カナダ出身の歌手セリーヌ・ディオンが2026年9月12日、パリ西端のPlenitude Arenaにて、約6年ぶりとなるフルコンサートを開催しました。完売となったこの公演には3万人のファンが集まり、希少な神経疾患であるスティッフパーソン症候群と闘いながらステージへの復帰という夢を叶えたディオンは、感極まって喜びの涙を流しました。
不屈の精神で掴んだステージへの復帰
今回の公演は、2020年3月8日にニュージャージー州ニューアークで行われた「Courage World Tour」以来のフルコンサートとなります。フランス国内でのフルコンサートは、2017年7月にニースで終了した「Live 2017」ツアー以来のことでした。2024年のパリ・オリンピックではエッフェル塔からエディット・ピアフの「Hymne à l’amour」を披露し、公の場への華々しい復帰を果たしていましたが、疾患を抱えながらフルコンサートを完遂することは別の挑戦でした。
ディオンが診断を受けたスティッフパーソン症候群は、筋肉の硬直や痙攣を引き起こす不治の疾患であり、ジョンズ・ホプキンス・スティッフパーソン症候群センターによると、人口100万人あたり1〜2人にしか発症しないと推定されています。ディオンはこの病いについて、喉を絞められているような感覚や、肋骨を折るほどの激しい痙攣があったと述べています。彼女は「アスリートのように」トレーニングに励み、週に数回のバレエやピラティス、さらに音声療法に取り組むことで、この日の復帰を実現させました。
パリ市を挙げた熱狂的な歓迎
公演当日、会場周辺は異様な熱気に包まれていました。パリ市内では数日前からコスチュームコンテストや巨大カラオケパーティー、セーヌ川でのトリビュートクルーズなどが開催され、世界中からファンが詰めかけました。中にはタヒチから航空便で訪れたファンや、ロンドンからチケットに約2,000ドルを費やして駆けつけたファンもいました。
市当局や地元企業による歓迎ぶりも顕著で、アリーナに近い鉄道駅は一時的に「Celine」に改称されました。また、アリーナ向かいのスシレストランには、メニューを持つディオンのパピエ・マシェ(張り子)像が設置されるなど、街全体が彼女の帰還を祝いました。
演出と衣装に込められた意味
クリエイティブ・ディレクターのウィロ・ペロンが手がけたショーは4つの幕で構成され、ステージには巨大なグレーのモノリスやブルータリズム様式のアーチなど、石をモチーフにしたモノトーンのセットが配置されました。一方で、コンテンポラリーダンサーと共に身体の接触やジェスチャーを強調した演出や、ディスコシーケンスでのダンスもあり、病いによって制限されていた身体性の奪還を暗示させる内容となりました。

衣装にはパリのトップクチュールハウスのカスタムピースが起用されました。
- Dior: ジョナサン・アンダーソンが制作した、層状のプリーツスカートが特徴的なドラマチックな黒のガウン。
- Alaïa: 成形レザーのビスチェとロングベルベットスカート。
- Schiaparelli: 1930年代後半のジャケットにインスパイアされた彫刻的なルック。
- Givenchy: サラ・バートンによる、シュレッドオーガンザの刺繍が施されたダスティピンクのケープとカットアウトドレス。
- Haider Ackermann / Tom Ford: 光沢のあるハイカットの黒いドレス。
今後のスケジュールと経済効果
ディオンは今回の公演からパリでのレジデンス公演を開始します。全26公演の予定となっており、9月と10月で完売となった16公演を行い、その後5月にさらに10公演を予定しています。このレジデンス公演による経済波及効果は、数億ユーロに達すると予測されています。

1990年代のフランス語バラード「On ne change pas」で幕を開けたステージで、ディオンは私は戻ってくると約束した。そして、私たちはそれをやり遂げたと語り、あなたのために、私のために、そして人生を歌いたいと、集まった観客に心中を明かしました。