ドメスティックバイオレンス(DV)被害者の閲覧制限を巡り、北海道名寄市が元夫の代理人弁護士へ戸籍の付票を誤交付していたことが判明した。毎日新聞の報道によると、全国の自治体で同様の情報漏えいは過去5年間で計68件に上り、窓口での対応徹底が課題となっている。
名寄市の窓口で起きた誤交付とシステムの盲点
北海道名寄市では2024年4月、DV被害を受けて閲覧制限をかけていた女性の元夫の代理人弁護士から請求があり、市民課の窓口職員が戸籍の付票の写しを誤って交付した。市への取材によると、当時は閲覧制限を示す「注意喚起」がシステム画面に表示されたものの、管理職が不在だったため複数の職員同士で相談し、問題ないと判断してしまったという。その後、同年5月に裁判所から養育費の調停に関する書類が女性の自宅に届き、6月に女性が窓口を訪れて指摘するまで、市側はミスに気づかなかった。毎日新聞によると、全国の自治体では住民基本台帳システムの標準化が進んでおり、閲覧制限対象者にはポップアップが表示されて誤交付を防ぐ仕組みになっている。だが、システム事業者への発注混雑などにより、当初予定していた2025年度末の期限を過ぎても導入が完了していない自治体が多い。

総務省通知が禁じる加害者側への情報提供
総務省住民制度課によると、DVや児童虐待の被害者保護のため、住民基本台帳の事務手続きでは住民票や戸籍付票などを加害者に閲覧・交付させない規定がある。さらに2018年の総務省通知では、請求者が加害者の代理人弁護士である場合も同様に制限するよう求めている。同課の担当者は「たとえ裁判に関わる請求であっても、自治体は加害者側を介さず、民事訴訟法に基づく『調査嘱託』などの形で裁判所に直接情報提供をするのがあるべき姿だ」と強調する。しかし、名寄市ではこの通知内容が担当部署で十分に把握されておらず、当時は専用マニュアルも用意されていなかった。
全国で相次ぐ自治体の情報漏えいと報告の遅れ
Yahoo!ニュースの配信記事(毎日新聞)によると、DV被害者らの住民基本台帳の閲覧制限を巡る誤交付による情報漏えいは、全国の自治体で過去5年間(2021〜2025年度)に計68件発生している。年度別の内訳は、2021年度と2022年度が各14件、2023年度が12件、2024年度が21件、2025年度が7件となっている。総務省は情報漏えい発生時に都道府県への緊急報告を求めているが、北海道名寄市では誤交付の発覚後も道への報告を9カ月にわたって怠っていた。香川県三木町では2020年3月にDV被害女性の戸籍付票を元夫の弁護士に誤交付し、被害者からの指摘後も約1年後に再び同じ弁護士へ交付していたことが発覚するなど、ミス発覚後の対応や報告体制には自治体間で大きな差が生じている。大阪府守口市や東京都目黒区などでも同様の事案が起きている。