ロシア東シベリア・イルクーツクのペスト対策研究所で働く20代の女性職員が「原因不明の肺炎」で死亡し、ペスト感染の疑い浮上で米欧が注視していると、bbc.comなどが報じた。ロシア当局は感染を否定し火消しに走る一方、米国務長官は警戒の必要はないとしつつも状況を注視している。
イルクーツクのペスト対策研究所で職員が死亡した経緯
ロシア東シベリアのイルクーツクにあるペスト対策研究所で働く20代の女性職員が、9月下旬に体調を崩して近郊の病院に入院し、10月2日に死亡したと、読売新聞などが報じた。独立系の地元メディアによると、この女性職員はダリアという名前で、最近モンゴルとの国境にあるブリヤート共和国を訪れていた。未確認の情報では、病原体が入った試験管を割ったか、野生のげっ歯類の間でペストが自然発生している地域でのフィールド調査の後に体調を崩した可能性が指摘されている。bbc.comによると、ロシアのメディアは死亡した女性と接触した約200人が予防措置として医療機関の観察を受けていると報じている。
ロシア公衆衛生当局による感染の否定と火消しの動き
イルクーツク州のイーゴリ・コブゼフ知事は、職員の死因を「原因不明の肺炎」と発表し、業務に関連する「微生物」は研究員の生体試料から検出されなかったと述べたと、bbc.comが伝えている。読売新聞によると、隣接するブリヤート共和国のトップが2日に「ペストで死亡した可能性がある」とSNSに投稿したことで情報が拡散した。これを受け、ロシア連邦消費者権利保護・人間福利監督庁(ロスポトレブナゾール)は、生物安全チームの視察の結果、緊急事態は確認されなかったと発表した。クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は5日、国民に対し様々なうわさに耳を傾けるのではなく、当局の公式声明を信頼するよう促している。
米国と欧州連合による状況の注視とトランプ大統領の発言
ドナルド・トランプ米大統領は5日、米首都ワシントンで、アメリカはこの件を非常にはっきりと調査していると述べたと、bbc.comが報じた。マルコ・ルビオ米国務長官は、今回の事件が肺ペストの蔓延につながる懸念から状況を注視しているが、警戒する必要はないとの認識を示している。読売新聞によると、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会報道官も5日、状況を注視していると語った。トランプ大統領はロシア政府とはまだ協議していないとしつつ、ロシアがそのような目に遭うのは見ていてつらいと述べ、いつでも支援の手を差し伸べると付け加えている。

14世紀の黒死病として知られるペスト菌の現状と専門家の見解
ペスト菌は14世紀にヨーロッパの人口の半数近くを死に至らしめた黒死病として知られており、現在もロシアのシベリア地域などでマーモットなどのげっ歯類の間で発生していると、bbc.comが伝えている。英レディング大学のサイモン・クラーク准教授は、肺ペストは人から人へ感染する可能性があり治療せずに放置するとほぼ確実に死に至るが、抗生物質で克服できると説明している。クラーク博士は、人々が新型コロナウイルスやロックダウンを連想するかもしれないが、ここではそのような事態は起こらないだろうと述べている。シベリア極東ペスト対策研究所は、1920年代に発生したペストの大流行を受けて100年以上前に設立された施設であり、人間に対する脅威となっているペスト菌を今も研究し続けている。