米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが25日に報じたところによると、ウクライナの無人機攻撃が拡大する中でロシア企業が自社防衛の責任を負わされており、ロシア大統領府は先月の大統領令で対策を怠る企業の資産を一時的に没収すると警告した。
高まるドローン攻撃とロシア産業界の負担
ウクライナの無人機による攻撃はロシア国内のインフラを標的にして激化している。ポーランドの軍事分析会社ロチャン・コンサルティングのデータによると、3月以降にウクライナの無人機がロシア国内の製油所を約200回攻撃した。ロシア最大手のオンライン小売企業であるオゾンやワイルドベリーズの物流センターを含む、少なくとも36カ所の物流施設も攻撃を受けている。こうした状況下で、ロシア企業は防衛関連企業からの防空システムの借り入れや、独自装備の製作を強いられている。タス通信の報道では、今年上半期にロシア企業が対ドローンシステムの運用に費やした額は前年同期の7倍に跳ね上がり、4億4000万ルーブル(約8億2000万円)に達した。
民間企業に広がる独自の防衛策と警備員の採用
自社を守るための動きは予算の支出だけに留まらず、人員の確保にも及んでいる。ロシアの求人サイトには、企業の施設を巡回して上空を監視し、無人機を発見した際に撃墜できる警備員の募集広告が相次いで掲載されている。さらにロシア政府は今月初め、郵便職員がドローンを撃墜できるよう武器や弾薬の所持を認める大統領令を出した。民間部門を総動員して防衛体制を構築する背景には、広範なインフラ被害を食い止める狙いがある。だが、現場の企業にとっては防衛や復旧に伴う経済的および実務的な負担が重くのしかかっている。
政府による財政支援と税制優遇措置の実施
民間企業へのしわ寄せが深刻化する中、ロシア政府側も対応に乗り出している。ロシア財務省は今月、民間企業がドローン攻撃に対する防衛や攻撃後の復旧に要した費用を補塡できるようにするための税制優遇措置を設けると発表した。また、ロシア中央銀行も、相次ぐ無人機攻撃によって保険金請求が急増している事態に対応するため、主要な再保険会社に対して20億ドル(約3150億円)を投入する方針を明らかにしている。政府によるこれらの資金投入は、防衛費用の増大にあえぐ産業界を支える狙いがあるものの、戦争の長期化に伴う根本的な負担の解消には至っていない。
国連演説で強調された安全保障の維持と継続姿勢
経済的な負担や国内の混乱にもかかわらず、ロシア政府はウクライナでの作戦を継続する姿勢を崩していない。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は26日の国連総会演説で、「ロシアの安全保障に対する脅威を取り除き、平穏な暮らしを取り戻す」と述べ、従来の立場を改めて強調した。同日にはドイツのヨハン・ワーデフール外相とも会談を行っている。両国の外相会談は2022年2月のウクライナ戦争勃発後では初めての実施となった。ドイツの外交当局者がAFP通信に語ったところによると、ワーデフール外相はこの会談で、ロシアがドイツや欧州に対して行っている緊張を高める危険な行動をやめるよう求めたという。
民間防衛の義務化と今後の見通し
政府による資産没収の警告や税制優遇といった措置が、ロシア企業の防衛体制や今後の経済活動にどのような影響を与えるのかは不透明なままである。ウクライナによる無人機攻撃が今後も継続し、インフラや物流施設への圧力がさらに高まれば、民間部門を動員した防衛体制の維持には限界が生じる可能性もある。欧州諸国との外交的な緊張が続く中で、ロシア政府が国内の産業界をどのように統制しつつ戦争を継続していくのか、その動向に国内外の視線が集まっている。