オハイオ州の連邦地裁は2026年8月25日、運転免許証の取得時に有権者登録を申請する際、米国籍の証拠書類の提示を義務付ける州法の施行を一時差し止める仮処分を下しました。原告側は連邦法の「モーター・バイター法」に違反すると主張しており、州側は直ちに控訴する方針を示しています。
オハイオ州が導入した改正法は、非市民による投票の不正を防ぐことを目的として、有権者登録を希望する住民に対して写真付きの国籍証明書類の提出を求めていました。しかし、クリーブランドを拠点とするソロモン・オリバー連邦地裁裁判長(ビル・クリントン元大統領任命)は2026年8月25日の決定で、この法律が連邦法の規定に抵触するとの判断を示しました。
ソロモン・オリバー裁判長は決定の中で、「The court grants plaintiff’s motion for preliminary injunction … from relying on House Bill 54’s amendment to require any driver’s license or renewal to produce documentary proof of citizenship before offering the opportunity to register to vote」と述べました。さらに、同裁判長は「Election officials do not need documentary proof of citizenship to assess a voter registration applicant’s citizenship because signed attestation of citizenship is enough」と指摘し、署名による国籍の宣誓供述で十分であるとの見解を示しました。
Ohio voter ID citizenship proof law blocked by judge
この司法判断により、オハイオ州で有権者登録を希望する住民は、パスポートや現在の運転免許証、帰化証明書、出生証明書などの追加書類を直ちに提出しなくても、再び登録手続きを行えるようになりました。
今回の訴訟『Red Wine & Blue v. the Ohio Secretary of State』において、裁判所は新法が1993年のクリントン政権時代に制定された「国家有権者登録法(NVRA:National Voter Registration Act、別名モーター・バイター法)」に抵触するかどうかを審理しました。同法は、運転免許証の申請時に使用する情報と同じ情報を用いて有権者登録を行う機会を市民に提供することを州に義務付けており、もともとは有権者の参加を拡大することを目的としていました。

ソロモン・オリバー裁判長は、オハイオ州が州の車両管理局(BMV)による運転免許証申請の「承認後」ではなく、申請が提出された時点で有権者登録の機会を積極的に提供しなければならないと指摘しました。また、「To interpret this section of the NVRA otherwise would allow States to make registering to vote at the BMV more onerous, and could result in fewer voter registrations because the opportunity to apply was not proactively offered to otherwise eligible citizens」と述べています。
US judge blocks Ohio law requiring proof of citizenship
この改正法は、非市民による投票の未実証の主張を取り締まるため、州の共和党議員らによって推進されました。また、ドナルド・トランプ米大統領や共和党員らは、全米の州政府において、非市民による大規模な投票を根拠に、より厳格な有権者登録制限を求めています。これに対し、民主党や投票権擁護団体は、非市民の投票はまれであり、制限の強化がかえって米国市民の投票を困難にすると反論しています。オハイオ州では、マイク・デワイン知事が昨年、運転免許証などの身分証明書の申請時に出生証明書、パスポート、帰化証明書などの文書提示を義務付ける新法に署名していました。

今回の判決は、オハイオ州の国務長官フランク・ラローズを相手取って提訴し、同法が適格な有権者の選挙権を剥奪しNVRAに違反していると主張していた「Red Wine & Blue」や「Ohio Alliance for Retired Americans」などの投票権擁護団体にとっての勝利となりました。原告側の弁護士であり、民主党を頻繁に代理するElias Law Groupの弁護士ベン・スタッフォード(Ben Stafford)は声明で次のように述べました。「With the registration deadline just weeks away, eligible Ohioans will now have the opportunity to register to vote at the BMV without having to produce unnecessary paperwork that is not required by federal law.」
司法判断に対し、オハイオ州の選挙管理最高責任者であるフランク・ラローズ国務長官は強く反発しています。ラローズ国務長官は声明の中で次のように述べました。「We strongly disagree with that decision, and I’ve asked our legal team to file an immediate appeal. I will vigorously defend our legal authority to safeguard our voter rolls and protect the integrity of Ohio’s elections.」訴訟提起後、ラローズ国務長官は「It’s common sense that only U.S. citizens should be on our voter rolls. I won’t apo…」と、有権者名簿には米国市民のみが記載されるべきであるという姿勢を示していました。オハイオ州司法長官室は、裁判で州を代理しているものの、コメントの要請には直ちに応じませんでした。