スペインのペドロ・サンチェス首相は2026年10月5日、住宅危機を巡る法案の否決と大規模な抗議デモを受け、11月29日に前倒し総選挙を実施すると発表した。2027年夏までの任期を残し、少数政党連立政権の立て直しを図る。
スペインのペドロ・サンチェス首相は10月5日、マドリードの政府官邸でテレビ演説を行い、同年11月29日に前倒し総選挙を実施すると発表した。少数政権が議会で住宅危機対策の緊急政令を相次いで否決されたことを受けた措置であり、2027年夏の任期満了を待たずに議会を解散する運びとなった。
住宅問題への国民的怒りと法案の否決
この強制退去の件を受けて家賃は後に1,650ユーロに引き下げられたものの、彼女の月額年金よりも300ユーロ高い状態のままであり、70年以上住み続けた自宅からストレッチャーで運び出された彼女は病院へ搬送された。その後、彼女の弁護士は自宅に戻ることができると述べているが、この一件は住宅問題を巡る国民的な怒りに火をつけた。

マドリッドの中央プエルタ・デル・ソル広場などでは、数百人がテントを張るなどして抗議行動を続け、週末にはマドリードなどで数万人が借地人の保護を求めて街頭に繰り出した。マドリードのテナント組合は、全国のデモ参加者が約95万人に達したと主張している。
こうした世論の反発に応えるため、少数政権側は家賃規制や退去の猶予などを盛り込んだ2つの緊急法案を議会に提出した。しかし、右派の野党勢力がこれらを封殺したため、政権基盤が一気に揺らぐ事態となった。
少数政権の限界とサンチェス首相の決断
先週、右派政党が結託して政府の住宅関連法案を否決したことで、議会の亀裂が決定的になった。右派の野党勢力は政府の市場介入に反対し、二つの政令法案を葬り去った。
「スペイン国民の皆様、自分自身と国のためにどのような未来を望むのかを決断する時が来ました」
ペドロ・サンチェス、スペイン首相
サンチェス首相は54歳で、2018年からスペインの首相を務めており、ヨーロッパで最も長く政権を維持している指導者の一人である。2023年以降は左派の小党パートナーである「スマール」と共に少数派連立政権を率いてきたが、物事を進める上で複数の小政党への依存が続いており、立法能力は常に制限されてきた。
サンチェス首相はテレビ演説の中で、自らの過ちを認めつつも、エリート層の抵抗を打ち破り、より広範な進歩派の過半数を議会で獲得する必要があると訴えた。彼は、不平等や公共サービス、住宅へのアクセスといった分野にはまだ解決すべき多くの問題があると述べている。

「私たちは過ちを犯し、目指したことのすべてを達成できたわけではありません」
ペドロ・サンチェス、スペイン首相
さらに、改革を推し進めるためにはスペイン国民の決断が不可欠であると強調した。
野党の反応と世論調査の動向
「ついにスペイン国民が決断を下すのです。これまでの選挙とは違います。これはスペインがサンチェスを打ち負かすためのものです」
アルベルト・ヌニェス・フェイホ、国民党党首
一方、バルセロナ自治大学の政治学教授であるオリオル・バルトメウスは、サンチェスがこの時期を選ぶのは、住宅問題が自党の立場に非常に有利な条件で選挙戦の争点を形作ることができるからだと指摘している。
サンチェス首相は左派対右派という古典的な対立軸のなかで選挙戦を戦うことが可能であると気づいており、社会労働党を率いて政権奪還を狙う中道右派「国民党」のアルベルト・ヌニェス・フェイホ党首と対決することになる。直近の世論調査では、国民党が優勢を示している。
専門家はサンチェス首相が住宅問題を争点化することで、自らに有利な左派・右派の対立軸を作り出そうとしていると分析する。自らの党が苦しんできた汚職疑惑や移民問題の逆風から、世論の関心を住宅手当や生活コストに引き戻す狙いがある。
経済好調の裏で続く政権の試練
スペイン経済は主要ヨーロッパ経済の中で最も速い成長を記録し、失業率は金融危機以降で最も低い水準にあり、観光業も活況を呈している。しかし、サンチェス政権の足元では、新型コロナウイルスのパンデミック、ウクライナへのロシア侵攻の影響、バレンシア州での壊滅的な洪水被害、前代未聞のヨーロッパ規模の停電など、数々の危機への対応に追われてきた。
首相自身や身内を巡る疑惑について政権側は右派による妨害だと主張してきたが、過去3年間予算案を可決できず、国政運営の停滞感は拭えなかった。11月29日の投票日に向け、住宅政策の是非と政権の信任を問う異例の選挙戦が本格的に幕を開ける。