中華民国(台湾)政府は2026年8月中旬、中国とインドネシアが台湾東部の海域で共同軍事演習を実施すると発表したことに対し、「危険な軍事挑発」であると強く非難した。台湾当局は、中国が同海域に対する実効支配を国際社会に誇示しようとする政治的意図があると警戒を強めている。
中印両国による台湾東部での初訓練計画
中国国防省は2026年8月5日の発表で、中国海軍とインドネシア海軍の艦艇が同月中旬に台湾東部の海域で海上航行演習を実施すると発表した。中国国防省の発表によると、今回の演習では通信訓練や洋上補給などの科目を予定しており、両国海軍の共同作戦能力の向上や実務的な協力の深化、地域の平和と安定への寄与を目的としている。
今回の訓練は、中国海軍と外国海軍が台湾東部の海域で実施する初めての事例となる。中国の軍事専門家である張軍社氏は、この訓練について highly significant
と評価し、同海域に対する中国の主権と管轄権を示すものだと主張している。
中国の公船や軍は、これまでも台湾周辺での活動を活発化させており、6月からは台湾東部海域で定期的な法執行パトロールを開始している。今回のインドネシア海軍との共同訓練は、こうした動きの延長線上にあるものと位置づけられている。
台湾の猛反発と「実効支配の拡張」への警戒
大陸委員会が発表した声明では、中国の一連の動きが名目上の訓練にとどまらず、実質的な勢力拡大を狙った政治的謀略であると批判している。声明は、中国が国際社会に向けて台湾東部の海域に対して管轄権を持っているかのような誤った印象を与えようとしていると指摘した。

また、台湾の外交部(外務省)も、インドネシア側に対して今回の演習参加に関する説明を求めたことを明らかにしている。台湾では現在、中国からの侵攻を想定した年次の「漢光」軍事演習が実施されており、周辺海域の動向への警戒が最高潮に達している。
インドネシア側の立場と地政学的な位置づけ
台湾の参謀本部情報参謀次長室の呉天任助理副参謀長が台北の立法院(国会)で議員の質問に答えたところによると、参加予定のインドネシア艦艇は中国海軍と共同訓練を行うためにわざわざ派遣されたものではなく、日本からの帰還途中であり、当時は台湾東部の太平洋上で70から80海里ほど離れた位置にあった。

軍事的な観点から直ちに台湾への直接的な脅威とはならないものの、台湾側はこれが持つ「地政学的な意義」を重く見ている。インドネシアは、多くの国と同様に台湾とは公式な外交関係を持たないが、同島には30万人を超えるインドネシア人出稼ぎ労働者が生活しており、経済面や人道面での結びつきが存在する。
深まる東アジアの緊張と今後の動向
今回の発表は、米国とインドネシアの間での防衛協力をめぐる動きとも重なっている。ジャカルタでは、米国防総省のエルドリッジ・コルビー戦争政策担当次官が、インドネシアのシャフリエ国防相と会談を行ったばかりであった。こうした中で、中国が東南アジアのパートナー国を巻き込んだ海上協力を台湾東部で表面化させたことは、地域の外交・安全保障上のバランスに微妙な影を落としている。
台湾周辺における中国軍の活動はほぼ日常化しており、台湾政府は今後も周辺の動向を注視し、必要な措置を講じる方針を示している。中印両国による8月中旬の訓練が実際にどのように実行されるのか、そしてインドネシア側がこの海域での位置づけをどう説明するのかが、今後の地域の安定を占う上で重要な焦点となっている。