フランス全土で広がる大規模な抗議デモと暴動の中で、ゲーム販売店の店を守り抜いた男性の姿が、日本国内でも「オタクニキ」として大きな反響を呼んでいる。9月にパリ近郊の高校から始まった生徒たちの抗議は、物価高への不満や賃上げ要求を巻き込み、教員や労働組合なども合流する社会運動へと発展した。Yahoo!ニュースや各社の報道によると、10月17日には全国で約55万人が参加し、一部が暴徒化する事態となっている。
物価高と格差が招いたフランス全国の抗議デモ
フランスでは燃料をはじめとする物価高騰への抗議や、公共サービスの改善を求める市民らによる政府への抗議活動が9月ごろから続いている。教育環境の改善を求める高校生や大学生、教員らも加わり、SNSを通じて連帯が広がった。10月17日から18日にかけてパリを中心に全国で大規模なデモが行われ、パリだけで11万人が参加したと報じられている。大半は平和的だったが、一部の参加者が暴徒化し、各地で放火や略奪行為が発生した。
高級ブランドや小売店を狙った略奪と被害の広がり
WWDJAPANの報道によると、パリのモンテーニュ通りにある「セリーヌ」やサントノレ通りの「ディオール」、マルセイユの「ルイ・ヴィトン」などの店舗が襲撃され、暴徒らが商品を手に持ち去る姿が確認された。さらに「ロレックス」「バーバリー」「ゴヤール」などの店舗でもショーウインドーが割られる被害が出ている。フランス商業・小売連盟(FCD)の会長を務めるアレクサンドル・ボンパール=カルフール最高経営責任者は、全国で3000以上の事業者が影響を受けており、損害額は小売セクター全体で数百万ユーロに上る可能性があると警告している。
謎の覆面集団「ブラック・ブロック」と若者の失業率
関西テレビの報道では、デモに紛れ込んで破壊や略奪行為を行う覆面集団「ブラック・ブロック」の実態について、神戸大学大学院の山下泰幸講師が解説している。明確な組織性はないものの、大半が若者で構成され、将来の不安から破壊的な暴力衝動を発散するために参加しているという。フランス国立統計経済研究所のデータによると、若者の失業率は20%を超えており、大学を卒業しても仕事が見つからない構造的な課題が背景にある。政策研究大学院大学の安田洋祐教授は、フランスのガソリン価格が1リットルあたり約400円近くに達するなど、日本以上の深刻な格差社会が背景にあると指摘している。
店を守り抜いた「フランスの悟空」とピエールさんの証言
南仏の観光地ニースでも中心街の十数店舗が荒らされ、ゲーム販売チェーン「マイクロマニア」の店舗が被害に遭った。当日は休みだったピエールさんは、同僚からの連絡を受けて現場に駆けつけ、割れたガラス窓から侵入した略奪者たちを一人で追い出した。NEWSポストセブンの取材に対し、ピエールさんは「現場に着くと、人々が笑いながら破壊を続けていた」と当時を振り返っている。割れたショーウィンドウの前で、ドラゴンボールの孫悟空のパネルと並んで店を守る姿はSNSで世界中に拡散され、日本でも大きな反響を呼んだ。

マクロン大統領の対応と欧州各国の連鎖的な動き
事態を受け、エマニュエル・マクロン仏大統領は18日の国民向け演説で秩序の回復と沈静化を呼びかけ、「無軌道な暴力行為はどのような理由でも正当化されない。そうした行為をした者には、断固たる態度で裁きを受けさせる」と述べた。パリなど複数の都市では安全のために夜間外出禁止令が出され、ルーヴル美術館も一部の学生による封鎖で開館できない状態となっている。また、フランスだけでなくイタリアのミラノやベルギー周辺の国々でも、同様に物価対策や教育環境の改善を求めるデモや略奪行為が発生している。

今後の見通しと政府が迫られる困難な舵取り
一連の暴動がいつ収束するかについては、専門家の間でも見通しが立っていない状況が続いている。半年後には大統領選挙を控えており、それぞれの政治家が立場の違いから対立をあおる構造も指摘されている。関西テレビの解説では、財政の持続可能性に懸念が生じる中でフランス政府は非常に難しい舵取りを迫られていると分析されており、欧州全体を巻き込んだ社会不安の行方に国内外の注目が集まっている。
