ロシア軍がキエフなどの都市に対してジェットエンジン搭載型ドローンを大量投入しており、ウクライナの防空網が深刻な脅威にさらされている。.
ジェットエンジン搭載ドローンによる空戦の変容
ウクライナの夜空は、かつてのドローン戦とは全く異なる様相を呈している。2022年後半からロシア軍が多用してきたイラン設計の「シャヘド(ロシア名:ゲラン-2)」は、プロペラ式のエンジンを搭載し、時速約185キロ程度で飛行するものだった。しかし、2026年夏以降、ロシアはジェットエンジンを搭載した高速な派生型を投入し、防空網を翻弄している。
ビジネス・インサイダーの報道によると、新型機の「ゲラン-5」は時速約600キロに達し、その形状はドローンというよりも安価な巡航ミサイルのような外観をしている。この高速化は、これまでプロペラ式ドローンの迎撃で高い成果を上げてきた防空部隊にとって、致命的な困難をもたらした。キエフ郊外の防空部隊に所属するあるボランティアは、「彼らはあまりに高速で、命中させるのが極めて困難だ」
と語り、既存の銃火器では射程や照準が追いつかない現状を明かした。また、NATOとウクライナの共同分析訓練教育センター(JATEC)のプログラム設計部門長ヴォロディミル・ホルディエンコ氏は、フランスのスタートアップ企業アルタ・アレス社と連携し、旧来の低速な脅威に対する防御策を模索していたが、ジェット駆動型ドローンの急増により対応が追いつかない状況にあると指摘している。
迎撃率の低下と防衛の「ライフ・オア・デス」
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9月26日、ジェット駆動型ドローンの迎撃率が55%にまで低下したと報告した。かつてのプロペラ式に対する90%以上の迎撃率と比較すると、その防衛能力の低下は著しい。キエフの防空部隊に協力するボランティアのフリシン氏は、「これは絶え間ない競争だ」と述べ、「生死を分ける(ライフ・オア・デス)競争だ」と強調した。ロシア側は、ウクライナの防衛策に応じる形でドローンの飛行高度や経路を頻繁に変更しており、防衛側は新たな対抗策を迫られ続けている。
英国陸軍でドローン技術調達を担当するマット・キーオ中佐は、ジェット駆動型脅威の割合が増加している現状について、「それらを撃退するための迎撃兵器への関心が高まっている」と説明した。また、防衛関連企業ブルーバード社のCEOザルビン氏は、「もし国がミサイルやジェット駆動型無人機に対する効果的な対抗策を迅速に開発できなければ、現代の戦争に耐える能力は著しく制限されるだろう」と警告している。
10月のモスクワに対する大規模ドローン攻撃の影響
防空を巡る緊張はウクライナ国内に限らない。10月6日、ロシア国防省は、ウクライナ軍が過去最大規模の攻撃を仕掛け、1,750機の固定翼ドローンと17発のフラミンゴ巡航ミサイルが発射されたと主張した。ロシア国防省は、モスクワを含む11の地域やクリミア半島、アゾフ海の上空で計868機のウクライナ製ドローンを迎撃したと発表した。この攻撃により、モスクワ近郊では71歳の男性と20歳の男性が死亡したと、アンドレイ・ヴォロビョフ・モスクワ州知事が報告している。
モスクワのセルゲイ・ソビャニン市長は、10月10日早朝にも403機のドローンが首都圏に向けて飛来し、その大半が遠方で無力化されたと述べた。この攻撃の影響で、10月9日から10日にかけて、ヴヌーコヴォ、シェレメーチエヴォ、ドモジェドヴォ、ジュコーフスキの全4空港で運航制限が課され、数百便が遅延または欠航した。また、ロシアの航空規制当局ロサヴィアツィアは、ウクライナのドローン脅威により、2026年第1〜3四半期の国内航空便の欠航数が前年比で倍増したと報告している。

この混乱には、ウラジーミル・プーチン大統領の帰国便も巻き込まれた。10月9日、トルコでのCIS首脳会議を終えて帰国した大統領専用機を含む特別飛行隊「ロシア」の機体は、モスクワ上空でのドローン攻撃の脅威により、ヴヌーコヴォ空港への着陸を断念。専用機(RA-96025)はサンクトペテルブルクのプルコヴォ空港へ迂回を余儀なくされた。さらに、ロストフ・ナ・ドヌにある石油ターミナル「ユグ・ルシ」や、リャザン州サソボにあるヤンデックス社のデータセンターも攻撃を受け、公共サービスや鉄道の予約システムに障害が発生した。
進化する脅威と対抗策の終わりのない競争
ロシア軍は、中国製の小型ターボジェットエンジンを搭載したドローンを大量生産し、ネットワークを通じて互いに通信しながら飛行する能力を付与している。アトランティック・カウンシルは、この新型ドローン艦隊がウクライナ全土に深刻な脅威をもたらしていると分析している。一方、ウクライナ側の防衛イノベーションも加速しており、防衛産業やボランティア団体は、限られたリソースの中で迎撃技術の開発を急いでいる。
運輸省の統計によると、ロシア国内では2026年1月から8月にかけて、2時間以上の遅延便が11万8,100便に達し、前年比で20.3%増加した。専門家は、こうした航空の混乱はドローン脅威への対応による副産物であると指摘する。冬の到来を前に、空を巡るこの技術競争は、国家の物流インフラや民間人の生活を直撃する最優先の安全保障問題として続いている。