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2026-03-16 02:00:00
売上とブランド力を同時に伸ばし、急成長を続けるTENTIAL(テンシャル)。機能性インナーやリカバリーウェアを主軸に事業を拡大し、2025年(8月期)は前年同期比約149%増と勢いは止まらない。
この躍進の背景にあるのは、広告による新規獲得の強化だけではない。顧客との関係構築を軸に据えた、CRM(一度買って終わりにさせない仕組みづくり)戦略の再設計だ。なかでも同社が注力しているのが、LINEを基盤としたデータ活用だという。
本記事では、マーケティング本部 EC・CRM部 部長 泉晃治氏、CRMを担当する阿蘇品彩氏に加え、LINEヤフーのTechnology Partnerに参画し、TENTIALが活用するLINEのCRMツール「Ligla(リグラ)」を提供するTimeTechnologies(タイムテクノロジーズ) 代表取締役CEOの柴田剛氏、カスタマーサクセス担当の大沢彩友美氏に話を聞き、成果創出の背景を探った。
新規獲得だけでは勝てない時代に
なぜいま、CRMの強化が求められているのか?
TENTIALの泉氏は、その背景として「顧客ニーズの多様化」を挙げる。同社が主要ターゲットとするのは、仕事に前向きに取り組みながら、パフォーマンス向上のために体調管理を重視する30〜50代。つまり、健康意識の高い層だ。しかし、同じ“健康”というテーマでも、悩みやライフスタイルは人それぞれだ。
「TENTIALでは健康という単一カテゴリーではなく“コンディショニング”という軸で事業を展開しています。疲労や冷えといった悩みを起点に商品を選ぶ人もいれば、働くとき・眠るときといったシーンで選ぶ人もいる。商品選択の文脈は多様です」(泉氏)

そこで重要になるのが、顧客理解の解像度だ。誰が、どの文脈で選んでいるのかを把握し、その文脈に沿ってコミュニケーションを設計する。その基盤として、CRMの強化は不可欠だった。
一方、市場環境の変化も顧客ニーズの多様化を加速させ、新規獲得だけで利益を出し続けるビジネスモデルを難しくしている。
「検索エンジンのAI機能などにより、検索結果内で情報取得が完結するケースが増え、SNS内でも情報消費が閉じる傾向が強まっています。さらにプライバシー規制の強化で広告コストは上昇し、新規獲得単価は高騰している状態です」(柴田氏)

こうした状況を踏まえ、「CRMは、売上を伸ばす基盤として位置づけるべき」と柴田氏は指摘する。
購入前の訴求だけでは、もう顧客との継続的な関係は築けないのかもしれない。購入後も価値を伝え続け選び続けてもらう設計、つまり“顧客とつながり続ける仕組み”の構築が不可欠なのだ。
“友だちは増えた”が、顧客は見えていなかった
TENTIALは、自分用だけではなくギフト需要も大きいブランドで、購入者だけでなく商品を受け取った人とも継続的な関係を築きたいという課題意識があった。
しかし、実際には顧客の状況や目的に応じたコミュニケーション設計が十分にできておらず、マーケティング用途としてLINEの公式アカウントを運用していたものの、基本機能だけではメッセージの出しわけなど精緻な設計に限界があり、形式的な一斉配信が中心だったという。結果として、売上やLTVの観点で機会損失が生じていた。
こうした背景から、TENTIALでは2025年6月からTimeTechnologiesが展開するLINE特化型MA(マーケティングオートメーション)ツール「Ligla」の導入を決断。結果として、マーケティング施策におけるLINEの位置づけは大きく変わったという。
「もともと重要なチャネルのひとつとは考えていましたが、Ligla導入後は単なる“配信チャネル”ではなく、LTV(顧客生涯価値)を高めるためのCRMチャネルという認識が社内で明確になりました。現在では購入前から購入後以降までを含めた体験設計の基盤になっています」(阿蘇品氏)
顧客ごとの1to1コミュニケーションが可能になったことで、LINEは単なる告知手段ではなく、顧客体験を設計する装置へと進化した。店舗との連携を含めると、オンラインとオフラインを横断する接点としての役割も強まった。TENTIAL急成長の背景には、顧客との接点を拡張しLTVを高める設計があったのだ。

こうした課題は、TENTIAL特有のものではない。「公式アカウントのLINEの友だち数は増えているが、その顧客像がみえていないという企業の悩みは非常に多い」と柴田氏は話す。
「多くの企業がさまざまな施策で公式アカウントの友だち数を増やし、コミュニケーション可能な母数は拡大している一方で、『一人ひとりに何を届けるべきか』という設計に悩んでいる印象です。顧客の顔が見えなければ、最適なメッセージは設計できません。だからこそ今、求められているのは、数だけを増やすことではなく、データをつないで顧客像の解像度を高めることなのです」(大沢氏)
機動力が生む、現場で回るCRM
では、TimeTechnologiesが提供するLINE向けMAツール「Ligla」は、他社のツールと何が違うのか? 柴田氏はLiglaの強みを大きく二つ挙げる。
一つ目は、エンドユーザーに余計な負担をかけず、LINEの友だち情報と会員情報、さらに購買データを紐付けられる点だ。
「ID連携が進めば、購買履歴や会員属性、行動状況を把握できる。その情報をもとに、必要なコミュニケーションを出し分けられるようになる」と柴田氏は語る。

もう一つの強みは、運用側での管理画面の操作のしやすさだ。直感的な管理画面を通じて、会員属性や行動履歴をトリガーとした自動配信をスムーズに実装できる。
柴田氏は「『特定の商品ページを閲覧した』『設定した一定の行動に到達した』といった条件に応じた配信設計が可能で、AIやWeb行動データを活用しながらターゲティング精度を高められる」と解説する。
「配信と分析が分断されていたり、連携に負荷がかかったりするMAツールは珍しくありません。その点、Liglaは設計から実行、検証までを一気通貫で回せる。TimeTechnologiesではこれを『機動力』と呼んでいます」(柴田氏)
高速PDCAを可能にした“運用視点の設計”
こうしたリグラの特長について、TENTIAL側も具体的な手応えを感じている。同社ではマーケティング担当者が自らデータを抽出・加工し、施策に落とし込むことが多い。そのため、Liglaによって企画から実装、検証までのPDCAを高速で回せることが大きな優位性になったという。
「管理画面が直感的で操作も簡単。社内マニュアルを整備しなくても運用に乗せやすく、複数メンバーでも共通認識を持って進められています。細部まで運用者視点で設計されている点は魅力的ですね」(阿蘇品氏)

ROAS500%が示したデータドリブンの力
こうした強みは、具体的な数字にも表れている。Ligla導入後、顧客ニーズに沿った配信が可能になり、配信単位の開封率やCTRが向上。さらに、ツール経由の新規施策による純増分のROAS(費用対効果)は、わずか3カ月で500%に達したという。顧客データを基点とした配信を強化した結果、KPIとして掲げていたID連携率も導入後に1.2倍へ伸長した。
こうした大きな成果は、TENTIALのような企業以外にも再現可能なのだろうか?
大沢氏は「LINEを活用して何を変えたいのか、何を伸ばしたいのか。目標とKPIを明確に設定することが前提になる」と語る。その設計が具体的であればあるほど、成果につなげやすいという。

TimeTechnologiesは、伴走型の支援にも力を入れている。単なる機能の提供や操作サポートにとどまらず、事業KPIや動かしたい顧客像をヒアリングし、どのデータをどう配信に活かすべきかまで提案。成果創出まで並走しているという。
TENTIALの阿蘇品氏も、早期に成果を出せた背景にカスタマーサクセスの存在を挙げる。「データ連携など複雑な部分についても相談に乗ってもらい、社内で迅速に対応できた。導入初月から数十本規模の配信施策を一気に走らせることができたのは大きい」と振り返る。TimeTechnologiesが伴走し導入前からジャーニー設計と配信案を準備していたこともあり、導入直後から実装と検証を開始できた点がPDCAのサイクルを後押ししたという。
配信を超えるCRMの未来像
こうした実例を見ると、今後、顧客とつながり続けるにはCRMの強化が重要だと改めてわかる。
泉氏は、「LINEを活用したCRM強化は顧客体験そのものを拡張するプラットフォームへと進化していく」との見方を示す。TENTIALではすでにLINEミニアプリをデジタル会員証として導入し、店舗とECをつなぐオムニチャネルの基盤として活用している。
「今後はギフト選びの支援や日々のコンディショニングを整えるサポートなど、ブランド独自の体験をLINE上で提供し、購入後の継続利用やLTV向上につなげる動きが広がっていくと考えています」(泉氏)
また、TimeTechnologiesの柴田氏は今後のLINE CRMの進化について三つの方向性を挙げる。それは、「AIによる接客の高度化」、「双方向性のデータ活用による商品開発の可能性」、そして「LINEミニアプリを軸にしたOMO(オンラインとオフラインの融合)体験の深化」だ。LINE CRMは今後、単なる配信基盤を超えた進化段階に入りつつある。
売上とブランド力を同時に伸ばすCRMの設計。短期的な売上目標とブランドコミュニケーションの両立は簡単ではないが、顧客の声を丁寧に分析し、バランスを取りながら進めることが成功の鍵となる。
LINE公式アカウントに連携して活用するCRMツールであるLiglaによって顧客一人ひとりの状況や関心が可視化された今、届けたい相手に必要な情報を適切なタイミングで届け、機会損失を防ぐことが重要になる。そして、成果だけを追って一方的に配信するのではなく、顧客の表情や反応を見ながらコミュニケーションを設計する姿勢が求められている。
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