンマがあるのだ。
「上場維持コスト」の問題もある。年間上場料や開示書類の作成費用、監査費用はもちろん、情報開示やそれに付随する投資家との対話(IR活動)など、上場するにはコストがかかる。市場や企業の規模にもよるが、上場維持コストを1社当たり年間1億円とするならば、単純計算でも1年間で4000億円程度のお金が動いていることになる。一定数の上場企業が存在することによってさまざまなプレイヤーに益が生み出されているという側面もあるため、なかなか退出を促す力学は発生しにくかったことも事実だ。
そんな中にあって、東証が2024年8月に新たに発表した指針は大きな注目を集めた。上場維持コストが増加して非公開化という経営判断が増加することも想定されるとした上で、その判断を尊重し、日本市場の魅⼒向上に向けて、上場企業の数ではなく質(投資者の期待に応えた企業価値向上の実現)を重視すると打ち出したからだ。
もちろん、上場企業の数を減らすことが問題解決の本質ではない。だが、株式上場の本来の目的に立ち返るのであれば、市場に向き合わず、誠実な対話・開示をする気が無い企業は資本市場から退出したほうがいいと言える。約4000ある上場企業のすべてが資本市場に向き合っている状態が理想だが、現実的には難しい。それならば、「入れ替え」を促していくべきだろう。
現状維持バイアス企業は退出を
資本市場の「入れ替え」には、(1)「現状維持バイアス」に陥った企業に退出を促すこと、そして(2)M&A・再編を行うことが考えられる。
まずは前者から考えていこう。
従来、上場は日本企業にとってステータスであり、ブランドだった。「会社として箔がつく」「採用活動で有利になる」「社員の誇りになる」と考え、上場企業というステージに居続ける企業は少なくなかっただろう。また、何代も続いている上場企業の経営者は、「お家を守る」意識もあり、当然「自分の代で上場を廃止するわけにはいかない」という考えが生まれることも致し方ないように思える。
だが、上場は見栄や世間体のためにするものではない。
上場の意義を見失っている企業があるのであれば、そこから退出するという選択肢があって然るべきだ。すべては経営者のマインド次第である。現状維持バイアスに陥ったまま市場に残り続けることが企業の発展に寄与するのかということは、今一度冷静な視点で再考してもよいだろう。
次にM&A・再編だ。
M&Aによって、単純に複数の会社に分散していた機能を統合できるため、管理コスト・営業コストをが減り、収益性の改善が見込まれることもある。また、M&Aによって成長をショートカットし、事業のサイズを拡大することで、新たなチャレンジを行える体力をつけて未来への期待を創り出すことは、投資家にとってもポジティブな印象になるはずだ。 昨今の日本においては、世界に比べてサイズ感が話題になりがちだが、点在している素晴らしい技術や製品をもつ企業が手を取り合って統合し、大きくスケールしていけば、驚くべきシェアを誇る企業として生まれ変わる可能性もある。
株主は「物言うもの」
上場を維持するなら、株式市場との対話も欠かせない。耳を傾けておきたいのが、物言う株主(アクティビスト)の声だ。
ひと昔前の物言う株主(アクティビスト)は、無謀な増配提案や成長事業の売却など、株主還元一辺倒の無理難題を求めてきたため、多くの企業はアクティビストを「悪役」として見ていただろう。しかし昨今は、「アクティブ」という名のとおり、積極的に企業と対話し、企業とともに課題に向き合い、有益な解決策・改善策を提言してくれるアクティビストが増えている。
これまでの日本企業にとっては、株主が何も言わないことが当たり前だったかもしれないが、本来、株主とは「物を言う」ものである。アクティビストは決して「悪役」ではなく、時に「救世主」にもなりうる存在だ。これからは、アクティビストを経営の邪魔をする「敵」ではなく、経営を良くしてくれる「仲間」と捉え、対話を重ねていかなければならない。株主の提言に誠実に向き合い、取締役会で議論し経営に生かしていくのは、上場企業にとって当然の責務なのだ。
上場廃止するか、株主と対話するか

ベネッセは2024年5月15日に上場廃止となった。
ビジネスインサイダージャパン
最後に、資本市場からの退出を選択した企業、また市場に向き合い、株主・アクティビストと積極的に対話している企業の事例を紹介しよう。
ベネッセホールディングス
2023年、上場廃止の決定をして話題になったのがベネッセホールディングスだ。創業家がヨーロッパの投資ファンド「EQT」と組んでMBO(経営陣が参加する買収)の一環として実施したTOB(株式公開買い付け)が2024年3月に成立し、5月17日に上場を廃止した。 意思決定を迅速化し、国内教育などの既存事業のてこ入れを進めることが、同社が上場廃止をした主な目的だ。少子化の影響などで主力の「進研ゼミ」は会員数が減少傾向にあり、デジタル技術の活用や業務効率化などで立て直しを図る。また、積極的にM&Aを活用し、介護事業や新領域に位置づけるリスキリングなど、大学・社会人向けの事業でも成長を狙う。
スノーピーク
2024年に米投資ファンドのベインキャピタルと組んでTOBを決定したことも記憶に新しいのが、スノーピークだ。同社はコロナ禍によるキャンプ人気が後押しし売上高を伸ばしていたが、その後は需要の落ち込みで業績が悪化。MBOで経営の意思決定を迅速化することで、事業の構造改革を進めることとし、2024年7月9日に上場を廃止した。TOB後も、山井太社長は引き続き経営に関わっており、機動的かつ柔軟な意思決定を可能とする株主と経営陣が一体となった強固かつ安定した新しい経営体制を構築、積極的に事業の構造改革や成長戦略の実行に臨むとしている。
花王
アクティビストと積極的・建設的な対話を進めることで、時価総額の増加につながっているのが花王だ。 同社は、香港の投資ファンド「オアシス・マネジメント」から、化粧品とスキンケアブランドの国際的な成長に重点を置き、業績の悪い事業を減らすよう求められた。この要求に対し、同社は「2023年度決算で示した積極的なポートフォリオ管理や構造改革について十分な理解がなされていない」と反論している。一方で、経営戦略に基づき長期的な視点で株主価値の向上に努めているとし、「オアシス・マネジメントおよびすべての株主と直接かつ建設的に関わり、課題を解決するための新たな視点を歓迎する」とコメントしている。
オリンパス
アクティビストである投資ファンドから社外取締役を受け入れ、経営改善を推進しているのがオリンパスだ。 米国の投資ファンド「バリューアクト」は、同社のことをよく調べ、理解も深く、独自の展望を持っていた。短期的な利益ではなく長期的な視点で企業価値向上を目指すという姿勢で一致していると感じた同社は、2019年、「バリューアクト」から社外取締役を迎え入れることを決定。以降、営業赤字のデジタルカメラなどの映像事業を売却し、医療事業へと経営資源を集中させるなど、ともに中長期の企業価値向上に向けた取り組みを進めている。
上場するということは、パブリックカンパニーとしてより良い未来をつくっていくという意思決定にほかならない。だが、投資家から期待を集め続けるのは簡単なことではない。期待を集め続けるために、上場企業は常に未来のストーリーを考え続け、伝え続ける覚悟が必要だ。
「上場」という肩書きにこだわり続けることそのものが、市場全体の活力を失わせるおそれがある。上場が投資ではなくコストになっている企業は、上場というステージから退出すべきタイミングかもしれない。日本で上場企業が増えていることは善でも悪でもないが、期待であふれる資本市場をつくっていくためには、市場全体としていかに「入れ替え」を促進できるかが重要だろう。
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