7月中旬以降、フランス、スペイン、ポルトガルの3カ国で大規模な山火事が発生し、30万人以上の住民が避難を余儀なくされている。欧州を襲う記録的な熱波により、フランスでは過去20年で最悪の火災に見舞われ、スペインの首都マドリード周辺では地域史上最悪の状況にあるとされる。
フランス・ジロンド県で甚大な被害
フランスで最も深刻な被害が出ているのは、ボルドー市周辺のジロンド県である。この地域では20万人以上の避難者が発生した。火災は有名なワイン産地の森林や野原を急速に焼き尽くし、4日足らずで420平方キロメートル(パリの約4倍に相当)以上の面積を焼失した。火災のピーク時には、ボルドー市の南わずか15キロメートルまで火が迫った。市街地に直接の脅威はなかったものの、弾道ミサイルやロケットモーターの開発施設、有害化学物質の処理施設など、機密性の高い軍事・工業施設が脅かされた。
エマニュエル・マクロン大統領は、被災地を訪問した際にこの山火事を「完全に前例がない」とし、第二次世界大戦以来で最も困難な状況であると述べた。
スペインでの被害状況と気候変動の影響
スペインでは、マドリード市外の地域で発生した山火事により、7月1日以降に約660平方キロメートル(別の推計では約770平方キロメートル)が焼失した。これはマドリード市自体の面積を上回る規模である。
ペドロ・サンチェス首相は、気候変動による高温で乾燥した状況が、火災の拡大速度を速め、燃焼を激しくしていると指摘した。サンチェス首相は気候非常事態は年々悪化していると述べ、地方政府に対し、気候変動の否定こそが対策における「最悪の燃料」になると訴えた。
消火活動とリソースの不足
ジロンド県では、約2,500人の消防士、1,500人の軍関係者、1,200人の警察官および国家憲兵隊が消火にあたっている。消火活動には、Air Tractor AT-802F Fire Bossなどの航空機や、フランス空軍の輸送機A400Mによる消火剤の散布が投入された。また、ラカノー町周辺では、ブルドーザーやショベルカーを用いて、最大幅100メートルの防火帯が構築された。
しかし、現場のリソース不足は深刻である。ジロンド県のジャン・リュック・グレイズ氏は、消防士や車両が不足しており、フランス全体としても十分な体制が整っていないとの見解をBBCに語った。なお、当局の発表によると、フランスでは消火活動中に4人の消防士が死亡している。
気象状況と特異な現象
今回の火災は、欧州全土を襲った猛烈な熱波が背景にある。7月下旬にはフランスで41〜42度に達するピークが予想されるなど、多くの地域で気温が40度を超えた。また、火災が極めて激しくなったため、火災自体が巨大な「火災積乱雲(fire thunderstorm)」を発生させるという特異な現象も確認されている。