ドイツ南部バイエルン州の山頂にあるアドルフ・ヒトラーの旧山荘「ケールシュタインハウス」(通称「エヴァ・ブラウンのティーハウス」や「鷲の巣」)で10月23日夜、火災が発生しました。約200人の消防隊が出動し鎮火にあたりましたが、建物は壊滅的な損傷を受けました。警察は放火の疑いで33歳のドイツ人の男を拘束し、捜査を進めています。
ケールシュタインハウスで発生した火災と消火活動
火災の通報は、23日午後9時15分ごろ(現地時間)に火災報知器が作動したことで警察にもたらされました。現場は標高1,834メートルの険しい山頂に位置しており、消火活動は極めて困難を極めました。消防隊が現場に到着した際、建物はすでに完全に炎に包まれていましたと警察は報告しています。
現場では強風と降雨、さらには季節外れの降雪に見舞われ、消火活動は一時中断を余儀なくされました。警察の広報担当者リサ・マイヤー氏によると、現場へのアクセスには” 重い呼吸保護装置 “が必要な状況でした。翌朝の時点で火勢は収まりましたが、建物からは依然として煙が立ち上っていました。
南部バイエルン州オーバーバイエルン南部警察署によると、火災発生当時、建物内には誰もいなかったため、これまでのところ負傷者は報告されていません。しかし、石と花崗岩で築かれた歴史的な山荘は完全に炎に飲み込まれ、警察や現地の報道によれば、建物はもはや修復不可能な状態であると伝えられています。消防当局や自治体の防災組織、さらには地元の山岳救助隊まで出動し、過酷な気象条件のなかで夜通しの消火作業が行われました。アルプスの厳しい寒さと降雪が重なる中、消防車両の接近を阻む険しい地形が消火をさらに難航させ、作業は数時間にわたって安全上の理由で中断せざるを得ない場面もありました。
放火の疑いで拘束された33歳の男
警察は、現場付近で不審な人物を一時的に拘束しました。拘束されたのは33歳のドイツ人の男で、ベルヒテスガーデン地域と関連はあるものの、現在はこの地には居住していないと報じられています。検察当局によると、男は精神的な疾患の兆候を示しており、精神科施設へ送られる予定です。
捜査当局は放火の可能性を視野に入れて調査を続けています。男は警察の検問で、ナンバープレートのないオートバイを運転していたところを停止させられ、その際に火災が原因とみられる手の負傷を負っていたことが確認されました。現時点では、男以外の関与を示す証拠は見つかっておらず、政治的な動機があったかどうかも含めて慎重に調べが進められています。
トラウンシュタインの検察当局が事件の刑事捜査を引き継ぎ、容疑者の身元や具体的な犯行動機についての詳細はまだ公表されていないものの、当局はあらゆる可能性を排除せずに調査を進めています。警察と検察は、男が現場周辺を移動していた経緯や、建物に火が放たれた瞬間の状況について詳しく調べています。

バイエルン州政府による再建の意向
バイエルン州のヨアヒム・ヘルマン内相は、報道陣に対し、同地が歴史的な記憶を継承する場所として重要であることを強調しました。同氏は廃墟のままにするつもりはない
と述べ、将来的に再建を目指す意向を明らかにしました。
ケールシュタインハウスは、1937年から1938年にかけてナチス政権下で建設されました。ヒトラーが外国の要人を招くための場所として利用され、第二次世界大戦後も奇跡的に爆撃を免れた歴史的建造物です。同施設のウェブサイトは、この場所がナチス政権の狂気と、戦争や大量虐殺の計画が練られたオブザルツベルクの世界を象徴している
と説明しています。現在は州政府が所有し、レストランや展示施設として年間を通じて多くの観光客が訪れる場所となっていました。
現在、再建に向けた具体的な計画や費用については、地元の歴史家や専門家を交えた議論が必要であるとされており、結論は出ていません。建物は保険が適用される見通しで、税金による負担は避けられると州当局は示唆しています。第二次世界大戦中にアドルフ・ヒトラーが公式な指揮所ではなく、外国の特使らを迎える誇示のための迎賓館として活用したこの施設は、戦後は連合軍の司令部として使用され、1952年以降はレストランや展望スポットとして一般に開放されてきました。歴史の暗い側面を伝える記念碑として、またバイエルン・アルプスの壮大な景色を望む観光名所として知られてきたこの場所の今後のあり方については、保存修復の専門家や地元自治体との間で協議が行われる予定です。